社会福祉士・精神保健福祉士合格者数の傾向

昨日の、「子ども分野の資格を創設へ 国家資格は議論持ち越し」『福祉新聞』 2020年10月27日という記事の中で、山縣文治座長(関西大学人間健康学部人間健康学科教授)が、以下の様に発言されていたのが印象に残った。

第2回議事録

〇山縣座長 (中略)社会福祉士ができる当初は、精神保健福祉士も一緒にという考え方がありました。社会福祉士で作ろうとしたけれども、西澤委員がいみじくも言われたけれども、医師会組織全体かどうか分かりませんが、医療関係者からよくないということで、法律も結果的に介護福祉士社会福祉士は一つの法律だけれども、精神保健福祉士は全く別の法律としてできた。その話し合いの中で、今、加藤委員が言われたように、社会福祉士の実習先として病院は認められない。医療ソーシャルワーカーの方々は非常に困られたという経緯があったので、今、もう一回、一緒にしたらどうかという声が出ている。まだ方向が確定したわけじゃない。その背景には、今のような中身の問題だけじゃなくて、これは大学によって事情が違うかもしれないけれども、少なくとも精神保健福祉士の大学での養成課程がどんどん縮小していっています。社会福祉士を取って、半年か1年の養成校に行って資格を取られる。結果として、精神保健福祉士の方々はかなりの人たちが両方持っているという実態がある。これから学生も減っていく中で、大学側の経営上の事情も恐らく背後にはあると思います。(p32)

厚生労働省の国家試験合格発表を参考に、以下の通り集計した。

■資格別受験者・合格者数推移

単位:人

資格名称 項目 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
社会福祉士 受験者数 45,187 44,764 45,849 43,937 41,639 39,629
  合格者数 12,181 11,735 11,828 13,288 12,456 11,612
精神保健福祉士 受験者数 7,183 7,173 7,174 6,992 6,779 6,633
  合格者数 4,402 4,417 4,446 4,399 4,251 4,119
医師 受験者数 9,057 9,434 9,618 10,010 10,146 10,140
  合格者数 8,258 8,630 8,533 9,024 9,029 9,341
看護師 受験者数 62,154 62,154 62,534 64,488 63,603 65,569
  合格者数 55,585 55,585 55,367 58,682 56,767 58,514

■受験資格別合格者数推移

単位:人

資格名称 項目 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
社会福祉士 福祉系大学等 7,257
(59.6)
6,853
(58.4)
6,710
(56.7)
7,616
(57.3)
7,232
(58.1)
6,586
(56.7)
  養成施設 4,924
(40.4)
4,882
(41.6)
5,118
(43.3)
5,670
(42.7)
5,224
(41.9)
5,026
(41.9)
精神保健福祉士 保健福祉系大学等 1,799
(40.9)
1,731
(39.2)
1,620
(36.4)
1,699
(38.6)
1,539
(36.2)
1,435
(34.8)
  養成施設 2,603
(59.1)
2,686
(60.8)
2,826
(63.6)
2,702
(61.4)
2,712
(63.8)
2,684
(65.2)


受験資格別受験者数や科目・実習免除者数は集計されていないので、山縣座長の話そのもののデータは不明だが、以下のような傾向はつかめた。

精神保健福祉士の受験者数は、直近6年間で550名減少(減少率7.7%)していている。一方の社会福祉士精神保健福祉士の受験者数と比較して6倍ではあるが、5,558名減少(減少率12.3%)しており、受験者数の減少率は社会福祉士が大きい。
②受験資格別合格者数では、社会福祉士においてこの6年間で福祉系大学等の割合が2.9%ポイント減少しており、精神保健福祉士は6.1%ポイント減少している。そのため、精神保健福祉士の方が(保健)福祉系大学経由での合格者数の割合が減少し、養成施設経由での合格者数の割合が増加している。
社会福祉士精神保健福祉士の受験者数は減少傾向だが、医師・看護師の受験者数は逆に増加傾向にある。そのため、減少傾向は必ずしも人口減少だけでは説明できない。

概ね、山縣座長が指摘された通り、精神保健福祉士は養成施設経由で取得するのが大きな流れなのだろう。大学経営上精神保健福祉士の受験者数(学生数)が少なければ、設置要件として求められる教員を確保することは学生数対人件費でみると負担となる。但し、精神保健福祉士の受験者数は2018年(第20回)以降減少傾向に転じているものの、全体のトレンドとしては2006年(第8回)以降7,000人を前後しているため受験者数がどんどん減っている、とまでは言えない。とは言え、社会福祉士もまた受験者数が減少している(但し、合格者数は横ばい)ことから、福祉系の各分野における人材確保だけでなく、オール福祉での人材確保も切実な課題である。職能団体としても、これらデータを踏まえた組織の取り組みを養成校と共に行う必要がある。

なお、公認心理士と同様に通信教育(一部スクーリング含め)でも受験資格を取得できてしまうことに、他の医療職と比較して専門性の限界を感じざるを無い