和気純子「介護保険施設における施設ソーシャルワークの構造と規定要因 -介護老人福祉施設と介護老人保健施設の相談員業務の比較分析を通して-」『厚生の指標』第53巻第15号,2006,pp.21-30

以下、出版社HPより転載。引用文献リストにあった次の5文献を収集すること。 ・根本博司「施設ケアとソーシャルワーク-その実態と二者の関係-」『ソーシャルワーク研究』12(1),1986,pp.4-9 ・米本秀仁「現場における老人処遇」『社会福祉学』28(1),1986,pp.21-52 ・日本社会福祉実践理論学会ソーシャルワーク研究会『ソーシャルワークのあり方に関する研究調査』1997 ・呉栽喜「老人保健施設入所者と介護者の施設や支援相談員への期待に関する質的調査」『大東文化大学紀要』43,2005,pp.1-13 ・和気純子「高齢者への社会福祉援助技術(ソーシャルワーク)に関する実証的研究」『科学研究費補助金報告書』2006


【目的】 介護老人福祉施設と介護老人保健施設における相談員業務の比較分析を通して,介護保険施設における施設ソーシャルワークのあり方を検討するための基礎データを作成することを目的とする。 【方法】 無作為抽出(系統抽出法)した介護老人福祉施設500カ所および介護老人保健施設500カ所の生活相談員・支援相談員のうち,当該施設で最も経験年数の長い相談員を対象に郵送調査を実施した。調査時期は,2004年11~12月,回収率は48.4%である。30項目の業務内容の頻度を5段階で尋ね,一元配置分散分析によって各業務頻度の比較を行った後,探索的因子分析によって因子構造を把握した。その上で,各因子得点を従属変数とし,施設特性および相談員特性を独立変数とする重回帰分析を行い,相談員業務を規定する要因の異同について考察した。 【結果】 介護老人保健施設の相談員は,入退所をめぐる相談・調整業務に多くの時間を費やしているのに対し,介護老人福祉施設の相談員は利用者の日常生活支援や地域社会と関わる幅広い業務により頻繁に従事している。業務の因子構造では類似点もみられるが,抽出された因子数や因子寄与率に差異が認められた。各業務因子に影響を与える要因では,介護老人福祉施設の場合は施設特性の影響力が強く,介護老人保健施設では相談員特性のみが規定要因となっていることが判明した。 【結論】 施設としての役割や機能を異にする介護老人福祉施設と介護老人保健施設であるが,入所者の権利を擁護し,その生活の質を高めるために,いずれの施設にあっても施設ソーシャルワークを担う相談員が果たす役割はますます重要になっていくものと考えられる。介護保険施設として,利用者のニーズに最も的確に応える相談員業務の設定と必要な専門性の確保が求められる。 キーワード 介護保険施設介護老人福祉施設,介護老人保健施設ソーシャルワーク,相談員