2020年度診療報酬改定答申

2020年2月7日、2020年度診療報酬改定答申が出された。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000193003_00002.html

医療ソーシャルワーカー社会福祉士)に関連する箇所を掲載する。赤文字は、注目点を意味する。

総-1(PDF:1,619KB)

・入退院支援加算3について、入退院支援部門の看護師の配置要件を見直す。 (p34)
【入退院支援加算3】
[施設基準]
ロ 当該部門に新生児の集中治療、入退院支援及び地域連携に係る業務に関する十分な経験を有し、小児患者の在宅移行に関する研修を受けた専任の看護師が一名以上又は新生児の集中治療、入退院支援及び地域連携に係る業務に関する十分な経験を有する専任の看護師並びに専従の社会福祉士が一名以上配置されていること。
(2) 当該入退院支援部門に入退院支援及び5年以上の新生児集中治療に係る業務の経験を有し、小児患者の在宅移行に係る適切な研修を修了した専任の看護師又は入退院支援及び5年以上の新生児集中治療に係る業務の経験を有する専任の看護師並びに専従の社会福祉士が配置されていること。なお、当該専従の社会福祉士は、週30時間以上入退院支援に係る業務に従事していること。

■コメント
配置の看護師につき、所定の研修を終えた看護師であれば専従ではなく専任配置でもよいと。また、入退院支援部門でも所定の研修を終えた看護師であれば専任配置でもよいと。つまり、入退院支援加算1・2の様に、退院支援の専従と入退院支援部門の専従は兼務できなかったが、一人で退院支援実務と入退院支援部門の側方支援を兼ねてもよいということになる。


・入退院支援加算及び入院時支援加算について、入退院支援部門における職員を非常勤職員でも可能とする。 (p35)

【入退院支援加算1】
[施設基準]
(2) 当該入退院支援部門に、入退院支援及び地域連携業務に関する十分な経験を有する専従の看護師又は専従の社会福祉士が1名以上配置されていること。更に、専従の看護師が配置されている場合には入退院支援及び地域連携業務に関する経験を有する専任の社会福祉士が、専従の社会福祉士が配置されている場合には入退院支援及び地域連携業務に関する経験を有する専任の看護師が配置されていること。 なお、当該専従の看護師又は社会福祉士については、週3日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が22時間以上の勤務を行っている専従の非常勤の看護師又は社会福祉士(入退院支援及び地域連携業務に関する十分な経験を有する看護師又は社会福祉士に限る。)を2名以上組み合わせることにより、常勤看護師等と同じ時間帯にこれらの非常勤看護師等が配置されている場合には、当該基準を満たしているとみなすことができる。
※ 入退院支援加算2・3及び入院時支援加算における入退院支援部門の専従職員についても同様。

■コメント
施設基準として、専従であれば非常勤の看護師または社会福祉士でもよいことに。社会福祉士の人材確保ができない医療機関では、もっぱら、役職定年後の元師長が想定される。各病棟の退院支援担当者についてはこの限りではない。


・情報通信機器を用いたカンファレンス等について、やむを得ない事情により対面で参加できない場合でなくても実施可能となるよう、要件を見直す。 また、情報通信機器を用いた退院時共同指導について、医療資源の少ない地域でなくても実施可能となるよう、要件を見直す。(p52)

【退院時共同指導料】 [算定要件] (8) 退院時共同指導料1の「注1」及び退院時共同指導料2の「注1」の共同指導は対面で行うことが原則であるが、リアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(以下この区分において「ビデオ通話」という。)が可能な機器を用いて共同指導した場合でも算定可能である。
訪問看護療養費における退院時共同指導加算も同様。

■コメント
「ビデオ通話」が可能な機器を用いて共同指導した場合、常時算定可となる。お互いに機器を持っていれば、カンファレンスのための移動の時間的ロスが減る。機器を扱える職員がいるかどうかに制約されるが、ICTカンファレンスの幕開けとなる。


療養・就労両立支援指導料(p101)

1.療養・就労両立支援指導料について、企業から提供された勤務情報に基づき、患者に療養上必要な指導を実施するとともに、企業に対して診療情報を提供した場合について評価する。また、診療情報を提供した後の勤務環境の変化を踏まえ療養上必要な指導を行った場合についても評価する。
2.対象疾患について、がんの他に、脳卒中、肝疾患及び指定難病を追加する。
3.対象者について、産業医の選任されている事業場に勤務する者の他に、総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者又は保健師が選任されている事業場に勤務する者を追加する。
4.相談体制充実加算については、廃止とする。

