吉田孫之「診療報酬の改定と今後の可能性」『医療ソーシャルワーク基礎講座1』(06.7.22)inサマニアンホール

愛知県医療ソーシャルワーカー協会主催の「医療ソーシャルワーク基礎講座Ⅰ」に参加。講師は、愛知県保険医協会の吉田孫之氏。100名近くの参加者で会議室は満席状態でした。参加者の構成としては、基礎講座の狙い通り、経験年数が比較的短い、若い方たちが大半を占めていました。当日は裏方だったので、残念ながら講演内容はきちんと聞けませんでしたが、二木立「2006年診療報酬改定の意味するもの」『月刊 保険診療』2006.7を参加者にお勧めしていました(8月以降に「総研いのちとくらし」HPに内容がUPされる予定)。 KIF_1002.JPG 質疑・応答では、 ①療養病床の医療区分1の患者さんの今後の行き場所 ②日数制限がかせられたリハビリテーション患者さんの今後のリハビリテーションの場所 ③在宅療養支援診療所への期待 ④ソーシャルアクションの必要性 について議論され、今回の医療・介護保険同時改定を受けての現場での混乱状況が感じ取られました。 KIF_1004.JPG 同時改定を老健に引き付けて考えると、私の感想は以下の2点です。


①医療区分1の患者さんを、今後老健で一定程度受け入れることは確か。但し、看護・介護体制から受入数には限界がある。また、現行の定額報酬が続く限り、高価な薬剤・医療器具を使わなければいけない人は、やはり受入は厳しい。加えて、在宅復帰支援を現在も掲げている老健の場合、在宅復帰困難な患者さんを積極的に受け入れるだけのインセンティブは少ないと思われる。 「老健一般に対する受入期待」という議論は、実践面においてはあまり生産的ではない。在宅復帰を必ずしも掲げていない老健を地域の中でいかに見つけるかが、急性期あるいは療養型の退院調整担当者の課題だと思われる。なお、「在宅復帰を必ずしも掲げていない」というのは、必ずしも経営者やスタッフの怠慢ではなく、そもそも系列の医療機関の受け皿として建てられた意図から派生する状況である。 本来であれば、在宅復帰困難な医療依存度の高くない患者の受け皿としては、介護老人福祉施設が適切なのだが、その場合、当該の医療機関は別立てで社会福祉法人を作らなければいけなくなる。その設立コスト(手間と費用)を考えると、現状の医療法人のままで建設可能な老健介護老人福祉施設的に運用すれば、最小限のコストで目的を達成できる。その結果、「在宅復帰を必ずしも掲げていない」老健が誕生することになる。これは是か非かの問題ではなくて、経営者の設立趣旨の選択の結果である。老健は一枚岩ではない。退院調整担当者には、その辺りを見極めて老健を活用して頂きたい。 また、7/14の記事で触れた「介護施設等のあり方に関する委員会」での、介護施設等での医療提供についての検討内容及び結果に、今後注目すべきであろう。 ここで、どれだけ老健での医療提供について改善がされるのかによって、3年後の介護報酬改定で受入体制は変化しうると思われる。 ②医療保険でのリハビリテーションを打ち切られて、かつ機能低下・マヒが残存している方の今後のリハビリテーションの場所として、厚生労働省介護保険下の通所リハビリテーションへ報酬上誘導しているが、そもそも介護保険対象外の人はこの議論から外れてしまう。 また、最近の事例で困るのは、「頭はクリアーだけれど軽度のマヒが残存している要支援の方」の通所リハビリテーション利用である。本人は、これまでに医療機関で受けてきた急性期・回復期リハビリテーションのプログラム内容・施行時間と、予防介護通所リハビリテーションの運動器機能向上加算のそれとの間で大きな差に戸惑われることが多い。要介護の認定を受けておられる方が、短期集中リハビリテーションを受ける場合には、多少納得をされるかもしれないが、予防給付のプログラムでは内容に、あまりにも落差があり過ぎるのである。また、短期集中リハビリテーションを1~3それぞれの加算項目において、全利用者へ確実に実施できるだけのリハスタッフ体制が整っている事業所がいったいどれ程あるのか、私には疑問である。そんな状況で、本人に勧めても「そんな程度なら、結構です。」と言われて当然であろう。 恐らく、こういった制度の谷間に落とされてしまった方達は、地域の整形外科クリニックや針灸あんま・整体・カイロプラティックへと流れて行かざるを得ないであろう。 整形外科・リハビリテーション医学からみてそれで妥当であれば良いが、必ずしもそうではない方達がうかばれない。
講座終了後、以前からお近付きになりたかった大先輩MSWの方とゆかりのある方々との食事会に急遽(お二人さんありがとうね)お邪魔させて頂き、大変楽しい時間を過ごすことができました。 このBlogとHPも徐々に認知されてきているようで、大変嬉しい限りです。 ------------------------------------------- ①7/25 15:55 一部加筆・修正