平成28年度診療報酬改定と社会福祉士(その2)

平成28年2月10日に開催された、中央社会保険医療協議会 総会(第328回)にて、平成28年度診療報酬改定の答申が示された。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111936.html

具体的な点数や算定要件の回数などが記載されており、疑義解釈が出るまでは当面この文章を踏まえて、各医療機関が体制を整えることになる。7対1入院基本料算定病棟1病棟当たりの病床数は、平成21年度の平均値で46.5床。2病棟で約100床であり、平成26年に日本医療社会福祉協会が求めていた50床に1名の半分である。しかし、病棟での退院支援に関するストラクチャー評価がなされたことは、厳しい診療報酬改定事情の中では大きな意味を持つ。

どの程度の内容で個別の患者の退院支援に関わることをもって算定するかという専門性や倫理上の問題はあるが、仮に1ヶ月当たり平均20名の退院支援を行っているとすると、1年間の収入は、20名×12ヶ月×6,000円=144万円となる。社会福祉士・男性・正規職員の平均年収である452万円を捻出するには、1ヶ月当たり62.7名の退院支援を行うことになるが、現実的な数字ではない。この報酬のみをもって病棟への退院支援職員配置が進むということではなく、患者への退院支援の質向上、退院支援職員を配置することによる平均在院日数短縮、入院基本料の算定要件に関わる退院先への退院割合の維持・増加に、病院としてどれだけ力を入れるかが、配置増加への圧力となる。

退院支援に関する評価の充実
1.病棟への退院支援
職員の配置を行う等積極的な退院支援を促進するため、現行の退院調整加算を基調としつつ実態を踏まえた評価を新設する

(新)
退院支援加算1
イ一般病棟入院基本料等の場合 600点(退院時1回)
療養病棟入院基本料等の場合 1,200点(退院時1回)

[算定要件]
(1)患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるように、入院早期より退院困難な要因を有する者を抽出し、適切な退院先に適切な時期に退院できるよう、退院支援計画を立案し、当該計画に基づき退院した場合に算定する。
対象患者は、現行の退院調整加算の対象者に加え、連携する保険医療機関からの転院であって、転院前の保険医療機関において当該加算を算定した者(1度の転院に限る。)。

(2) 現行の退院調整加算における退院調整に加え、以下の支援を行っていること。
①当該保険医療機関の退院支援職員が、他の保険医療機関や介護サービス事業所等に出向くなどして担当者と面会し、転院・退院体制に関する情報の共有等を行う。
②各病棟に専任で配置された退院支援職員が、病棟で原則として入院後3日以内に新規入院患者の把握及び退院困難な要因を有している患者の抽出を行う。
③退院困難な要因を有する患者について、原則として入院後7日以内(療養病棟等については14日以内)に患者及び家族と病状や退院後の生活も含めた話し合いを行う。
④入院後7日以内に、病棟の看護師及び病棟に専任の退院支援職員並びに退院調整部門の看護師及び社会福祉士が共同してカンファレンスを行った上で退院調整に当たること。なお、カンファレンスに当たっては、必要に応じてその他の関係職種が参加すること。

[施設基準]
現行の退院調整加算の施設基準に加え、以下の基準を満たしていること。
(1) 退院支援・地域連携業務に専従する看護師又は社会福祉士が、当該加算の算定対象となっている各病棟に専任で配置されていること。ただし、退院支援業務について、最大2病棟まで併任することが可能。
(2) 20以上の保険医療機関又は介護サービス事業所等と転院・退院体制についてあらかじめ協議し、連携を図っていること。
(3) 連携している保険医療機関又は介護サービス事業所等の職員と当該保険医療機関の退院支援・地域連携職員が、回/年以上の頻度で面会し、転院・退院体制について情報の共有等を行っていること。
(4) 当該保険医療機関における介護支援連携指導料の算定回数が、当該加算の算定対象病床100床当たり年間15回以上(療養病棟等については10回以上)であること。
(5) 病棟の廊下等の見やすい場所に、患者及び家族から分かりやすいように、病棟に専任の退院支援職員及びその担当業務を掲示していること。

