これから出る本

来月発売予定。面白そう。ちなみに、拙Blogは本日で開設して丸10年が経ちました。みなさんのおかげです。今年もよろしくお願いします。


児島亜紀子編『社会福祉実践における主体性を尊重した対等な関わりは可能か』ミネルヴァ書房,2015年2月刊行予定

○内容
本書は、社会福祉実践の前提条件とされる「利用者主体」「自己決定」並びに「利用者-援助者関係」を再考したものである。

レヴィナスの関係論を軸に、ワーカーからみたら他者となる利用者を主体とした支援は可能か、利用者-援助者という非対称性の関係の中でワーカーはその主体性をどう位置づけるのか、といった諸問題について、ジェンダー、多職種連携、滞日外国人等の近年の社会問題をふまえ考察した一冊。
[ここがポイント]
レヴィナスの理論を基に利用者主体の支援の可能性を考察。
◎ ワーカー自身の主体性も踏まえ、ワーカーからみたら他者となる利用者との関係性を考察。

○目次
第1部 他者の〈他者性〉を尊重する
第1章 「他者に基礎づけられた倫理」の可能性
    ――傷つきやすい他者への応答
 1 ソーシャルワークにおける「正義」概念への疑義
 2 責任という倫理
 3 他者の「顔」とは何か
 4 私と他者のありよう
 5 「私」の暴力性
 6 他者の様相
 7 表象を超え出ようとする他者
 8 わからなさに耐えるソーシャルワーカー
 9 もう一つの正義
 10 2つの正義を架橋するソーシャルワーク実践
 11 レヴィナス倫理が問いかけているもの
第2章 満たされるべきニーズ/表明されないニーズ
 1 社会福祉の対象としての問題とニーズ
 2 普遍的ニーズの具体的項目
 3 満たされるべき状態としての普遍的ニーズ
 4 パターナリズムとニーズ表明
 5 再び社会問題とニーズを考える
第3章 社会福祉援助におけるジェンダー
    ――援助者と援助の受け手の動態的関係
 1 本章の問題関心と方向性
 2 社会福祉ジェンダーの交差
 3 援助者と利用者の関係を捉える新たな視点
   ――人類学の議論を参考に
 4 福祉援助現場にみる援助者と利用者の動態的な関係
 第2部 ワーカーという主体を再考する
第4章 文化的他者としての利用者と援助者
    ――外国人住民の増加をめぐって
 1 文化的他者としての外国人住民
 2 外国人住民への対応
   ――日系ブラジル人を事例に
 3 文化的他者にどう向かい合うか
 4 求められる「日本型」多文化対応力
 5 「日本型」多文化対応力の涵養という課題
 6 文化的他者の多様性とその尊重に向けて
第5章 もう一人の他者との連携・協働
    ――多職種連携・協働の課題とその可能性
 1 多職種との連携・協働をめぐる現状
 2 連携・協働の基本的機能の検討
 3 連携・協働の構造的な課題
 4 連携・協働をめぐる今後の研究課題
第6章 ワーカーのオートエスノグラフィー
    ――どこまで反省的になれるか
 1 クライエントから学べることはあるのだろうか
 2 ソーシャルワークはどこまで異質なものを受け入れることができるのか
 3 オートエスノグラフィー
 4 物語Ⅰ
 5 物語Ⅱ
 6 物語Ⅲ
 7 物語Ⅳ
 8 物語Ⅴ
 9 ふりかえり
第7章 方面委員制度にみるケアとコントロールの諸相
    ――社会事業期における援助実践から
 1 方面委員制度とは
 2 大阪府方面委員制度
 3 本章で用いる史資料
 4 当時の受療状況
 5 方面委員と住民の関係性
 6 「医療問題」からみる方面委員の処遇理念
 7 「教化」の実践
 第3部 利用者-援助者関係を考える
第8章 利用者-援助者関係のバランス
    ――援助するひとと援助されるひとは、どこまで対等になれるか
 1 「対等な関係」なのか、という問い
 2 社会福祉援助における「対等な関係」
 3 援助関係の非対称性
 4 利用者-援助者関係の「バランス」
 5 利用者-援助者関係の類型
 6 パートナーシップの構築に向けて
   ――他者(相手)の存在が、主体(自分)を作る
 7 共にいる、ということ
   ――援助者の立ち位置
第9章 自己決定をめぐる支援者の問題
    ――体験を通した選択肢の獲得に焦点を当てて
 1 自己決定をめぐる支援者と当事者
 2 自己決定に関する問題
 3 選択肢獲得に向けた支援
 4 体験支援の実際
 5 体験支援の効果と課題
 6 自己決定の問題への示唆
 7 他者を支援するということ
第10章 援助の終結とその評価の意義
 1 援助における終結というきっかけ/決定とその背景
 2 社会福祉援助における終結
 3 ある当事者の“語り”から
 4 社会福祉援助の終結とその評価