新刊案内

ドン・D・ジャクソン(小森 康永訳)『家族相互作用―ドン・D・ジャクソン臨床選集』金剛出版,2015/3/16

○内容
20世紀半ば,家族全員を集めてセラピーを行う合同家族療法の同時多発的な発生が,個人を超えて,関係・相互作用・システムを直接的に扱う「家族療法」の嚆矢とされる。コミュニケーションを治療対象とするこの新たな領域の誕生において,グレゴリー・ベイトソンの名で知られるダブルバインド理論に臨床上の裏付けを与えたのが,精神科医ドン・D・ジャクソンの相互作用パターンを見抜く観察眼と驚異的な診断能力であった。本書は,ハリー・スタック・サリヴァンに学び精神分析家・神経科学者としてキャリアをスタート,パロアルト・グループ(グレゴリー・ベイトソン/ジェイ・ヘイリー/ジョン・ウィークランド/ドン・ジャクソン)に参加し,メンタル・リサーチ・インスティテュート(MRI)を創設しながら,48歳の若さで早世した天才セラピストの仕事を纏めた二冊の論集より,本邦初訳の重要論文を厳選した論文選である。各々の論考は,統合失調症患者とその家族の詳細な事例描写,「家族ホメオスターシス」「マリタル・キド・プロ・クオ」といった概念の考察を通して,家族療法・ブリーフセラピーの興隆につながる非規範的・相互作用的精神療法の出発点を示している。

○目次

Section I 「相互作用」の発見
はじめに ジェイ・ヘイリー
序.ウェンデル・レイ
1.家族ホメオスターシスの問題[1954/1957]
2.家族ルール―マリタル・キド・プロ・クオ[1965]
3.統合失調症エピソードに関する患者と治療者の所見[1958]:w.ジョン・ウィークランド
Section II 「相互作用」の臨床
はじめに:ポール・ワツラウィック
プロローグそして,いくらかの回想:カルロス・E・シュルツキ
ドン・ジャクソンの目で見る:ウェンデル・レイ
4.統合失調症症状と家族相互作用[1959]:w.ジョン・H・ウィークランド
5.統合失調症患者の家族における家族療法[1961]
6.合同家族療法―理論,技法と結果についての考察[1961]:w.ジョン・H・ウィークランド
7.相互作用的精神療法[1961]
8.家族ホメオスターシスと患者変化[1964]:w.アーヴィン・ヤーロム
解説:パロ・アルトの家族療法家,ドン・D・ジャクソン 小森康永

○コメント
ドン・ジャクソンが48歳で若くして亡くなったことを知りました。


リチャード・ローボルト(太田 裕一訳)『スーパーヴィジョンのパワーゲーム―心理療法家訓練における影響力,カルト,洗脳』2015/3/10

○内容
心理療法/精神分析訓練のスーパーヴィジョンは,スーパーヴァイザーの絶対的権力がスーパーヴァイジーに恐怖と盲信と洗脳を強いるリスクを,その自閉的構造ゆえにつねに孕んでいる。では,この悪しきパワーゲームからいかにして逃走するのか?
「第1部 スーパーヴィジョン体験」で紹介される「スーパーヴィジョンのパワーゲーム」のリスクを切り抜けてきたスーパーヴァイジーたちの体験は,「第2部 論理的・技法的考察」に活用され,この体験に依拠した理論から,共感,主観的体験,民主的原理に裏打ちされた代替補完的スーパーヴィジョンモデルが提示されていく。転移/逆転移,投影同一化,攻撃性,抵抗/逆抵抗,防衛,そして対話――これらの諸概念を駆使して構想されるスーパーヴィジョンは,スーパーヴァイジー=セラピストのみならず,その先で治癒を求めるクライエントにも通じ,生産的なセラピーを実現するためのスプリングボードとなる。スーパーヴァイザーとスーパーヴァイジーがクライエントのために協調するというスーパーヴィジョン本来の意義を回復させるための「創造的スーパーヴィジョン論」。

○目次
アーネスト・S・ウルフ序論/チャールズ・B・ストロジャー
★第1部 スーパーヴィジョン体験―個人的な内省
01 強制的な訓練プログラムにおける服従を体験したセラピストのイニシエーションの旅/アネット・リチャード
02 ある妻の物語―関係性システムの視点から/リンダ・ローボルト+ドリス・ブラザーズ
03 外傷の素描・翻訳・愛の対話―リンダ・ローボルトとドリス・ブラザーズへの個人的返信/リチャード・ローボルト
04 精神分析における自己愛的権威主義/ダニエル・ショー
05 [討論]訓練体験における傷つきやすさ,カリスマ,外傷―4つの個人的な苦難の道のり/マーティ・リヴィングストン
★第2部 論理的・技法的考察
06 密かな対人支配法/セオドア・ドーパット
07 草刈り,精神分析的教育,イデオロギーと権力と知識の絡み合いについて―歴史的・哲学的視点/パトリック・B・カヴァナフ
08 制度のクローン化―精神分析訓練における模倣/ミシェル・ラリヴィエール
09 強制的な師弟関係―心理療法家訓練に偽装した洗脳/リチャード・ローボルト
10 ドーパット,カヴァナフ,ラリヴィエール,ローボルト博士が執筆した章の考察/モーリン・レシュチュ
11 何よりも害をなさぬこと―スーパーヴァイザー苦難の旅/ポーラ・B・フーカ
12 臨床スーパーヴィジョン―心理療法の能力の育成における自己反省のプロセス/コンラッド・ルコント
13 心理力動的スーパーヴィジョンにおける権威的関係―現代的視点/ジョーン・E・サーナット
14 効果的で効率的なスーパーヴィジョングループでの試み/アーサー・A・グレイ
15 四部構造訓練モデルに向かって:(権力の)同一化関係から(愛情の)内在化関係へ―攻撃者への同一化の事例/ケルション・J・モラド+ジュディス・E・ヴィダ
16 個人および集団スーパーヴィジョン,コンサルテーション,分析家と同業者の自分語りの対話/アイリーン・ハーウッド
17 結論としての考察/リチャード・ローボルト

○コメント
スーパービジョンのコントロール・配慮すべき側面について書かれていると思います。