家族療法ワークショップⅠ(2013.8.2-8.4)
京都国際社会福祉センターで2013年8月2日から4日までの3日間、家族療法ワークショップⅠに参加してきた。
http://www.kiswec.com/fam_workshop.html
結論から言えば、今の自分の問題意識にマッチしたとても有意義な研修だった。
以下、各日程の内容と感想を述べる。
参加者は31名。殆どが児童相談所の児童福祉司か児童心理司。その他6名が病院のソーシャルワーカーだった。北は群馬県から南は長崎県。すごく遠方からも参加者がいることに驚いた。なお、団先生によると、時代によって児童相談所からの参加者は大きく変動しているとのこと。
○1日目 13:00~20:30
・家族を取り巻く社会システムについて講義。
・家族の特徴を理解するために、境界・サブシステム・パワーという3つのキーワードについて講義。
・ジェノグラムの書き方について講義。
【印象に残った言葉】
・治療方法のトレンドとして、色々なものが流行るが廃れもする。その中で残るものもある。社会システムも同じでだが、家族は形態の微修正をしつつも家族としてどの時代にも存在する。但し、家族が素晴らしいということではなく、良い面も悪い面も含んでいる。
・ここで学ぶことは家族の構造的理解。社会システムの中の家族システム。治療技術ではない。とらえ方、考え方、家族観。こいういう事が考えられないと、ただの流派になりさがる。
・今やっている仕事が10年後もあると思うな。目の前のことに固執するのではなく、その前提に目を向けること。
・ベースの哲学を学ばず各論を学んでしまっている。全体としてどうなっているのかを考えなければ。
・行うであろうことよりも行わないことに目を向ける。
・相手を変えるのではなく、変えられるように仕組みを考える。
・面接を通して、家族システムに特徴を見出したら、それが問題や症状の原因であるからやめよというのではなく、「私にはこの様に見える。そこを少し変えてみませんか。但し、それであなたのおっしゃる問題や症状が軽減されるかもしれません」と。
・相談者に依存させてしまうような面接者は二流三流。面接後、再び問題が発生した時に家族が自分たちの力で解決できるようになることが一流。
【取り上げた書籍】
ジェノグラムを手段とした書籍は少ない。ミネルヴァ書房の方は、時代の変化を踏まえ同性愛者などの記号表現も例示されている。(by早樫先生)
※『ジェノグラム(家系図)の臨床』は出版社のHPでは在庫ありと。(2013.8.14現在)
【感想】
・講師は、面接技術ではなくて、家族を理解することに力点を置いていた。家族を理解するという目的のためには、家族療法の各流派にとらわれる必要はないと。
・家族の特徴(構造)として、境界・サブシステム・パワーという視点があり、その視点に沿って家族を観察すると、従来と異なった家族が見えてくる。
・家族に特徴があることと、家族に問題・症状があることは別であることを学んだ講義だった。両者の因果論を語ろうと思えばいくらでも「それらしい理由」を想像可能だが、根拠は乏しい。
・団先生は、家族の力を信じており、問題や症状がどこにあるかという視点で家族を見ていない。逆に問題や症状があるのではないかという視点でばかり家族を見て・因果論的説明を行うものに対して懐疑的であった。
○2日目 9:30~19:00
・合計8時間30分の長丁場。午前中は、ジェノグラムを聞き取る練習として、3人1組のグループに分かれて、面接者・被面接者・観察者に分かれて面接。質問のための質問ではなく、相手が話したことから話題を広げていく練習をした。
・午後は、5名×6グループになり1名が面接者を残りの4名は家族役になった。家族役は各グループごとに自由に役割や来所理由を設定。研修所内には各グループで打ち合わせができる大きな部屋が提供される。面接する部屋は更に別にあり、ワンウェイミラーで隣の観察室から眺めることができ、また面接室に設置されたカメラの映像は、メインで使用していた研修室で視聴することができる。設備が整っているからこそ、とても集中してロールプレイをすることができた。
・その後は、20分の設定時間で面接者が他のグループの家族と面接を行う。各面接終了後は、講師2人から講評を頂く。それを6グループ分。休憩を入れながら5時間30分取り組んだ。
【感想】
・質問のための質問だと、相手にとっては唐突な印象を持たれてしまう。そのため、相手の発言をしっかり聞きそれを踏まえて丁寧に質問する大切さを学んだ。
・面接の主目的は家族全体とジョイニングすること、またジェノグラムの聞き取りをしつつ家族の特徴を把握すること。しかし、実際にやってみるとこれが大変難しい。特定の人と話をすることはできるが、他の家族にも声をかけて「お客さん」にしないとなると…。個々へのジョイニングだけでなく家族システムへのジョイニングはあまり意識できていなかった。
・普段使っているジェノグラムが十分に聞けていなかったことに気付き、また丁寧にジェノグラムを確認することで家族理解が想像以上に深まることに私も含め参加者一同が驚きはじめていた。
・午前も午後もロールプレイ。かつ、自分の練習の為と思い面接者に立候補したが、実際の面接は最後となったので緊張が最後まで続き、本当に疲れた。
