研修報告:大学院生・若手研究者のための勉強会&第11回日本社会福祉学会フォーラム

本日は、午前に大学院生・若手研究者のための勉強会と、午後に第11回日本社会福祉学会フォーラムへ参加するため金城学院大学に行ってきました。

勉強会は、一般社団法人日本社会福祉学会中部部会が主催。本勉強会は、「大学院生や若手研究者(実年齢は問いません)、これから研究に着手したいと 考えている人を中心として、参加者がともに学びあい、相互作用のなかから知的好奇心と探求心を育む ことを目的」としているそうです。午後のフォーラムと同じ会場でプレ企画として開催されていました。

報告者は、日本福祉大学大学院博士後期課程に在学中の現役MSWである林祐介氏と、日本社会事業大 学実習教育研究・研修センター助教の上村勇夫氏。それぞれ修士・博士課程での研究経験を踏まえた報告でした。

林さんは、仕事と家庭と研究の3つをバランスとりながら取り組まれていることに刺激を受けました。

上村氏の「本を読んでも忘れてしまうので、エクセルにポイントを落とし込み、それに対応するように研究テーマを何度も練りました。」という言葉が印象的でした。

川崎剛『社会科学系のための「優秀論文」作成術』勁草書房,2010
※上村氏が研究の構成を考える際に参考にした書籍として紹介。



そして、「社会福祉研究者としての面白さと辛さ」として岩田正美日本社会福祉学会会長(日本女子大学教授)が報告。著書だけでなく、実際にお話しされる内容もエッジが効いている。幸せなひと時でした。もっと、長い時間お話を聞きたかったです。

■印象に残った言葉
・社会科学の広い分野、または「良質な」保健、心理学への精通。古典を読む(必要な時で良い)細かいジャンル分けがされていない時期の古典は、発想の宝庫。
・安直な社会福祉理解(たとえば、社会福祉は生活から見るというような)は教育にとっても良くない(たぶん)。分からないということを伝える。ただし、基本用語とその概念(論争も含めて)については、しっかり教えること。
・(学部生に教える)社会福祉を学ぶ意義とは、社会福祉の概念を駆使して現象を整理することができるようになること。
・研究をするプロセスと論文を書くプロセスは全く違う。論証していくということが書くということ。
社会福祉研究者の最大の欠陥は効き目のなさそうな処方箋を書きたがる。政策や手法は「混沌」の中で作用するので、誰にでも効果のある処方箋は難しい。むしろその作用機制の解明が重要。それは、「権力」や「権力構造」の問題と直結する。(副田義也『福祉社会学宣言』の三浦批判)
・エンパワメントが好きな割に、パワーについての掘り下げが弱い。
・社会の表面にあること(混沌とした諸事象の絡み合い)のなかからテーマを選び出す。そこから、いくつかの「概念」を生成していくこと。また、なぜその「概念」(あるいはいくつかの概念の関連)が混沌の整序のために必要か、の説明が必要。掴んだ「概念」をつかって、整序した事象を、どう説明していくかが論文作成の順序。



午後のフォーラムは、「地域包括ケアシステムの理解・研究・構築にむけての論点―医療経済・政策学の視点から―」と題して二木立先生が基調講演。

報告の格子は、以下の通り。

1.地域包括ケアシステムのさまざまな源流を正確に理解する
2.地域包括ケアシステムそのものを正確に理解する
3.地域包括ケアシステムによる費用削減は公式には主張されていない
4.今後の社会福祉法人改革―地域包括ケアシステムとも関わりがある
おわりに―(若い)社会福祉研究者・院生への期待と苦言

襟を正して拝聴しました(汗)

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二木先生の講演風景。お元気!!