川村孝『エビデンスをつくる 陥りやすい臨床研究のピットフォール』医学書院,2003.10

「研究デザイン」「データ処理」「研究倫理」「論文執筆」の4部構成。特に「研究デザイン」が今の私にとって大変勉強になった。 その他にも、以下の言葉が印象的。ソーシャルワークに置き換えても通用する含蓄のある言葉である。 多様性のある人間においては、動物モデルやin vitroの実験のように「原因」と「結果」、「医療行為」と「転帰」が1対1に対応しない。したがって、健康事象の因果や医療の効果を科学的に分析するためには、多数の症例を集積して「それぞれの症例が持っている個別の事情を打ち消し、多くの症例が共通して持っている本質を引き出す」という疫学の手法が不可欠である。(「まえがき」より) 臨床家の間にEBM(Evidence-based Medicine)が普及してきたが、エビデンスはどこか他所にあって借りてくるもの、誰かが作ってくれるもの、といった雰囲気はないだろうか。診療の直接のエビデンスは決して天から降ってくるものではなく、実験室やコンピュータで製造されるわけでもなく、医療の現場で、臨床家の努力によって生み出されるものである。それゆえ、“医療者”は同時に“医学者”であることが求められる・・・・。 先達が作った既存のエビデンスを用いて診療を行うとともに、次の世代に新しいエビデンスを供給するため日常診療の一部に臨床研究を組み込みたい。しかしあくまでも患者さんを相手にした研究である。無駄や無理があってはならない。(「あとがき」より) ※赤字は筆者によるもの。


エビデンスをつくる (以下、Amazon.co.jpより) 川村孝『エビデンスをつくる』医学書院,2003.10 159頁 2,940円 【著者略歴】 川村 孝 1954年岐阜県生まれ。1980年名古屋大学医学部卒業。1980年より社会保険中京病院、榊原記念病院、静岡済生会総合病院にて循環器の診療に従事。1987年より愛知県三河総合保健センター、愛知県総合保健センターにて健診業務に従事(この間に名古屋大学環境医学研究所にて心臓生理学を研究)。1993年より名古屋大学医学部予防医学教室・助教授(この間にカナダ・マクマスター大学にてEBMを研究)。1999年より京都大学保健管理センター所長・教授。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本体育協会公認スポーツドクター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 【概要】 本書は、今までに自分自身が行ったり他の臨床家から相談を受けたりした臨床研究の中から、我々臨床家が陥りやすい落とし穴を拾い出し、臨床研究に必要な疫学の知識を整理したものである。 【目次】 1 研究デザイン編(治療・予防効果の研究 予後の研究 副作用の研究、発症要因の研究 診断の研究 実態調査 共通の課題) 2 データ処理編(整理と集計 検定と推定 解釈と適用) 3 研究倫理編(倫理指針の適用 倫理の手続き) 4 論文執筆編(論文の構成 執筆の手順 作文のポイント 日常のトレーニング)