研修3日目

いよいよ3日目。環境にも慣れてきて、晩は6県の老健支援相談員と交流会。思いが通じて和やかな雰囲気に。


1限 「医療安全について」 講師:種田憲一郎 氏(国立保健医療科学院政策科学部安全科学室長) 【内容】 医療安全に関する総論的な講義。本来であれば、1~2ヶ月かけてやる研修を3時間に圧縮。 【印象に残った文章・言葉】 ・日本では、医療安全という言葉が一般的だが、欧米ではPatient Safety(患者安全)という言葉が一般的。患者の安全をどのように守るかという発想。しかし日本では、訴訟を未然に防ぐとか組織の安全をどのように守るかという発想が強い。 ・交通事故による年間死亡者数は、H18年度6,352人。入院患者の医療事故による(推定)年間死亡者数は、H16年度40,000人で約7倍。※なお医療事故とは、医療者にミスがあったか否かは問わない。つまり、交通事故死に遭う確率より、医療事故死に遭う確率の方が高いかも?! ・また、H16年度全死亡の原因ランキングでは、1位は悪性新生物320,358人。医療事故は4位肺炎95,534人と5位不慮の事故38,193人の間。 ・医療関係訴訟事件の新規受付数は、1992年371件。それが2006年には912件に増加している。 ・医療関係訴訟事件の平均審理期間(裁判が判決するまでの期間)、は約30ヶ月。つまり、医療機関としては、1回訴訟が起きたら2年以上は関わっていることになる。なお、平均審理期間は年々短縮傾向にある。 【感想】 講師は、元臨床医。総論は賛成できたが、各論は素直に受け入れることができなかった。理由は、アメリカの手法をたくさん取り入れているが、アメリカと日本で病院の職員配置数が明らかに違う中で、同じ手法を従来の業務に上乗せして医療従事者の労働を更に強化することは、かえって医療ミスを起こしやすくしてしまうのでは、と思ったからである。しかし、安全管理の発想自体は重要だと思う。適切な職員配置と「セット」で取り上げるべきではないだろうか。しかし、個人病院ではこの発想は極めて難しかろう。 【評価】 × 【参考】 医療安全対策加算 (入院初日) 50点(平成18年度4月より)※当該保険医療機関に入院している患者について、入院期間中1回に限り、入院初日に算定する仕組みとなっている。
 医療安全対策加算に関する施設基準(抜粋) ※医療安全管理体制に関する基準 • 医療安全対策に係る適切な研修を終了した専従の看護師、薬剤師等が医療安全管理者として配置されていること • 医療安全管理部門を設置していること • 医療安全管理部門の業務指針及び医療安全管理者の具体的な業務内容が整備されていること • 医療安全管理者が医療安全管理対策委員会と連携し、より実効性のある医療安全対策を実施できる体制が整備されていること • 専任の院内感染管理者が設置されていること • 医療安全管理者等による相談及び支援が受けられる旨の掲示をするなど、患者に応じて必要な情報提供が行われていること 等

2限 「人権擁護とソーシャルワーク」 講師:池田恵利子 氏(いけだ後見支援ネット代表) 【内容】 虐待や成年後見ひいては人権とそれが行使できない人々への支援について講義。 【印象に残った文章・言葉】 ・私の担当している方は、①身寄りがない、②お金がない人を専門的に受け入れている。この仕事に関わり始めて11年目になる。権利擁護にソーシャルワーカーとして関わるようになったきっかけは、海外へ権利擁護に関する研修に行ったら、担当者がソーシャルワーカーばかりだったことが印象的だったから。 ・アドボカシーには、リーガルアドボカシーとアシスティブアドボカシーの2種類がある。 リーガルアドボカシーとは、権利救済を目的とするものであり、「弁護士を中心とする法律の専門家によってなされる、裁判を中心とする特定の法律上の専門知識や技術を駆使したアドボカシー」である。 一方、アシスティブアドボカシーとは、本人と関係者の力を高めるためのアドボカシーであり、「ソーシャルワーカーを中心とするコーディネーションの専門家によってなされる、本人の問題意識と権利性を明確にすることおよび本人の問題解決力や支援活用力を高めることを支援するとともに、サービス提供者を含む関係者に対する啓発や支援を中心とするアドボカシー」である。北川(2000)より。 【感想】 講師は、実務をしながらこの様な研修会に頻繁に講演している。今回は、体調不良の中、頑張って講義をして下さった。権利擁護に関する制度が次々と産まれる第一線にいるためか、実践の体系化が未整理。具体的に一連のソーシャルワークプロセスが浮かんでこなかった。でも、とても一生懸命ソーシャルワークしているのだなぁと、感じることはできた。成年後見制度に関する総論と具体的手続き手順の2つに分けて話して頂くともう少し分かり易かったと思う。テーマと内容がキチンと合致していた点は◎。 【評価】 △ 【参考】 河野正輝ほか編『講座 障害をもつ人々の人権③福祉サービスと自立支援』有斐閣,2000
(明日の予定) 1限 「ソーシャルワーク倫理と業務」 講師:堀越由紀子 氏(田園調布学園大学人間福祉学部準教授) 2限 「医療ソーシャルワーカー業務のあり方」 講師:佐原まち子 氏(東京医科歯科大学医学部附属病院医療福祉支援センター) 晩 東海地区(愛知・三重・静岡)及び千葉合同交流会。 ①2007.12.8 加筆 ②2007.12.9 加筆