新刊案内

人工呼吸器、胃ろう、そして今度は人工透析。著者は、長年透析クリニックで勤務されている看護師。立命館大学大学院博士論文(主査:立岩信也 教授)を書籍化。
有吉玲子『腎臓病と人工透析の現代史―「選択」を強いられる患者たち 』生活書院,2013.11 340頁 ○内容 「生きる」ために人工透析という手段が普及したにもかかわらず、患者が選択する/選択されるという事象が、今、起きているのはなぜなのか? 生きることが可能となる医療技術を、誰がどのように享受するのか、享受するための仕組みをどのように作るのか。その問いを突きつけるものとしての人工透析の歴史──技術の導入と制度・政策の構築過程、患者たちが直面する現状がいかに形成されてきたか──を検証し明らかにする。 ○目次 はじめに                     序文   これは腎臓病何十万人のため、のみならず、必読書だと思う   立岩真也 序 章 1  本書の背景と目的 2  本書の構成 3  研究方法 4  本書で用いる用語についての説明 第1章  人工腎臓で生きる人々の現状 1  人工腎臓、利用したくてもできない事情 2  人工腎臓にかかる費用 3  人工腎臓の利用/非利用──日本の動向 4  人工腎臓の利用、日本と世界の様子 5  人工腎臓、生存のための手段 第2章  人工腎臓の歴史と現況 1  腎機能代替療法の歴史 2  日本における人工腎臓の研究 第3章  希少な人工腎臓と選択される患者たち 1 「神様委員会」による選択──アメリカ 2 「お金の切れ目が命の切れ目」──日本での経緯 第4章  患者会の成立──医療を享受するために 1  病院単位の組織から組織拡充への動き 2  全国組織の成立 第5章  公費獲得までの道程 1  厚生省との交渉 2  身体障害者福祉法──更生医療と内部障害者 3  自治体への働きかけ──すべての人が制度を利用できるために 4  公費獲得の成立過程を振り返って 第6章  1970年代の医療供給/費用配分のスキーム 1  医療保険制度とその矛盾           2  医療供給のための諸施策 3  高額療養費制度の創設──給付率の偏りの補完の策として 4  1970年代に形成された医療供給のスキーム 5  医療機関存続の手段 6  せり出す費用負担者の懸念 第7章  腎移植の普及と頓挫──1980年代 1  腎移植──もう1つの生存の手段 2  腎臓移植の推進と限界 3  希少性を有する腎移植 第8章  人工腎臓の供給抑制──医療費用配分の一環として 1  医療供給のコントロール 2  人工腎臓への費用配分の変遷   第9章  人工腎臓の利用/非利用──決定の要因 1  欧米の傾向 2  日本における利用/非利用の決定要因 3  宮崎県透析拒否事件 4  医師の裁量と患者の意向 5  流れはつくられる 終 章 謝 辞 文献表 資 料