2.退院調整加算について、入院日数に応じた評価を廃止するとともに名称を改める。

退院支援加算2
イ一般病棟入院基本料等の場合 190点(新)
療養病棟入院基本料等の場合 635点(新)

3.現行の新生児特定集中治療室退院調整加算を基調としつつ、新生児特定集中治療室に入院した患者に対する退院支援に関する評価を新設する。

(新)退院支援加算3 1,200点(退院時1回)

[算定要件]
(1)対象患者は、現行の新生児特定集中治療室退院調整加算1又は2の対象者及び転院前の保険医療機関において当該加算を算定した者(1度の転院に限る)。
(2) 入院後7日以内に退院困難な要因を有している患者を抽出し、患者及び家族と病状や退院後の生活も含めた話し合いを行う。
(3) 入院後1か月以内に退院支援計画の作成に着手し、文書で患者又は家族に説明を行い交付する。また、患者又は家族に退院後の療養上必要な事項について説明するとともに、退院・転院後の療養生活を担う保険医療機関等との連絡や調整、社会福祉サービスの導入に係る支援を行う。
(4) 退院調整に当たって病棟及び退院調整部門の看護師並びに社会福祉士等の関係職種が共同してカンファレンスを行った上で計画を実施すること。
[施設基準]
現行の新生児特定集中治療室退院調整加算1及び2の施設基準と同じものとする。

4.現行の地域連携診療計画管理料等を基調としつつ地域連携診療計画を策定・共有した上で、医療機関間の連携を図っている場合についての評価を新設する。

退院支援加算
(新)地域連携診療計画加算 300点(退院時1回)
診療情報提供料(I)
(新)地域連携診療計画加算 50点

[算定要件]
地域連携診療計画加算(退院支援加算)
(1)対象患者は、あらかじめ地域連携診療計画が作成され、連携する保険医療機関又は介護サービス事業所等で共有されている疾患に罹患する者であって、転院後・退院後に、連携する保険医療機関又は介護サービス事業所等において引き続き治療等が行われる者及び転院前の保険医療機関において当該加算を算定した者(1度の転院に限る。)。
(2)連携する保険医療機関又は介護サービス事業所等とあらかじめ共有されている地域連携診療計画に沿って治療を行うことについて患者の同意を得た上で、地域連携診療計画に基づく個別の患者ごとの診療計画を作成するとともに、患者に説明し、文書にて患者又は家族に提供する。
(3)転院後・退院後に、連携する保険医療機関又は介護サービス事業所等において引き続き治療等が行われる場合には、当該保険医療機関又は介護サービス事業所等に対して、当該患者に係る診療情報等を文書により提供する。
(4)転院前の保険医療機関において当該加算を算定した者については、退院時に、当該保険医療機関に対して当該患者に係る診療情報等を文書により提供する。

地域連携診療計画加算(診療情報提供料(I))
(1)対象患者は、あらかじめ地域連携診療計画が作成され、連携する保険医療機関において地域連携診療計画加算(退院支援加算)を算定して当該保険医療機関を退院した患者であって、入院中の患者以外の者。
(2)連携する保険医療機関とあらかじめ共有されている地域連携診療計画に基づく療養を提供するとともに、患者の同意を得た上で、退院時の患者の状態や、在宅復帰後の患者の状況等について、退院の属する月又はその翌月までに地域連携診療計画加算(退院支援加算)を算定した連携する保険医療機関に文書により情報提供する。

[施設基準]
地域連携診療計画加算(退院支援加算)
(1) 退院支援加算1又は3の届出保険医療機関であること。
(2) あらかじめ疾患や患者の状態等に応じた地域連携診療計画が作成され、連携保険医療機関又は介護サービス事業所等と共有されていること。
(3) 連携している保険医療機関又は介護サービス事業所等と3回/年以上の頻度で面会し、診療情報の共有、地域連携診療計画の評価と見直し等が適切に行われていること。

