アルコール依存症×一般医療機関

アルコール依存症が疑われながらも、一般医療機関で消化器疾患の治療のみを継続している患者。専門医療機関で治療を行ったが、再飲酒後は受診に至らず、救急搬送を繰り返す患者。飲酒を軸に、経済的にも、人間関係も窮地に追い込まれていく。

一般医療機関に勤めるソーシャルワーカーにとって、有用な研究成果となろう。

稗田里香『アルコール依存症者のリカバリーを支援するソーシャルワーク理論生成研究 一般医療機関での実践を目指して』みらい,2017年4月

〇内容
専門治療を施すことで回復する可能性のあるアルコール依存症者。しかしその多くは専門医療サービスからこぼれ落ち、死に至るケースも少なくない。筆者は、この社会問題の構造特徴を見出し、彼らクライエントの回復(生活の再建)を支援するソーシャルワーカーに必要な理論の生成を図り、その上で「普遍化」「汎用化」をめざして、現職ソーシャルワーカーの誰しもが支援の過程で活用できる『実践ガイド』を作成した。本書はその研究の軌跡を記したものである。

〇目次
序章 研究への誘い
第1章 研究の背景と問題の実態
第2章 一般医療機関に置けるアルコールソーシャルワーク実践の支援課題
第3章 一般医療機関に置けるアルコールソーシャルワーク実践理論の生成に向けた研究
第4章 「リカバリーの三次元的構造理論」生成の詳解
第5章 グラウンデッド・アクションの第1段階① ソーシャルワーク実践方法検討のための文献研究
第6章 グラウンデッド・アクションの第1段階② 説明的グラウンデッド・セオリーの生成
第7章 グラウンデッド・アクションの第2~第6段階 『実践ガイド』の作成と評価・分析
第8章 研究の総括と結論:一般医療機関におけるアルコール関連問題ソーシャルワーク実践
終章 政策を具現化する実践の科学としてのソーシャルワーク研究の推進

〇著者略歴
東海大学健康科学部社会福祉学科准教授
明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程修了
博士(社会福祉学

職歴:三井記念病院、伊藤病院、北里大学東病院にてソーシャルワーカーとして勤務
資格:精神保健福祉士社会福祉士、介護支援専門員
社会活動:アディクション問題を中心としたソーシャルワーカーとしてHRI水澤都加佐カウンセリングオフィスにて相談支援活動も行っている。NPO法人アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)運営委員、同協会飲酒運転対策特別委員会委員、公益社団法人日本医療機能評価機構院内自殺の予防と事後対応に関する検討委員会委員、アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク幹事、イッキ飲み防止対策協議会専門委員、アルコール健康障害対策関係者会議委員等。

■参考
・日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会
http://www.j-asw.jp/

・アルコールソーシャルワーク理論生成研究会『アルコール依存症者のリカバリーを支援するソーシャルワーク実践ガイド』2014
http://alhonet.jp/download.html#download-3

・稗田里香『一般医療機関におけるアルコール関連問題ソーシャルワークの実践理論生成に向けた実証研究』(明治学院大学大学院社会学研究科提出博士論文)2016年1月13日
http://repository.meijigakuin.ac.jp/dspace/bitstream/10723/2661/4/A37_text.pdf