「入居、総合病院が紹介も 『拘束介護』の高齢者マンション」『朝日新聞』2014年11月25日

日本医療社会福祉協会の佐原まち子会長が朝日新聞の取材に対してコメント。


「入居、総合病院が紹介も 『拘束介護』の高齢者マンション」『朝日新聞』2014年11月25日
http://www.asahi.com/articles/ASGCS5DFQGCSUUPI001.html

 東京都北区の高齢者マンションの「拘束介護」問題で、半数以上の入居者が都内の大学病院など複数の総合病院からの紹介をきっかけに、マンションに入居していたことがわかった。一部の病院は朝日新聞の取材に紹介の事実を認めたが、「拘束は知らなかった」と説明している。
 この「シニアマンション」と提携する医療法人の内部資料や関係者の証言によると、病院から紹介を受けた高齢者は、まず医療法人の診療所に転院。原則1~2週間の「入居審査」を受けた後、ほとんどが診療所近くのマンション3棟に入っていた。
 朝日新聞は、入居者の紹介元として名前が多く挙がる都内の6病院に取材した。いずれの病院も、看護師や社会福祉士などの専門職が患者の「退院支援」に取り組んでいる。
 6病院のうち、2病院は退院後に暮らせる施設の候補の一つとして、シニアマンションを紹介したことを認め、「低価格の施設を望む高齢者に情報を提供していた」などと答えた。
 また、別の総合病院は、マンションではなく転院先の診療所を紹介しただけとし、その上で、「(マンション内部には)退院支援の一環として、退院患者の居室を過去数回訪問したことはあるが、マンション全体を見学したことはない」と答えた。
 これらの3病院はいずれも、「拘束は知らなかった」と答えた。
 このほか、大学病院を含む計3病院は「守秘義務がある」「事実確認できていない」などとして回答しなかった。
 医療法人の関係者によると、医療法人の「医療連携担当者」が都内の病院を回り、患者にマンションを紹介してほしいと売り込んでいたという。
 この医療法人は取材に「患者・利用者を当法人にご紹介していただいている(中略)病院の医師および医療ソーシャルワーカーの方々からも、『(中略)標準レベルを超えた質の高いサービスを提供している』とのご評価を頂戴(ちょうだい)しております」と書面で回答した。
 拘束介護の問題をめぐっては、東京都が医療法人の訪問介護事業所などに介護保険法に基づき立ち入り監査をし、実態解明を進めている。
■「大病院に勧められ、信用」
 ある総合病院からシニアマンションを紹介され、90歳を超す母親が拘束介護を受けたという女性は「大病院に勧められ、信用してしまった」と悔しがる。
 母親は昨年4月、脳梗塞(こうそく)で倒れ、総合病院に約3カ月入院。リハビリを始めた直後、2週間以内に退院するよう告げられ、女性は病院の社会福祉士らに転院先の紹介を求めた。その際、「別の病院でも3カ月たったら追い出される」「医療・介護が受けられ、長期滞在できる」とマンション入りを勧められたという。
 母親は狭い個室で柵に囲われたベッドに寝たきり状態にされた。女性は「母には申し訳ない気持ちでいっぱい。なぜ劣悪な施設を紹介したのか、病院に教えてほしい」と訴えた。(丸山ひかり、沢伸也)
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 〈日本医療社会福祉協会の佐原まち子会長の話〉 退院支援は、自宅や施設に「つないで終わり」ではだめだ。患者や家族に連絡をとったり、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどと連携したりして、退院後の生活を注意深く見守る責任がある。施設を紹介するにあたっては、地域の福祉関係者から情報を集めて見極めるなど、病院側に慎重な対応が求められる。