「スクールソーシャルワーカー:ニーズ高まる 福祉資格6割なし 高い専門性、養成追いつかず」『毎日新聞』2013年05月25日(東京夕刊)

来年度の予算計上を行う前に、時期を得た調査と取材だと思います。
「スクールソーシャルワーカー:ニーズ高まる 福祉資格6割なし 高い専門性、養成追いつかず」『毎日新聞』2013年05月25日(東京夕刊) 不登校、いじめなどの解決に向けて学校でニーズが高まっているのが福祉の専門家の立場から解決を図る「スクールソーシャルワーカー」(SSW)だ。だが、活動中のSSWのうち6割が福祉の専門資格を持っていないことが大阪府立大の山野則子教授(児童福祉)の調査で分かった。高い専門性を求められるSSWの養成が追いついていないことなどが要因と見られ、山野教授は「予算を増やすなど手厚い対策が急務だ」と指摘している。  調査は昨年2〜5月、SSWを活用している155自治体(42都道府県、113市区町村)の教委とSSWを対象に実施。108教委と372人のSSWから回答を得た。SSWの実態調査は初めてという。  2008年度からSSW活用事業を始めた文部科学省は「福祉専門資格を持つのが望ましい」としているが、調査では、SSWが持つ資格は、社会福祉士が40%、精神保健福祉士は21%だった。最多は教員免許(52%)で、無資格者も5%いた。山野教授によると、元校長や警察OBというケースも少なくない。  専門的知識を持つ有資格者は課題へもきめ細かく対応できる。調査の中で「課題を抱えた子供の家庭事情を把握して教員らとの会議で伝える」と回答したのは、社会福祉士精神保健福祉士はそれぞれ6割だったが、教員免許者は3割ほどだった。教委に課題を聞くと、4割が「福祉の専門家が確保しにくいことやSSW自体が足りない」ことを挙げ、人材不足も露呈した。一方、SSWの勤務日数は年間「100日未満」(およそ週2日未満)が約半分を占めた。自治体の財政難が原因とみられ、山野教授は「これでは家庭や子供と関わりたくても時間が足りない」と財政支援の必要性を指摘する。  日本社会福祉士養成校協会は09年度から、協会の基準を満たし資格を取ることができる大学・専門学校の認定制度を始めたが、現在全国で29校のみ。「SSWを普及させていくには人材養成と受け皿づくりの両面の対策が必要だ」と山野教授は話している。【三木陽介】