「終末期医療、全国で支援 情報提供・相談チーム  厚労省、来年度から  患者の意思尊重」『 47NEWS』2015年8月24日

今日一番のニュースだと思います。モデル事業で実践された各医療機関の相談員や関係団体のご努力で200箇所にまで展開ができそうですね。各都道府県で4箇所ずつと言ったところでしょうか。関心のある医療機関は今から情報収集が必要です。

モデル事業の研修の取りまとめをされていた国立長寿の三浦先生が「医師や看護師ではなく、生活の部分をみている医療ソーシャルワーカーに相談員をやってもらわなくてはと思い、モデル事業の対象者に医療ソーシャルワーカーを加えたんです。」と愛知県MSW協会の総会記念講演で話されていたことが印象深いです。


「終末期医療、全国で支援 情報提供・相談チーム  厚労省、来年度から  患者の意思尊重」『 47NEWS』2015年8月24日
http://www.47news.jp/47topics/e/268331.php

 厚生労働省は23日、治療によって回復の見込みがなく死期が迫った場合に、患者・家族の不安や悩みを聞き、みとりを含む終末期医療の選択肢など必要な情報を提供する相談支援チームの整備事業を、来年度から全都道府県で実施する方針を固めた。
 高齢化率25%、平均寿命が80歳を超えた日本は、年間死者数が120万人に上る。厚労省は事業を通じ、「多死社会」を見据えた終末期医療の在り方を検討、将来の医療・介護提供体制見直しにもつなげる考えだ。
 終末期の医療をめぐっては、患者本人の意思が分からず家族が悩んだり、現場が対応に苦慮したりするケースが多い。支援チームの相談員は、本人が本当に望む最期を迎えられるよう、患者と話し合い、治療方針の決定にも関与する。来年度予算の概算要求に、相談員養成の研修費用など約1億円を計上する。
  支援チームは全国200カ所程度の医療機関に置く方向で検討中だ。相談員には終末期医療の専門的研修を受けた医師・看護師のほか、在宅療養に向けた助言など生活面を支える医療ソーシャルワーカーらを想定する。
 ①病院や自宅など、どこで最期を迎えたいか②人工呼吸器装着や蘇生措置を行うか③胃ろうなど栄養補給や痛みを緩和するための投薬を行うか―などを患者と話し合い、情報不足に陥りがちな患者・家族の不安を取り除き、希望がかなうよう調整する。意思表示ができなくなった場合に備え、事前指示書の作成も促す。
 厚労省は2014年度から全国15医療機関でモデル事業を実施。多くの患者が「希望がより尊重された」と回答するなど一定の効果があると判断した。
▼患者の尊厳守る一助に
 【解説】治療による回復の見込みがない状況となった時、患者本人の意思や尊厳が守られ、納得のゆく選択をするためには、患者・家族と医療者との十分な対話が不可欠だ。終末期医療の相談支援事業の全国展開は、こうした対話を促す上で、大きな一助になり得る。
 人口推計によると、10年後の2025年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる。同時に年間死者数は150万人超に、さらにピークの40年に170万人近くに達する。終末期医療への対応は「多死化」がわれわれの社会に突きつけた最も重い課題の一つだ。
 最期の時が近づいた患者の意思が明確でない場合、家族は大きな決断を迫られる。独り暮らしの高齢者や認知症患者の増加で、医療現場で対応に苦慮するケースも増えるだろう。社会保障費が膨張する中、限られた医療資源や財源をどう振り向けるかも問われている。
 医療・介護サービスが必要になっても、施設でなく住み慣れた地域で生活を続けられるよう転換を進める厚生労働省は、今回の事業を端緒に、終末期医療に関し国民的議論を喚起したい考えだ。一方、患者が本当に穏やかな最期を迎えられる環境を整えるには、在宅でみとりを担える人材の育成や緩和ケアの充実も急がねばならない。
▼終末期医療
 【ズーム】終末期医療 重い病気で治療を尽くしても回復する見込みがない患者に対する医療。心身の苦痛を和らげ、残る時間を穏やかに過ごせるよう配慮する。厚生労働省は2007年、本人の意思決定を基本とし「医療行為の不開始や中止は医療・ケアチームが慎重に判断する」との指針を策定。政府の有識者会議「社会保障制度改革国民会議」は13年、「超高齢社会に見合った『地域全体で治し・支える医療』の射程には(末期の患者が)より納得し満足のできる最期を迎えられるよう支援することも入る」とし、国民的合意形成や体制整備の重要性を提言した。