・職業柄か子どもの前で借金のエピソードを深めていき、子供を飽きさせてしまった。また主訴は子どもの不登校であったが、その点について設定時間内で十分に触れられなかった。
・主訴や起こっている出来事を聞くこととジョイニングすることのバランスが難しい。
・事前に講師陣が設定したグループでの行動が多かったが、終了時にはとても良い雰囲気のグループに変わっていて、過ごしやすかった。感謝。
○3日目 9:30~15:30
・2日間で学んだことを踏まえて、団先生を来談者役にして各グループで交代しながら面接を行うというロールプレイ。これは、ジョイニングだけでなく初回面接を終了するところまで行うことを意識して取り組んだ。
・各グループで家族役と面接者役を決め、特定の事例について、チームごとにどの様にジョイニングするか協議しつつ面接を行うロールプレイをした。
【取り上げた書籍】
通年講義で話をすることを3日間で話しているので、すべてが話できている訳ではない。それを補うという点でまとまっている本。(by団先生)
【感想】
・あれほどジェノグラムの聞き取りが重要だと説明を受けたのに、ついつい予断で決めつけていたと反省。特別な質問をせずとも、一般的な質問をすることで事実を確認する必要性を改めて感じた。来談者は聞かれたことには答えるが聞かれなかったことについては、それが仮に面接者にとって重要なことでも、来談者にとっては普通のことなので話さないこともあると知っておく。
○全体の感想
・家族の特徴を見るための概念装置として、境界・サブシステム・パワーというキーワードは今後面接をする上で重要だと思った。
・ジェノグラムを自分では聞いていたつもりだったが、十分に聞けていなかったことを痛感した。また、3世代以上の聞き取りをすることでより深く家族について知ることができ、家族内の力動やルールに沿って面接ができることを知った。ジェノグラムの聞き取りが援助を行う上でも大いに助けになるのに十分に活用できていなかったと気付けたのは収穫であった。
・家族に尊厳を持って接するという態度・考えは、団先生・早樫先生の話の随所で感じたが、これは6月に受講した福山先生のワークショップでも感じたことである。
・25年ほど続いている研修だが、定員を超えての参加者であることから人気の程が伺える。研修会場の機能上の優れた点も含め、プログラムはとてもよく練られており、とても充実したワークショップだった。ここ数年の研修の中で一番よかったと思う。大変学びが多く、条件が許せば是非多くのソーシャルワーカーに体験してもらいたいと思った。来年度開催されるであろうステップⅡにもぜひ参加したい。
・後日、面接の中で意識的にジェノグラムの聞き取りをしているが、面接の展開(家族の反応)が従来と変わり、家族の力や悩みを更に知ることができるようになったので、驚きを感じている。
【関連】
団士郎先生のツイッター8/2に研修風景の写真が掲載されている。
https://twitter.com/danshirosan/status/363235255307603968
【番外編】
食べログで京都駅周辺の洋食部門上位だった『洋食の店 勝』。名物は200gのとんかつ。厚さ2cm!
体調がいまいちなのと、これから研修を控えているので130gをオーダー。見た目は美味しそうだが、味は普通・・・。名物の200gとんかつを注文するお客さんに、「時間がかかるからやめて」と店長のおやじさん。「時間がかかってもいいから食べたい」とお客さん。まさに戦場である。食べログに「店長と奥さんの口喧嘩」というコメントがあったが、その通りだった・・・。もう行くことはないだろう。
研修1日目の夜。京都駅周辺で人気のあるラーメン屋『本家第一旭本店』。面白いのは右隣にもラーメン屋『新福菜館本店』があり同じくらい行列ができていた。気になって、結局3日目の帰り直前に行くことに(笑)
研修中に行った3つのラーメン屋の中で、一番美味しかった。京都ラーメンは九条ねぎをたくさんのせる様だ。
2日目。研修がハードすぎて疲労困憊の中、お知り合いになった京都在住のMSWの方に連れられて、桃山御陵にある居酒屋さんへ。刺身が美味しかった。
調子にのって、そのまま近所のラーメン屋『大中』へ。こちらもしっかり並んでいます。
味は普通だが、麺のかたさ・味の種類(元味と新味)・チャーシューの種類(バラ・ロース・両方)/脂の量・味の濃さ・ねぎ/もやしの量・キムチ/半熟卵の有無を選ぶのに一苦労。何をどう組み合わせても600円。何故、そんなに安いのか…。
3日目。参加者の中に大学時代を京都で過ごしたイケメン臨床心理士がおり、彼がお薦めの洋食屋『東洋亭』へ。名物ハンバーグステーキを注文。うまし。写真には見えていないが、ハンバーグの奥に巨大なじゃがいもが一つ添えられており、ボリューム満点。女性にはやや多過ぎるかも。
はしごで、1日目に気になっていたラーメン屋『新福菜館本店』へ。うーん、濃い。京都ラーメンの元祖的なお店とのこと。3日3晩ラーメンを食べ歩いたことになる。
他にも、京都駅内に京都拉麺小路という一角があり、全国から有名店8店舗が集まっている。しかし、京都に来て他県のラーメンを食べるのは無粋と考え立ち寄らず。それでも、とんこつ醤油の『徳島ラーメン東大』がとても気になった。