新刊案内

エダ・ゴールドシュタインほか(福山和女ほか監訳)『統合的短期型ソーシャルワーク―ISTTの理論と実践』金剛出版,2014.6.10

○内容

あらゆる援助には始まりと終わりがある。
統合的短期型ソーシャルワーク=ISTTは,迅速で綿密な生物・心理・社会的アセスメントにより困難ケースの問題の本質を見抜き,時間的制約,資源の制約のなかで最適な介入を構築する援助スキルである。
ISTTはまた,複数のモデルを統合し,ソーシャルワークが培ってきた理論・技術を結集して,限りある援助をより充実したものにし,援助を離れたクライエントの生涯をも見据えたプラクティカルな援助理論である。 本書第I部では,ISTTの14の構成要素を,複合的な問題に対する援助実践の臨場感ある描写を通して解説しながら,ソーシャルワークの専門性と使命の理解を促す。
第II部では,危機的状況,情緒障害をもつクライエント,接近困難なクライエント,家族,グループへの構成要素の応用を検討しながら,ISTTの射程の広がりを確認していく。
ISTTの包括的視点は,生活問題とメンタルヘルスの問題がからみあい,援助の環境が複雑化するわが国の現状において,さらに活躍が期待されるソーシャルワーカーの臨床力を向上し,福祉領域の多岐にわたる業務に堅実で論理的な基盤を提供するだろう。

○目次

第I部 理論概念と実践原則
第1章 短期型援助の概観
第2章 理論的視点と主要な特徴
第3章 開始段階/パートI
第4章 開始段階/パートII
第5章 展開段階/パートI
第6章 展開段階/パートII
第7章 終結段階
第II部 特殊な問題と対象
第8章 危機志向型ISTT 第9章 情緒障害をもつクライエント
第10章 自ら援助を求める気のない,接近困難なクライエント
第11章 家族志向型ISTT
第12章 グループ志向型ISTT
コメント:日本医療社会福祉協会全国大会で本テーマがいつも自主企画シンポジウムとして開催されていました。いよいよその原著が翻訳・出版!!


日本社会福祉学会事典編集委員会編『社会福祉学事典』丸善出版,2014.5.31

○内容

日本社会福祉学会は、1954年に設立されて以来、社会福祉に関する様々な領域において、幅広く学術研究の発展に取り組んでまいりました。また近年におきましては、非正規労働者の増加による所得格差によって生活保護を受けている人、虐待を受けている児童や高齢者、DVを受ける女性、さらには大震災の被災者に対する支援など、現代社会における重要な問題にも積極的に取り組んでいます。
日本社会福祉学会は2014年に設立60周年を迎えます。そこで様々な重要問題を扱う社会福祉学の状況を踏まえ、社会福祉に関わる実務と研究の向上をさらに一層はかることを企図して、このたび60周年記念出版として、『社会福祉学事典を編集・刊行いたしました。
本事典は、専門家や学生が社会福祉学について理論的な知識を深めていただくだけではなく、実際に社会福祉を手がけていく上で必要な予備知識や方法上のガイドライン、そしてイシュー(論点・争点)なども丁寧に説明し、実務レベルでさまざまに社会福祉に関わる人びとが、現場に即して活用できる「中項目主義」の事典を目指しています。
また、多岐にわたる社会福祉学の全体像についての体系的な理解を通じて、社会福祉学を介して、異なる分野との交流がますます促進されることを願っています。
○目次
第I部 基礎編
1章 原理・思想
2章 歴史
3章 方法1(政策と運営)
第II部 応用編
1章 生計を支える
2章 健康を支える
3章 働く・社会参加を支える
4章 育ちを支える
5章 住まうを支える
6章 人権を支える
7章 家族・地域を支える
第III部 研究・教育編
1章 研究方法
2章 教育
3章 マンパワー・人材
コメント:現時点での社会福祉学における事典の最高峰。職場に1冊欲しいところ。


近藤直司『医療・保健・福祉・心理専門職のための アセスメント技術を深めるハンドブック――精神力動的な視点を実践に活かすために』明石書店,2014.5.17

○内容
内的葛藤、自我や転移/逆転移など、精神分析を基盤とする力動精神医学。それに基づきケースをアセスメントする精神力動的診断をわかりやすく解説し、より深くアセスメントする視点を提示する。アセスメントの力量をより高めたい人必読。

○目次

第1部 精神力動的診断の枠組み(力動精神医学の成り立ち
関連する用語について
精神力動的診断とは
今日的な精神力動的診断)
第2部 精神力動的診断の方法(精神力動的な診断・アセスメントのための面接
対象喪失概念をアセスメントに活かす)
第3部 精神力動的観点の応用(薬物療法をめぐる力動的な視点
入院治療や入所施設における力動的なアセスメント
家族を力動的にアセスメントする
発達障害臨床と精神力動的な観点)
コメント:自己のアセスメントを精神力動的診断から見つめ直すのによいかも。姉妹本『医療・保健・福祉・心理専門職のためのアセスメント技術を高めるハンドブック―ケースレポートの方法からケース検討会議の技術まで―明石書店,2012.5も注目。



結城康博『孤独死のリアル (講談社現代新書)』講談社,2014.5.16

○内容
2015年には独り暮らし高齢者600万人、「最期は家で独りで」の時代が始まる。そのために知っておきたい現実…。例えば、遺体の検視は? 2,3日以内に発見されないと? 葬儀、遺品、部屋、遺骨などはどうなる? 男性のほうが孤独死しやすい? 多少でも財産があれば親族が現れるって本当? 悲惨でない孤独死とは? 政府が「自助」を唱える時代にどうすればよいのか? もはや他人事ではない孤独死問題への必読の書。

○目次

プロローグ ケアマネジャー時代の経験から
第1章 検視医や援助職の立場から―遺体発見の現場
第2章 孤独死問題はどう考えられてきたか
第3章 葬儀業者や遺品整理業者からみた孤独死
第4章 家族と地域社会の変容と孤独死
第5章 家で亡くなる、病院で亡くなる
第6章 いま、地域で独り暮らし高齢者を見守るということ
エピローグ

コメント:今年の日本呼吸リハビリテーション学会の演題に関連。結城氏の関連本『孤独死を防ぐ: 支援の実際と政策の動向ミネルヴァ書房,2012.9.30も注目。


池上直己『医療・介護問題を読み解く (日経文庫) 』日本経済新聞出版社,2014.6.14

コメント:国の医療政策における基礎データ分析で重要な役割を担っている池上氏。出版社HPには未掲載だが、名著『ベーシック 医療問題 〈第4版〉 (日経文庫)日本経済新聞出版社,2010.8.26の改訂版であろうか。