【療養・就労両立支援指導料】
1 初回 800点 2 2回目以降 400点
[算定要件]
注1 1については、別に厚生労働大臣が定める疾患に罹患している患者に対して、当該患者と当該患者を使用する事業者が共同して作成した勤務情報を記載した文書の内容を踏まえ、就労の状況を考慮して療養上の指導を行うとともに、当該患者の同意を得て、当該患者が勤務する事業場において選任されている産業医、総括安全衛生管理者、衛生管理者若しくは安全衛生推進者又は労働者の健康管理等を行う保健師 (以下、「産業医等」という。)に対し、病状、治療計画、就労上の措置に関する意見等当該患者の就労と治療の両立に必要な情報を提供した場合に、月1回に限り算定する。
2 2については、当該保険医療機関において1を算定した患者について、就労の状況を考慮して療養上の指導を行った場合に、1を算定した日の属する月から起算して3月を限度として、月1回に限り算定する。
3 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、当該患者に対して、看護師又は社会福祉士が相談支援を行った場合に、相談支援加算として、50点を所定点数に加算する。
4 注1の規定に基づく産業医等への文書の提供に係る区分番号B009に掲げる診療情報提供料(I)又は区分番号B010に掲げる診療情報提供料(II)の費用は、所定点数に含まれるものとする。

(2) 療養・就労両立支援指導料は、入院中の患者以外の患者であって、別に厚生労働大臣が定める疾患に罹患しているものの求めを受けて、患者の同意を得て、以下の全ての医学管理を実施した場合に、月1回に限り算定する。

ア 治療を担当する医師が、患者から当該患者と当該患者を使用する事業者が共同して作成した勤務情報を記載した文書を受け取ること。 
イ 治療を担当する医師が、アの文書の内容を踏まえ、療養上の指導を行うとともに、当該医師又は当該医師の指示を受けた看護師若しくは社会福祉士が、患者から就労の状況を聴取した上で、治療や疾患の経過に伴う状態変化に応じた就労上の留意点に係る指導を行うこと。
ウ 治療を担当する医師が、以下のいずれかにより、当該患者が勤務する事業場において選任されている産業医等に対し、病状、治療計画、就労上の措置に関する意見等当該患者の就労と治療の両立に必要な情報の提供を行うこと。
① 病状、治療計画、治療に伴い予想される症状、就労上必要な配慮等について、「別紙様式49」、「別紙様式49の2」又はこれに準ずる様式を用いて、患者の勤務する事業場の産業医等に対して就労と治療の両立に必要な情報を記載した文書の提供を行い、当該文書の写しを診療録等に添付すること。患者の勤務する事業場の産業医等があらかじめ指定した様式を用いて就労上の留意点等を提供することも差し支えない。なお、当該患者が勤務する事業場において産業医が選任されている場合は、当該産業医に対して当該患者の就労と治療の両立に必要な情報の提供を行うこと。
② 当該患者の診察に同席した産業医等に対して、就労と治療の両立に必要なことを説明し、説明の内容を診療録等に記載すること。

(3) 2については、1を算定した患者について、情報提供を行った診療の次回以降の受診時に、就労の状況等を確認し、必要な療養上の指導を行った場合に、1を算定した日の属する月から起算して3月を限度として、月1回に限り算定する。
(4) 「注3」に規定する相談支援加算については、専任の看護師又は社会福祉士が、療養上の指導に同席し、相談支援を行った場合に算定できる。
(5) 1については、事業場の産業医等への就労と治療の両立に必要な情報を記載した文書の作成に係る評価を含むことから、当該指導料を算定する場合、当該文書の発行に係る費用を、療養の給付と直接関係ないサービスとして、別に徴収することはできない。
(6) 治療を担当する医師と産業医が同一の者である場合及び治療を担当する医師が患者の勤務する事業場と同一資本の施設で勤務している場合においては、当該指導料は算定できない。

[相談支援加算の施設基準]
(1) 専任の看護師又は社会福祉士を配置していること。なお、当該職員は区分番号「A234-3」患者サポート体制充実加算に規定する職員と兼任であっても差し支えない。また、専任の看護師又は社会福祉士については、国又は医療関係団体等が実施する研修であって、厚生労働省の定める両立支援コーディネーター養成のための研修カリキュラムに即した研修を修了していること。

厚生労働大臣の定める疾患]
1.悪性新生物
2.脳梗塞脳出血くも膜下出血その他の急性発症した脳血管疾患
3.肝疾患(経過が慢性なものに限る。)
4.難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号)第五条に規定する指定難病(同法第七条第四項に規定する医療受給者証を交付されている患者(同条第一項各号に規定する特定医療費の支給認定に係る基準を満たすものとして診断を受けたものを含む。)に係るものに限る。)その他これに準ずる疾患

■コメント
・事前の情報(m3,MEDIFAX)通り、要件緩和と対象拡大がなされた。
・相談支援加算は、医師から患者への療養の指導に同席することが求められてる。がん患者指導管理料(ロ)の様に、医師による診察の場以外の場所での対応で算定することができないのは使い勝手が悪い。
・相談支援加算の施設基準において、専任の看護師又は社会福祉士については、厚生労働省の定める両立支援コーディネーター養成のための研修カリキュラムに即した研修を修了「していることが望ましい。」→「していること。」に厳格化。
・対象疾患について、難病患者に準ずる疾患とは何を指すか?


