「生活保護の医療費適正に 福岡市、モデル事業本格化 レセプト分析重複受診改善指導」『西日本新聞』2017年3月2日

生活保護の医療費適正に 福岡市、モデル事業本格化 レセプト分析重複受診改善指導」『西日本新聞』2017年3月2日
http://www.nishinippon.co.jp/feature/local_councilor/article/311627

16年度に始まった事業はヘルスケア産業のデータホライゾン社(広島市)に業務委託。デ社は民間法人社会保険診療報酬支払基金を経由して受け取る生活保護受給者の15年度分レセプトから、「病名」「診療・検査内容」「処方薬」などのデータを分析し、福岡市を除く九州18自治体の国民健康保険加入者の平均と比較した。

 それによると、福岡市の生活保護受給者1人当たりの月額医療費は非受給者と比べ約1・9倍の6万148円、受診率は13・6ポイント高い67・3%だった。

 1カ月間に、同じような病気で3医療機関以上を受診した重複受診の割合は、0・1ポイント高い1・1%▽複数の医療機関で同じような医薬品を処方されるなどした重複服薬は、1ポイント高い3・1%▽同一医療機関を12回以上受診した頻回受診は、0・6ポイント高い2・7%-などと判明。また、生活習慣病の糖尿病で人工透析に至った割合は、デ社が持つ中国地方の1自治体のデータと比べ、0・22ポイント高い0・3%だったという。

この文章からは、比較対象同士で傷病の罹患状況は補正されているかどうかは不明。データ補正をしていなければ、そもそも傷病が理由で生活保護受給に至ることが少なくないという前提を考えると、受診者が多いのは当たり前ではないのか。その上で、重複服薬や頻回受診については、国保加入者データと大きく違いはなかったことの方がリアリティーを感じる。

糖尿病の通院者や糖尿病に関する数値が高い受給者約20人に対しては、デ社が派遣した保健師が面談を行い、食事を調整し運動を増やすなど日常生活の改善点をアドバイスした。

 「適正な受診や服薬は、受給者の心身の負担を和らげることにもつながる」と同市。事業による効果はまだ測定中だが、デ社が広島県呉市国保加入者を対象に08年度から実施しているケースでは「人工透析に至る割合が大幅に減るなど、健康増進効果が表れている」(同社)という。

「日本再興戦略」におけるデータヘルス計画の流れと全く同じであり、「効果」を計上する際には、介入費用も込みで行う必要があろう。

■参考
・「3 生活保護の適正実施等について」『全国厚生労働関係部局長会議資料(厚生分科会)』平成28年1月20日
http://www.mhlw.go.jp/topics/2016/01/dl/tp0115-1-13-03p.pdf

厚生労働省生活保護受給者の健康管理支援等について』
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000052441_1.pdf

・データホライゾン社
http://www.dhorizon.co.jp/

厚生労働省健康保険組合連合会『データヘルス計画作成の手引き』平成26年12月
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061273.html