退院・退所スクリーニング票の作り方

医療ソーシャルワーカー・支援相談員が、退院・退所に向けた事前判断を行うために、スクリーニング票を用いることは重要な手段の一つであると考える。しかし、実際にはどの様にしたらスクリーニング票を作れるのか、ということについてこの2年半ずっと悩んできた。統計が得意な方々にとっては、簡単なことかもしれないが、私にとっては難解以外の何者でもない。 この間、少しだけ見えてきたスクリーニング票作成手順について忘れないようにメモしておく。まだまだ、さっぱり分からないことだらけである・・・。いずれにしろ、研究目的をハッキリさせた上で、日々のデータ収集を地道に積み重ねることが肝要であろう。


【方法1】(東大付属病院地域医療連携部:退院支援スコア)※注1 ①退院を阻害するであろうと思われる、因子(変数)を洗い出す。 ②入院・入所日数の長短で対象を2群化し、χ2 検定によりスコア項目を析出。 ③退院支援の依頼の有無で2群化し、ロジスティック回帰分析により各項目の重み付けとカットオフポイントを析出。 ※著者らにより指摘されている注意点 1.退院支援は生物である ・患者や疾患、病院機能や運営方針、地域医療環境、医療に関わる制度などが異なるとスコア項目や配点、カットオフ値は異なってくる。 2.退院支援スコアには退院支援スタッフの経験則も盛り込むべきである ・退院支援スコア開発における(スコア)採用項目の調査や方法には限界があり、データや統計結果には現れない、業務経験から得られる重要な事柄が多々ある。実用されるスコアであるためには、経験則も盛り込むべきであり、そのうえで適正を検証していくことが望ましい。 【方法2】(川崎市立井田病院保健医療部:在宅介護スコア)※注2 ①退院を阻害するであろうと思われる、因子(変数)を洗い出す。 ②経験則で、スコア項目を析出。 ③経験則で、スコア項目に重み付け ④ある特定期間に退院した患者から、性別・年齢(10年刻み)・退院先(在宅と病院or施設)でマッチングさせて無作為に抽出。疾患名は関与しないと仮定。(比較対照評価) ⑤在宅群と施設・病院群に2群化し、それぞれのスコア値の平均を検定(スコア値は正規分布すると仮定) ⑥ROC曲線によって、カットオフポイントを析出。 【引用文献】 注1:長野宏一郎ほか「転院に向けての退院支援」『高齢者の退院支援と在宅医療』メジカルレビュー社,2006.6,pp.54-59 注2:宮森正ほか「在宅介護スコアの開発」『日本在宅ケア学会誌』vol.15,№4,1992,pp.58-64