「特別企画・新春座談会 社会経済の変化に対応し安心・安定の制度を構築」『週刊 社会保障』№2660,2012,pp52-67

中村秀一(内閣府官房社会保障改革担当室長)、柴田雅人(国民健康保険中央会理事長)、霧島一彦(健康保険組合連合会理事長)、貝谷伸(全国健康保険協会理事)、島崎謙治(政策研究大学院大学教授) の元厚労省保険局課長級経験者による座談会でした。 中村氏を司会に、国保中央会、けんぽれん、協会けんぽ、研究者の立場から国民皆保険制度の「次の50年」について話し合われました。 印象に残った言葉は次の通り。 ・(中村)日本は最も医療の受けやすい国で、1人当たりの外来受診件数が、日本の月(年の間違いか?)13.4回に対して、同じ社会保険システムをとっているドイツは77.8回(7.8回の間違いか?)、フランスは6.9回、福祉国家といわれるスウェーデンは2.8回となっています。その意味では、アクセスが非常によいことは数字にも表れています。(p54) キーワード:外来受診件数 出典:①OECD Health at a Glance 2011 Consultations with doctors     ②吉田真季「国際比較データ取扱いの基本的心得―財務省提示資料の問題点―」『リサーチエッセイ№32』2003,p7 ・(島崎)国保では、「所得なし世帯」が約1/4を占めていますが、これは公的年金等控除が効きすぎているという面があります。たとえば153万円の年金収入があれば、市町村民税の基礎控除の33万円公的年金等控除の120万円が差し引かれますので、その人は「所得なし」になります。一方、国保のなかにも賃金労働者がいますが、給与所得控除の最低額は65万円ですので、給与が98万円を超えると「所得あり」になります。要するに、収入でみるのか所得でみるのかによって「低所得者」の評価は異なるということであり、整理をきちんとしないと、国保への公費投入拡大について被用者サイドや国保の中堅所得者層の理解が得られないよう思います。(p61) ・(中村)総合診療医ということでは、言葉はともかく、何でもできる、何でもわかるということだけでなく、相談から医師や病院を紹介することも大事だと思います。その人の今いるところ、背景、家族構成などをトータルでみて、何が必要かを判断する。自分で判断できないければソーシャルワーカーと連携してもよいのですが、診療報酬にそういうものを組み込まないと、本当の意味での地域包括ケアを医師に担ってもらうのは難しいと思います。極端に言えば、例えば医学部教育の課程のなかで、福祉のソーシャルワークを必修にするなどです。病院にいれば資源は院内にそろっていますが、地域では、訪問看護や薬局、介護事業者をうまくつなぎ合わせなければならないわけですから、そういう発想で患者をみる、あるいは対象者をみるという教育を若いうちから行ったほうがよいのではないでしょうか。(pp.62-63)