堤修三「なぜ、『地域包括支援センター』だったのか どうしてわかりにくいのか」『月刊ケアマネジメント』2007.4,pp.24-26

【論文の種類】 総論 【要旨】 包括センターがわかりにくいのは、給付事務とそれ以外の事業(介護予防マネジメント/総合相談・支援/包括的継続的ケアマネジメント)が同居させられていることが理由であろう。また、それらを統合するセンターの基本理念が明確にされていないことが最大の問題である。 保険給付だけではすべてのニーズに対応し得ない介護保険においては、保険者たる市町村は狭義の保険者事務だけではなく、“護民官”として被保険者=住民に対する支援的機能を担うことが期待されている。重要なのは保険者が住民支援的機能を果たすことであって、“地域包括支援センター”という機関を設けること自体ではない。 市町村が実情に応じ何が必要な事業であるかを考えて工夫しながら実施することとすればよい。また、その方が自治事務としての介護保険に相応しいだろう。様々な事業を実施し、それらを担う機関を包括センターと称することは全く自由である。 【コメント】 元老健局長らしい、現執行部への忠告的な文章である。枝葉末節な制度解説に陥らず、より本質的に地域包括支援センターについて論じており有用。地域の福祉は、住民自らが作り上げるのものであり、それを自治体が支援するという思想が貫かれている。 平成21年の介護報酬改定に向け、現在の混乱状態が幾分か整理されて、結果として地域包括支援センターの役割・機能が発展することを強く願っている。なお、今般の社会福祉士法における業務定義の修正内容は、まさに同センターの社会福祉士にとっては追い風となるものであろう。法律的裏付けを基にした、より具体的な意味でのコミュニティーソーシャルワークが展開されることを強く望む。ただし、センターの役割・機能を活かすも殺すも、設置・運営に携わるステークホルダーの力量次第であることは言うまでもない。