岡本和士ほか「筋萎縮性側索硬化症患者におけるQOLの変化とその関連要因に関する検討」『厚生の指標』vol.52,№5,2005,pp29-33

【価値判断】△  【文献の性格】量的実証研究

 

【文献要旨】

1年前と比べて悪化したと答えた(家族が回答)者の割合が高かった要因は、「精神的不安定の増加」で、次いで「身体の痛みの増加」であった。QOL低下度と性、年齢、発症時年齢およびADL(BI)との間に有意な関連はなかった。QOL低下度は、精神的活動性の高いものほど有意に小さく、また人工呼吸器非装着者のQOL低下度は装着者に比べ有意に大きかった。

 

【コメント】

     「人工呼吸器を付けたらQOLは上がりますよ。」と言うのは簡単だが、実際には付ける・付けないの判断を、本人・家族が納得のいく経過を経て、実行できるように支援することがポイントか。そして、その決定は、医学的・身体的な制限範囲において、変更が可能であることを保障する必要もあろう。決定は、常に揺らぐものであり、その正否は事後的にしか解釈され得ないと考える。

 

     調査方法及び、結果の記述方法は参考になる。しかし、考察において、①結果で触れられていないデータについて言及している箇所があること、②取り上げられた5因子がQOLという総和に対してどのように関連しているのか不明確な中で関連の強弱を論じていること、が気になった。

 

【関連】

     立岩真也『ALS 不動の身体と息する機械』医学書院,2004.11

     宮坂道夫「特別寄稿 『ALS 不動の身体と息する機械』を読んで ――ALSの隠喩について(前編)」『週間医学界新聞』第26212005214

     宮坂道夫「特別寄稿 『ALS 不動の身体と息する機械』を読んで ――ALSの隠喩について(後編)」『週間医学界新聞』第26222005221