「ソーシャルワーカーの支援付住まい 相模原市の独自事業」『週刊福祉新聞』2014年 4月21日号

社会福祉士会が市の委託を受けて直接サービスを提供するという時代に。

【参考】
相模原市「ホームレス等一時生活支援事業の委託事業について」
http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/fukushi/027161.html
・「つながり失う高齢者 どう支えるか」NHK『プロジェクト2030』2013年2月5日
http://www.nhk.or.jp/shutoken/2030/series2/archive/130205/index.html


ソーシャルワーカーの支援付住まい 相模原市の独自事業」『週刊福祉新聞』2014年 4月21日号
http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/3672

生活の場を失った人に支援付きの住まいを提供する独自事業が相模原市で始まった。市の委託を受けた神奈川県社会福祉士会(山下康会長)が、借り上げたアパートで入居者の就労など生活上の問題に寄り添っている。市は2015年度からの生活困窮者自立支援制度を見据え、都市部ならではの「見えない孤立」に真正面から向き合っている。

 4月上旬の夕方、市内のアパートの一室。「履歴書でしょ、印鑑でしょ…」。就職活動中の男性(30代)が常勤の相談・支援員池田恵子さんと話し合う。退居日が迫り、職探しにも力が入る。  この部屋は、玄関ドアに「@HOUSEはばたき」と表示された談話室。この男性ら入居者はそれぞれ風呂・トイレ・冷暖房付きのワンルーム(6畳洋室)に住むが、食事はこの談話室兼食堂で作って食べる。

 事業の名称は「相模原市ホームレス等一時生活支援事業」で、原則として3カ月まで入居できる。自己負担はない。市が厚生労働省補助金を使って委託する独自事業で昨年末から始まった。  現在の入居者は男女3人。共通しているのは住まいがないこと、「孤立」から派生した複合的な問題を抱えていることだ。福祉事務所から依頼を受けた「はばたき」のスタッフは、入居者の「生き直し」に寄り添う。

 池田さんは言う。「入居者は誰にも頼らずに生きてきた人ばかり。何でも自分でやろうとする。ここでは炊事・掃除は入居者の当番制。コミュニケーション力を身に付け頼り方を覚えてほしい」。

 土日祝日も含めて日中は2人の相談・支援員が常駐し、ハローワークへの同行、関係機関との打ち合わせなどに奔走する。寮でも福祉施設でもない支援付きのアパートーー。これは15年度から始まる生活困窮者自立支援制度の先取りだ。

孤立した困窮者

 新制度は福祉事務所のある自治体に対し、生活保護に至る前の人の相談窓口を設けるよう義務付けた。一方、その人たちの一時的な居場所づくりは任意だが、市地域福祉課の小林和明課長は「市が持つ必要がある」と話す。

 住民の出入りが激しい自治体では単身高齢者、ネットカフェを転々とする若者の存在が指摘されて久しい。同市でも失業や家族との離別などにより突然住まいを失う「見えない孤立」が相当あると見られている。

 そうした人の生活は衣食住だけでは満たされない。入居時に生活問題のすべてが見えるわけではなく、3カ月で解決できるわけでもない。だからこそ市は専門家によるソーシャルワークを重視した。

 厚労省によると、福祉事務所を訪れても生活保護に至らなかった人(11年度)は約40万人。新制度の対象になりえる人たちだ。その多くは「見えない孤立」と呼ばれる問題を抱え、相談だけならば、衣食住だけならば、次のステージに進めない人かもしれない。