高校生の塾代 奨学金やアルバイト代を収入認定しないことに

それぞれ異なる記事ですが、連動していますね。通知は探すことができませんでした。


生活保護、塾代減額せず 厚労省が運用ルール見直し 」『日本経済新聞』2015/8/21
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21H5F_R20C15A8000000/

生活保護費を受給する世帯の高校生が学習塾に通う費用を奨学金やアルバイト代から捻出する場合、生活保護の収入認定から除外して保護費を減額しないよう厚生労働省が10月から運用ルールを見直すことが21日、分かった。経済力の乏しい家庭の子供が進学に不利にならないようにする。
 生活保護制度は受給世帯に収入があれば、その分の保護費を減額される仕組みで、高校生の奨学金やアルバイト代も用途によっては収入と認定される。これまで修学旅行の費用やクラブ活動費などは高校生活に必要な費用とみなされ、収入と認定されず、減額対象とならなかった。
 今回はこの除外対象に塾費用を加える。具体的には、学習塾や家庭教師の授業料、教材費、交通費などで金額の上限はない。今月6日付で全国の自治体に通知した。
 生活保護世帯の高校生の大学進学率は19.2%(2013年3月卒業生)と全体の53.2%と比べ低水準。政府は昨年8月に閣議決定した「子供の貧困対策大綱」で、親から子供へ貧困が連鎖しないよう教育の格差是正を図る方針を掲げた。〔共同〕

「『高校奨学金は収入でない』 生活保護減額を取り消し」『東京新聞』2015年8月18日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015081802000126.html

高校に通うための奨学金が収入と見なされ、福島市の三十代女性と高校二年の長女の母子家庭への生活保護費が市によって減額された処分について、国は奨学金を収入と認めず、生活保護費の減額処分を取り消す裁決をした。女性らの代理人を務める弁護団が十七日、同市で記者会見し明らかにした。
 裁決は六日付。国は「市が当事者への聞き取りをせずに(奨学金を)収入と認定したこと」などを理由として、市の処分を取り消した。弁護団は、こうした裁決は「非常に珍しい」としている。
 福島市の担当者は「調査が十分でなかったという国の指摘を重く受け止めたい」と話した。
 市は昨年十月までに、処分を取り消さないまま、生活保護の減額分を追加支給している。
 女性らは市から生活保護を受けていたが、昨年四月と五月、市教育委員会などから、返還義務がない給付型の奨学金計九万円を受け取ったところ、市はこれらを収入と認定。同五月までに生活保護の支給額から奨学金の九万円を差し引く処分を決定した。
 女性らはこれを不服として同六月、県に処分取り消しを求め審査請求し、同十一月に棄却。国に再審査を請求していた。
 また今年四月には収入認定の取り消しと慰謝料計百万円を求め、福島地裁に提訴しており、弁護団は「女性らと協議し、訴えを取り下げるかどうか検討したい」と話した。
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 女性らが収入認定の取り消しを求める訴えを福島地裁に起こすことは、本紙が四月三十日にいち早く報道した。引き続き、生活保護費の伸びを抑えるため、アルバイト収入の未申告を「不正」と認定されて保護費を返還させられたりするケースが全国で相次いでおり、必要な保護費を受けられない運用は「子どもの貧困」を助長しかねないとたびたび指摘してきた。

生活保護世帯の奨学金でルール改定 厚労省」『中日新聞』2015年8月21日
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015082102000076.html

厚生労働省が、生活保護世帯の高校生が得た奨学金について、学習塾などの費用に充てる場合は「収入」と見なさず、保護費から減額しないよう運用ルールを改めることが分かった。現行でも、自立支援の観点から、奨学金を塾代に充てても保護費を減らさない自治体があり、先行する現場に合わせざるを得なくなった。今月六日付で全国の自治体に通知し、十月から適用される。
 生活保護世帯が得たお金を「収入」と認定するかどうかは、厚労省の運用ルールに基づいて市区町村が判断。奨学金は、給与や年金などと同じ「収入」と認定され、その分の保護費が減らされるが、修学旅行やクラブ活動、私立高校授業料の不足分に充てる場合は、高校生活に必要な費用として除外を認めている。
 通知では、塾の入会や授業、教材、模擬試験、通塾にかかる費用に奨学金を充てても収入と見なさない。家庭教師への月謝も同様の扱いとする。高校生のアルバイト代も塾向けに使えば収入認定しない。
 一方、高校までに得た知識を生かして自立するのが制度の原則のため、大学の受験料や授業料は引き続き収入と見なす。
 大阪市の公益財団法人「梅ケ枝中央きずな基金」は、大学進学の塾代などとして生活保護世帯の高校生らに最大年五十万円の奨学金を支給し、地元自治体も収入認定していない。基金を設立した山田庸男(つねお)弁護士は「意欲と能力のある子どもを支えるのは社会の常識で、厚労省がようやく考え方を改めた。そもそも奨学金の使い道を限定すべきではない」と話している。
 厚労省の調査では、二〇一三年三月に高校を卒業した生活保護世帯の子どものうち、大学や短大に進学したのは19・2%。同時期に卒業した全生徒の進学率53・2%(文部科学省調べ)を大きく下回る。政府は一四年八月に閣議決定した「子供の貧困対策大綱」で教育格差による貧困の連鎖を断つことを掲げている。
 (我那覇圭)