地域連携診療計画加算(診療情報提供料(I))
(1)あらかじめ疾患や患者の状態等に応じた地域連携診療計画が作成され、連携する保険医療機関と共有されていること。
(2) 連携している保険医療機関と3回/年以上の頻度で面会し、診療情報の共有、地域連携診療計画の評価と見直し等が適切に行われていること。

退院直後の在宅療養支援に関する評価
退院直後に、入院医療機関の看護師等が患家等を訪問し、当該患者又はその家族等退院後に患者の在宅療養支援に当たる者に対して、退院後の在宅における療養上の指導を行った場合の評価を新設する。
(新)退院後訪問指導料 580点(1回につき)
(新)訪問看護同行加算 20点

[算定要件]
(1) 特掲診療料の施設基準等の別表第八に掲げる状態の患者若しくは認知症高齢者の日常生活自立度判定基準III以上の患者又はその家族に対して、在宅での療養内容等の指導を行った場合に、算定する。
(2) 入院医療機関を退院した日から起算して1月以内の期間に限り、5回を限度として算定する。ただし、退院日は除く。
(3) 在宅療養を担う訪問看護ステーション又は他の保険医療機関の看護師等と同行し、指導を行った場合には、訪問看護同行加算として、退院後1回に限り、所定点数に加算する。

身体疾患を有する認知症患者のケアに関する評価

身体疾患のために入院した認知症患者に対する病棟でのケアや多職種チームの介入について評価する。
(新)認知症ケア加算1
イ14日まで150点
ロ15日以降30点
(新)認知症ケア加算2
イ14日まで30点
ロ15日以降10点
[算定可能病棟]
一般病棟入院基本料、療養病棟入院基本料、結核病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(精神病棟除く。)、専門病院入院基本料、障害者施設等入院基本料、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、特殊疾患入院医療管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料、特殊疾患病棟入院料、特定一般病棟入院料

[算定要件]
(1) 対象患者は、「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」におけるランクII以上に該当する者。
(2) 身体的拘束を実施した日は、所定点数の100分の60に相当する点数により算定。
認知症ケア加算1
(1) 病棟において、チームと連携して、認知症症状の悪化を予防し、身体疾患の治療を円滑に受けられるよう環境調整やコミュニケーションの方法等について看護計画を作成し、計画に基づいて実施し、その評価を定期的に行う。
(2) 看護計画作成の段階から、退院後に必要な支援について、患者家族を含めて検討する。
(3) チームは、以下の内容を実施する。
①週1回程度カンファレンスを実施し、各病棟を巡回して病棟における認知症ケアの実施状況を把握するとともに患者家族及び病棟職員に対し助言等を行う。
②当該保険医療機関の職員を対象として、認知症患者のケアに関する研修を定期的に開催する。
認知症ケア加算2
病棟において、認知症症状の悪化を予防し、身体疾患の治療を円滑に受けられるよう環境調整やコミュニケーションの方法等について看護計画を作成し、計画に基づいて実施し、その評価を定期的に行う。
[施設基準]
認知症ケア加算1
(1) 保険医療機関内に、①~③により構成される認知症ケアに係るチームが設置されている。
認知症患者の診療について十分な経験と知識のある専任の常勤医師
認知症患者の看護に従事した経験を有し適切な研修を修了した専任の常勤看護師
認知症患者の退院調整の経験のある専任の常勤社会福祉士又は常勤精神保健福祉士

(2)(1)のチームは、身体的拘束の実施基準を含めた認知症ケアに関する手順書を作成し、保険医療機関内に配布し活用する。
認知症ケア加算2
(1) 認知症患者が入院する病棟には、認知症患者のアセスメントや看護方法等について研修を受けた看護師を複数配置する。
(2)身体的拘束の実施基準を含めた認知症ケアに関する手順書を作成し、保険医療機関内に配布し活用する。