A238 退院調整加算算定要件の怪→ではなくなった

3月5日、診療報酬改定により2012年4月以降の各種算定要件や施設基準などが告示・通知された。その中に、退院調整加算の算定要件の詳細が載っている。既にお気づきの方も多いであろうが、今改定によりこれまで算定可能であった他医療機関への転院が算定対象外となっている。 2012.4.23追記  ・厚生労働省保険局医療課『(事務連絡)疑義解釈資料の送付について(その2)平成24年4月20日 2012.5.4追記 ・厚生労働省保険局医療課『(事務連絡)平成24年度診療報酬改定関連通知の一部訂正について平成24年4月20日 上記2点において他医療機関への転院も(退院調整加算1に限り)算定可となった。 従来の急性期病棟等退院調整加算では、下記の通り、他医療機関への転院も算定対象となっていた。


A238-2 急性期病棟等退院調整加算 (3) 当該退院には、他の保険医療機関(特別の関係を含む。)に転院した場合も含まれる。 ただし、死亡退院は含まれない。
しかし、今回急性期病棟等退院調整加算と慢性期病棟等退院調整加算が統合され、退院調整加算となったことに伴い、下記の通り他機関への転院は算定対象外となっている。
(10) 死亡による退院又は他の病院若しくは診療所に入院するために転院した患者については、算定できない。 →2012.5.4追記 ただし、退院調整加算1を算定する場合に限り、他の病院若しくは診療所に入院するために転院した患者においても算定できるものとする。
この表現は、下記の通りA238 慢性期病棟等退院調整加算(2)退院加算の算定要件と同じ文言が用いられている。
ウ 死亡による退院又は他の病院若しくは診療所に入院するために転院した患者については、算定できない。
死亡と転院は算定対象外ということから、恐らく自宅、介護保険施設、有料やグループホームなどの居住系施設へ退院・転所した場合のみ算定可能な加算に性格が変わったことが予想される。しかし何故、厚労省は他医療機関への転院を算定要件から外したのだろうか。 また、「入院後7日以内に退院支援計画の作成に着手すること」が新たに算定要件に加わった。より早い段階から介入することが組織的に求められることになる。ポイントは医師や看護師から依頼を受けて動くという受動的なスタイルではなく、先行研究や実践経験を踏まえて退院援助が必要と予想される患者を早期にスクリーニングし、退院援助部門が主体的に介入するスタイルへと変更を求めている点だ。但し、これが成功するには、主治医の理解と、患者・家族に治療初期の動揺期から関係を築く高い面接技術が求められる。 「あなたは退院困難が予想されますので支援にやってきました」という医療機関側からの一方的なコントラクトの提示は、患者・家族にとっては時に押し売りでしかない。 通知では、「退院困難な要因を有する者の抽出及び退院支援計画の作成については、医療・看護の観点から退院困難な要因の明確化等を患者が入院している病棟において行い、退院後に必要な訪問診療や訪問看護の活用等の調整は退院調整部門で行う等、医療機関毎の退院に向けた総合的な体制による支援を行うことを評価したもの」と書かれており、退院支援計画書は病棟で入院早期に担当看護師が作成することが主流となろう。 総じて、本加算が創設された頃とは異なり、入院計画書と同様に無味無臭の計画書に性格がが変わってしまったように思えてならない。 以下、A238 退院調整加算の算定要件全文を転載する。

別添1(医科点数表)」『(保医発0305第1号)診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)』平成24年3月5日 A238 退院調整加算 (1) 退院調整加算は、入院早期より退院困難な要因を有する者を抽出し、その上で退院困難な要因を有する者に対して、適切な退院先に適切な時期に退院できるよう、退院支援計画立案及び当該計画に基づき退院した場合について算定する。なお、第2部通則5に規定する入院期間が通算される入院については、1入院として取り扱うものであること。 また、退院支援計画の作成及び退院後の療養環境の調整については、病棟及び退院調整部門において、共同して行うこと。例えば、退院困難な要因を有する者の抽出及び退院支援計画の作成については、医療・看護の観点から退院困難な要因の明確化等を患者が入院している病棟において行い、退院後に必要な訪問診療や訪問看護の活用等の調整は退院調整部門で行う等、医療機関毎の退院に向けた総合的な体制による支援を行うことを評価したものである。 (2) 退院調整加算は、当該医療機関が届出している以下の入院基本料毎に算定すること。 ア退院調整加算1 一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)、専門病院入院基本料又は有床診療所入院基本料、特定一般病棟入院料 イ退院調整加算2 療養病棟入院基本料、結核病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(結核病棟に限る。)、有床診療所療養病床入院基本料、障害者施設等入院基本料、特定入院基本料、特殊疾患入院医療管理料又は特殊疾患病棟入院料 (3) 入院後7日以内に患者の入院している病棟等において、退院困難な要因を有している患者を抽出すること。ここでいう退院困難な要因とは、以下のものである。 ア悪性腫瘍、認知症又は誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること イ緊急入院であること ウ介護保険が未申請の場合(介護保険法施行令(平成10年法律第412号)第2条各号に規定する特定疾病を有する40歳以上65歳未満の者及び65歳以上の者に限る。) エ入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること(必要と推測されること) オ排泄に介護を要すること カ同居者の有無にかかわらず、必要な介護を十分に提供できる状況にないこと キ退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む)が必要なこと ク入退院を繰り返していること ケその他患者の状況から判断してアからクまでに準ずると認められる場合 (4) 退院困難な要因を有する患者については、できるだけ早期に患者及び家族と退院後の生活について話し合い、関係職種と連携し、入院後7日以内に退院支援計画の作成に着手すること。 (5) ここでいう退院支援計画の内容は、以下の内容を含むものとする。 ア患者氏名、入院日、退院支援計画着手日、退院支援計画再作成日 イ退院困難な要因 ウ退院に関する患者以外の相談者 エ退院支援計画を行う者の氏名(病棟責任者、退院調整部門それぞれ記入) オ退院に係る問題点、課題等 カ退院へ向けた目標設定、支援期間、支援概要、予想される退院先、退院後の利用が予測される社会福祉サービスと担当者名 (6) 退院支援計画に基づき、退院調整を行うにあたっては、病棟及び退院調整部門の看護師並びに社会福祉士等の関係職種が共同をしてカンファレンスを行った上で計画を実施すること。 (7) 退院支援計画については、文書で患者又は家族に説明を行い、交付するとともに、その内容を診療録に貼付又は記載すること。また、当該計画に基づき、患者又は家族に退院後の療養上必要な事項について説明するとともに、退院・転院後の療養生活を担う保険医療機関等との連絡や調整、介護サービスの導入に係る支援を行うこと。 (8) 当該加算と退院時共同指導料を同時に算定する場合には、在宅療養を担う医療機関等と患者が在宅療養に向けて必要な準備を確認し、患者に対して文書により情報提供すること。 (9) 退院先については、診療録に記載すること。 (10) 死亡による退院又は他の病院若しくは診療所に入院するために転院した患者については、算定できない。 (11) 退院調整加算を算定する患者について、退院支援計画に加えて、地域連携診療計画と同等の事項(当該医療機関の退院基準、退院後に必要とされる診療、訪問看護等在宅で必要となる事項等)を当該患者及び家族に文書で説明し、退院後の治療等を担う他の保険医療機関訪問看護ステーションと共有した場合に地域連携計画加算を算定できる。