ブリーフセラピー 研修プログラムⅠ

本日、短期療法を学ぶ会名古屋支部主催の研修プログラムⅠに参加した。参加者は9名。 参加した動機は、退院援助が全相談件数の5-6割を占める中で、それ以外の社会資源の活用とは直接結びつかない悩み・困りごとを抱えて来室されるクライエントに対して自分がどう関わるかという問題意識からである。 退院援助も大きな社会問題だが、ソーシャルワーカーとしては日常的に各種社会資源と本人を繋げるケアマネジャーとしての関わりが中心となる。一方、がんや難病など告知を受けた本人や家族のこれから先どうしていけばよいかといった相談に対しては、ケアマネジャーとしての役割では不十分であることを強く感じるのである。みなさんにとってみれば当たり前のことかもしれないが、私にとってはようやく「骨身に沁みて」感じるようになった訳だ。 「援助の幅を広げるために家族療法を学ぶ」という方針を昨年度から掲げ、取り組み始めた次第である。但し、家族療法そのものを名古屋において外部で学習する方法は今のところ見つけられていない。そのため、8月に京都国際社会福祉センター主催の家族療法ワークショップに出席予定である。 そんな中で、名古屋市内でブリーフセラピーを学べる場所をようやく見つけ、今年度から基礎コースを受講することとした。日本協会では、ソリューションフォーカストアプローチの研修が毎年開催されており、ブリーフセラピーとソーシャルワークの親和性は高いのであろう。巡って退院援助においても活かされるものと期待している。 なお、ソーシャルワーカーが家族療法を用いることについては、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)のソーシャルワークの定義でも触れられており、特別逸脱した学習を始めたとは思っていない。 http://www.jacsw.or.jp/01_csw/08_shiryo/teigi.html 今でも社会政策に対する問題関心に変化はなく、それに家族療法の学習が追加されたとご理解頂きたい。 <研修プログラムⅠ> 第1回名古屋支部定例研修会 日時:2013年4月7(日)10:00~12:00(開場9:40) 場所:名古屋国際センター 第3研修室 講師:三谷聖也(愛知教育大学大学院 学校教育臨床専攻 講師) 内容:ブリーフセラピー入門 主催:短期療法を学ぶ会名古屋支部 http://www.brieftherapy-japan.com/branch/nagoya.html 【学んだこと】 ・ブリーフセラピーとは問題の原因探しにエネルギーを注ぐのではなく、「解決」に焦点を当てていく心理療法の一領域。試みられてきたがうまくいかなかった解決努力に焦点を当てる方法(MRIアプローチ)と、既にうまく行っている解決努力に焦点を当てる方法(ソリューションフォーカストアプローチ)の二つの方法がある。 ・MRIアプローチは、うまくいかなかった解決努力を否定するのではなく敬意をもって尊重することからはじまる。その理由は、来談者には解決への動機づけや資源があるということを意味しているから。問題が起こった前ではなく問題が起こった後に着目し、問題への解決の仕方やものの見方のほうを変えるのがポイント。但し、問題が起こった前について聞かない訳ではない。 ・ソリューションフォーカストアプローチ(以下、SFAと略す)は、既に解決しているほんの小さな部分(例外)を見つけ拡大していくという方法。うまくいっている側面や肯定的な側面に(焦点を)当て、小さな解決をだんだんと大きな解決へとふくらましていく。 ・(SFAにおいて)例外を自然にクライエントが語ることはあまりない。支援者側からの積極的な問いかけが必要。 ・グレゴリーベイトソンらの研究成果である二重拘束理論(ダブルバインド)から、家族療法が生まれ、その中からブリーフセラピーが生まれ、MRIアプローチからSFAが生まれた。 ・小野直広氏。ブリーフセラピーを日本に広めた第一人者。元ロジャース派。 ・シンメトリー(相称的)とコンプメンタリー(相補的)。相称的とは、ライバル関係・似た者同士でお互い競い合うといった関係。相補的とは、親子・医師と患者などお互いがいて成り立つといった関係。 【考えたこと】 ・家族療法からブリーフセラピーが生まれた背景は何か。またアプローチがどう異なるのか。 ・日本では、アメリカと異なりブリーフセラピーにおいてMRIアプローチとSFAの統合が図られているとのこと。どのような症例においてそれぞれを使い分けているのか。 【紹介された書籍】 長谷川啓三『ソリューションバンク―ブリーフセラピーの哲学と新展開』金子書房,2005 講師コメント:ブリーフセラピーを初めて学ぶ方にお薦め。 スティーヴ ド・シェイザー(長谷川啓三訳)『解決志向の言語学―言葉はもともと魔法だった』法政大学出版局,2000 講師コメント:ソリューションフォーカストアプローチの創始者による著。 【事務事項】 ・本研修会第2回は、6月9日(日)10:00-12:00 名古屋国際センターで開催。第3回は12月1日(日)。 ・短期療法を学ぶ会の母体である、日本ブリーフセラピー協会主催の2013年 第五回 学術会議は、中部大学名古屋キャンパスで11月23日・24日に開催。