「70平方メートルに17人宿泊…介護施設暴行」『読売新聞』2013年12月3日

次回の介護報酬改定(2015年4月)まではどうするのでしょうか。全国に3,000か所とは驚きました。定員数が大きく異なりますが、事業所数としては既に全国の老健の数3,994施設(出典『介護給付費実態調査』平成25年9月分)に迫っています。在宅介護の限界と特養の少なさの結果としてのお泊りデイの急増。両者に手を付けなければ、例えお泊りデイを規制したとしても他の形をとって、矛盾を緩和する法定外サービスが登場するだけだと思います。
「70平方メートルに17人宿泊…介護施設暴行」『読売新聞』2013年12月3日 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=89017 広島県福山市の介護福祉会社が運営するデイサービス2施設で起きた利用者に対する暴行事件で、このうち宿泊サービスを行う1施設では県警の捜索当日、約70平方メートルのスペースに認知症高齢者ら17人が泊まっていたことがわかった。  中には長期宿泊者もおり、多人数による劣悪な環境下での宿泊が常態化していたとみられる。デイ施設での宿泊サービスはここ数年、全国に広がっているが、介護保険の適用外のため国の指針はなく、市も運営実態を把握できていなかった。 雑魚寝状態  同社は「デイサービスゆかりの家」(昼間の利用定員10人)と「デイサービスゆかりの家北本庄」(同10人)を運営しており、宿泊サービスを行っていたのは北本庄の施設。2階建て計143平方メートルの民家を改修し、2010年6月に開設した。  市によると、県警が捜索した11月26日、両施設の利用者のうち男女17人(61~102歳)が前日から宿泊しているのを確認。その半数以上は、認知症や知的障害などを抱えていた。  寝室は1階4室、2階2室の計約70平方メートル。利用者用のベッドは1、2階の4室に計9台あり、他の8人は1階で布団で寝ていたとみられる。1人あたりのスペースは4平方メートル程度で、部屋の中にプライバシーを確保するパーテーションなどの仕切りはなく、いわゆる雑魚寝(ざこね)状態だった。宿直の職員は1人だけだった。  ただ、宿泊サービスは介護保険適用外のため、市は各デイサービス施設での実施状況などを調べておらず、同社の運営実態も把握していなかったという。  市内のある事業者は「うちは3部屋に1人ずつしか泊めない。一度に17人なんて考えられない」と言う。 通報生かせず  「職員が利用者に罵声を浴びせている声が聞こえ、市に通報した。なぜ、暴行を防げなかったのか」。施設近くに住む住民は取材に対し、悔しげに語った。  市によると、通報は今年4月23日で、「『死ね』『バカ』とどなる声が頻繁に聞こえる」との内容。しかし、介護保険課の担当者が経営者の孫衛容疑者(42)に電話をし、事実確認もしないまま、「注意するように」と求めただけだった。  5月下旬、2施設に定期の立ち入り検査をしたが、市の内規では、検査項目は職員数や配置などで、それ以外の記録は不要。このため、虐待の有無を調べたかどうかの記録は残らず、宿泊サービスについても継続的なチェックには至らなかった。県警によると、利用者2人が暴行されたのはその後、6月と9月だった。  市は11月29日付で2施設の事業者指定を取り消し、市内約180の全デイサービス施設に宿泊の有無などを聞き取る初の調査を進めている。市は「通報を受けてどう対応してきたかは、今となっては曖昧で、結果的に暴行を防げなかった。今後、記録や情報共有を徹底する」としている。 デイサービス施設での暴行事件 介護福祉会社社長の孫衛容疑者(42)と介護士2人の計3人が11月26日、暴行容疑で逮捕された。今年6月、孫容疑者ら2人が共謀のうえ認知症男性(84)の顔や胸などを数回殴り、9月には別の1人が認知症が疑われる女性(61)の後頭部を蹴った疑い。3人は当初否認していたが、一部の容疑者は暴行を認める供述を始めたという。 悪質業者淘汰へ15年度からデイサービス届け出制導入  宿泊サービスを行うデイ施設は「お泊まりデイ」とも呼ばれる。利用者家族の急用時などに一時的に預かるのが建前だが、慢性的に不足している特別養護老人ホームなどの代替用としても使われ、全国に3000か所前後あるとみられる。  利用者の安全や人権上の観点から、東京と大阪、千葉の3都府県は2011年度から順次、独自の運営基準を導入。いずれも〈1〉宿泊スペースは1人につき7・43平方メートル(4畳半に相当)以上〈2〉部屋を仕切るなどプライバシーを確保〈3〉宿泊者数は昼間の利用定員の半分以下――などとする。デイサービスゆかりの家北本庄に〈3〉を当てはめると、宿泊者数は5人以下でなければならず、〈1〉と〈2〉についても満たしていなかった。  厚生労働省は15年度から宿泊サービスの実施を届け出制とし、各施設の情報公開を進める方針。担当者は「悪質な事業者を淘汰(とうた)していく」と狙いを明かす。  総務省消防庁も15年度以降に新設されるデイ施設に対し、自力移動が困難な高齢者を宿泊させる場合は火災報知機などの設置を義務付ける。既存施設には17年度末までの設置を求める。