新刊案内

1988発行の本書が文庫版に。
中村達也ガルブレイスを読む』岩波書店,2012.8.17 ■体裁=A6.並製・406頁 ■定価 1,491円(本体 1,420円 + 税5%) ○内容紹介 1983年に7回にわたっておこなわれた岩波市民セミナーでの講義をもとに『ガルブレイスを読む』は書かれました.今回文庫化に当たっては,初期と後期のガルブレイスを増補しました.冒頭の書き出しはこうです.  これから七回にわたって,ガルブレイスの経済学とその周辺についてお話してみたいと思います.ところで,私の知っている限り,ガルブレイスは,経済学の歴史上,最大の学者ではないかと思います.ほぼ,そう断言できます.このように申し上げますと,皆さんの中には,きっと怪訝に思われる方がいるかもしれません.なぜならば,経済学の歴史の中には,スミスもいればマルクスもいる.ケインズだってシュンペーターだっている.そうした大経済学者をさしおいて,ガルブレイスが学説史上最大の学者だというのはおかしい,そう思う方がきっといるにちがいありません.しかし,ガルブレイスは,やはり,経済学の歴史上最大の学者であるといっていいと思います.  なぜならば,彼は,二メートルをゆうに越える長身だからです(笑い).まちがいなく,最大の学者です.それほどの身長の持ち主だからでしょうか.現代の経済と経済学に対する彼の視角は独自です.二メートルを越えるハイアングルからの,独自の現代資本主義論を展開しているという感じです.彼の議論はまことに異端的です.もちろん,そのつどつど,異端的な問題提起をしてきた経済学者がいないわけではありません.しかし,ガルブレイスは,戦後,半世紀にもわたって,異端的立場を持続してきた点に一つの特徴があります. こういう講義調で,ガルブレイスの主著たる『アメリカの資本主義』『ゆたかな社会』『新しい産業国家』『経済学と公共目的』『権力の解剖』『満足の文化』『金融的熱狂の物語』などを読み解いていきます.ガルブレイスという異端の学者を通して戦後の経済学の流れを見直すことが出来ます.リーマン・ショックを見ずに2006年に97歳で亡くなったガルブレイスは,もしいま生きていたらどんな発言をしていたでしょうか. ○著者略歴 中村達也(なかむら たつや) 1941年秋田県生まれ.一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了.千葉大学法経学部教授,中央大学商学部教授を経て,現在中央大学名誉教授.経済学専攻.著書に『歳時記の経済学』『豊さの孤独』(岩波書店),『市場経済の理論』(日本評論社),『読む』(TBSブリタニカ),『さまよう経済と社会』(中央大学出版部),『お金ってなんだろう』『地域だけのお金』(岩崎書店),『経済学の歴史』(共著,有斐閣)など. ○目次 プロローグ 〈ガルブレイス語録・一〉 第一講 独占と拮抗力 ――『アメリカの資本主義』をめぐって―― 〈ガルブレイス語録・二〉 はじめに 1 執筆当時のアメリカ経済 2 競争と独占 3 拮抗力 4 拮抗力の限界 むすび 第二講 豊富の中の貧困 ――『ゆたかな社会』をめぐって―― 〈ガルブレイス語録・三〉 はじめに 1 執筆当時のアメリカ経済 2 資本主義の「古い病」と「生産至上主義」 3 資本主義の「新しい病」 4 「新しい病」論の限界 むすび 第三講 大企業体制とテクノストラクチュア(一) ――『新しい産業国家』をめぐって―― 〈ガルブレイス語録・四〉 はじめに 1 執筆当時のアメリカ経済 2 大企業体制(計画化体制) 3 「計画化」と技術進歩 4 「テクノストラクチュア」論の系譜 5 刺激誘因の一般理論 第四講 大企業体制とテクノストラクチュア(二) ――『新しい産業国家』をめぐって―― 〈ガルブレイス語録・五〉 6 大企業の行動様式 7 「新しい時代の因果連鎖」 8 大企業・労働組合・政府 9 「審美的次元」と大企業体制の将来 10 いわゆる「収斂化論」をめぐって むすび 第五講 不均等発展と公共政策 ――『経済学と公共目的』をめぐって―― 〈ガルブレイス語録・六〉 はじめに 1 執筆当時のアメリカ経済 2 個人・組織・国家 3 市場体制 4 計画化体制 5 二つの体制の相関関係 6 改革の一般理論 むすび 第六講 経済学と権力 ――『権力の解剖』をめぐって―― 〈ガルブレイス語録・七〉 はじめに 1 執筆当時のアメリカ経済 2 威嚇権力・報償権力・条件づけ権力 3 個人的資質・財力・組織 4 権力の弁証法 むすび 第七講 戦後経済学における「異端」と主流 〈ガルブレイス語録・八〉 はじめに 1 「鏡」としてのサムエルソンの『経済学』 2 サムエルソンのガルブレイス「評価」 3 ガルブレイスのサムエルソン「評価」 4 「異端」の軌跡 むすび 補  論 〈ガルブレイス語録・九〉 補論・一 初期ガルブレイス ――『アメリカの資本主義』以前の主張と活動―― 補論・二 後期ガルブレイス ――『満足の文化』と『金融的熱狂の物語』をめぐって―― ガルブレイスの主な著作 参考文献 あとがき 人名索引