ハイリスク妊産婦連携指導料(p168)

市町村又は都道府県の職員とのカンファレンスに係る参加者の要件及びビデオ通話等による参加の要件を見直す。

【ハイリスク妊産婦連携指導料1】
[算定要件]
(5) 当該患者への診療方針などに係るカンファレンスが概ね2か月に1回程度の頻度で開催されており、当該患者の診療を担当する産科又は産婦人科を担当する医師、保健師助産師又は看護師、当該患者の診療を担当する精神科又は心療内科を担当する医師、保健師又は看護師並びに必要に応じて精神保健福祉士社会福祉士公認心理師及び市町村若しくは都道府県(以下区分番号「B005-10-2」において「市町村等」という。)の担当者等が参加していること。
(6) (5)のカンファレンスは、初回は対面で実施すること。2回目以降について、対面で実施することができない場合は、関係者のうちいずれかがリアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(以下この区分及び区分番号「B005-10-2」において「ビデオ通話」という。)が可能な機器を用いて参加することができる。

[施設基準]
1 ハイリスク妊産婦連携指導料1
(1)精神疾患を有する妊婦又は出産後2月以内である患者について、直近1年間の市町村又は都道府県(以下「市町村等」という。)との連携実績が1件以上であること。
→削除

■コメント
・前回改定時は、市町村等の参加が必須であったが、精神保健福祉士社会福祉士・公認心理士と同様に「必要に応じて」に要件緩和となった。また、施設基準からも市町村等との連携実績が削除された。


地域包括ケア病棟の施設基準の見直し(p325)

地域包括ケア病棟入院料の施設基準において、入退院支援及び地域連携業務を担う部門の設置を要件とする。

【地域包括ケア病棟入院料】
[施設基準]
(1) 通則
ニ 当該保険医療機関内に入退院支援及び地域連携業務を担う部門が設置されていること。当該部門に入退院支援及び地域連携に係る業務に関する十分な経験を有する専従の看護師又は専従の社会福祉士が配置されていること。当該部門に専従の看護師が配置されている場合にあっては専任の社会福祉士が、専従の社会福祉士が配置されている場合にあっては専任の看護師が配置されていること。 なお、当該専従の看護師又は社会福祉士については、週3日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が24時間以上の勤務を行っている専従の非常勤の看護師又は社会福祉士(入退院支援及び地域連携業務に関する十分な経験を有する看護師又は社会福祉士に限る。)を2名組み合わせることにより、常勤看護師等と同じ時間帯にこれらの非常勤看護師等が配置されている場合には、当該基準を満たしているとみなすことができる。

[経過措置] 令和2年3月31日時点において現に地域包括ケア病棟入院料又は地域包括ケア入院医療管理料を届け出ているものについては、令和3年3月31日までの間に限り、当該基準を満たすものとみなす。

■コメント
これまでは、「社会福祉士のような在宅復帰支援に関する業務を適切に実施できる者」(実際の資格は問われない)が勤務していればよかったが、入退院支援部門の設置が施設基準に追加された。但し、入退院支援加算は本入院料に含まれているため、入退院支援を誰が担っても良い。

■日本医療社会福祉協会『和2年度診療報酬改定に関わる要望書』2019年7月3日との比較
http://www.jaswhs.or.jp/upload/Img_PDF/417_Img_PDF.pdf

今回の答申内容と要望内容を比較し、実現の有無を確認。要望したものが実現しなかったからといって、「けしからん」という訳ではない。要望を取りまとめるまでのデータ収集・厚生労働省との折衝に取り組んでいる理事には頭が下がる。

(1)外来における相談支援業務の評価や各加算における社会福祉士の配置促進を要望いたします。
→実現せず

(1)在宅療養支援診療所1(単独型)および(機能強化型)の施設基準「当該地域において、他の保健医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者と連携していること。」に「当該医療機関においても、社会福祉士のような連携を担当する者を配置するのが望ましい。」との追記を要望いたします。
→実現せず

(1)産業医の選定義務を有しない50人未満の事業場に属する患者への相談・連携業務に対する「療養・就労両立支援料」の創設を要望いたします。
実現

(1)専任の医師、看護師、社会福祉士(医療ソーシャルワーカー)が関わる「虐待対応チーム」体制加算の創設を要望いたします。
→実現せず

(1)妊娠健診の時期から産褥後に至るまで適切な時期に介入するため、総合周産期母子医療センター地域周産期母子医療センター社会福祉士の専従配置を要望いたします。
→実現せず

(1)在宅医療や療育サービスの導入や保育園・幼稚園・学校など社会生活上の課題については、主治医・患児家族との話し合いの上、社会福祉士が具体的な相談・調整を行っている実態が多いことから、「小児科療養指導料」について、小児科医が作成した治療計画に基づき、社会福祉士が療養環境及び社会生活の体制整備や安定のために面接及び連絡調整を行った場合の支援に対して「生活相談加算」の新設を要望いたします。
→実現せず