「広島県の新保健医療計画に不安の声」『中国新聞』2008年4月24日

 ちょっと、混乱を煽り過ぎの様な気がします。ここで括られている「福祉系」の介護支援専門員が自分だけで抱え込まず、医師・看護師と十分に連携をとることが肝要かと。「医療系」の介護支援専門員も生きがい・自己決定というところで、自分だけで抱え込まず、福祉職員と十分に連携をとることが肝要かと。そもそも、「福祉系」「医療系」の2つに別けられる程、実際の介護支援専門員像は単純ではないと思う。


▽介護現場への支援急務、スキルアップが不可欠  在宅医療の推進を明記した広島県の新保健医療計画に、「福祉系」の介護支援専門員(ケアマネジャー)から不安の声が上がっている。県が想定する在宅医療推進の対象は、介護療養病床に入院していた高齢者や、自宅療養を望む終末期患者たち。ケアプランの作成には高度な医療知識が求められるからだ。住み慣れた自宅で過ごせる在宅医療へのニーズは高く、推進方針は理解できる。ただ、普及を図るには、現場の実態や意見を反映した県のフォローが欠かせない。 十日、県立広島大三原キャンパス(三原市)。「このままでは患者や家族にも不安が広がる」。ケアマネジャーのスキルアップ講座を担当した講師らの報告会で、村上須賀子教授(医療ソーシャルワーク論)は顔をしかめた。

 ケアマネジャーは、要介護者や家族の話を聞き、適切なサービス利用のためのケアプランを作り、行政やサービス事業者との連絡調整に当たる。十七人が受講した計八回の講座の報告書にはしかし、「医療用語や薬品名が分からない」「やみくもに取り組んでいる」―。医療知識の不足を自覚しつつ悩みや不満がつづられていた。 「成熟が足りぬ」 「意識の大転換を迫られている。知識や技術を補わなければ対応できない」。講座を統括した村上教授は心配する。 在宅医療の推進は、緊急入院などが必要な患者のための病床確保のほか、医療費削減などが狙い。県はその対象に、流動食を消化管から直接摂取するなど従来は介護療養病床に入院していた高齢者や、自宅療養を希望するがんなどの終末期患者らを想定する。 県内百四カ所の地域包括支援センターを軸に、往診や訪問看護、配食サービスなどと組み合わせたケア体制を二〇一二年度末までに整える―。県はこの方針を、四月スタートの新保健医療計画に盛り込んだ。 しかし、理想と現実の隔たりを指摘する声は少なくない。ケアマネジャーの資格取得には医師、看護師など「医療系」か、社会福祉士介護福祉士など「福祉系」のいずれかで、五年以上の実務経験が必要。在宅医療推進への戸惑いは、約一万二千八百人の県内登録者のうち、45%の福祉系に強いという。 約二千八百人のケアマネジャーが加入する特定非営利活動法人NPO法人)県介護支援専門員協会。荒木和美理事長は「実態に見合うケアプランをつくるには高度な医療知識を求められる。現場は行政が思うほど成熟していない」とみる。 在宅医療が定着すれば、〇五年で県内12%にとどまる在宅死の割合は高まり、「みとりの場」への立ち会うケースも増加することも予想される。在宅医療の先進地として知られる尾道市医師会の片山寿会長も「ケアマネジャーの困惑は当然」とし、医師との連携強化が必要と指摘する。 県は近く、医療と福祉を結ぶ県内すべての地域包括支援センターが十分な役割を果たしているかどうか、関係機関を対象に初のアンケートに乗り出す。 その機会などを利用すれば、在宅医療の推進に対するケアマネジャーの受け止めや注文を聞くことは可能だ。在宅医療に適切なケアプランは欠かせない。医療知識を高める研修や医師や看護師との連携支援など、推進には現場の不安を解消し、スキルアップを図る県の取り組みが必要だ。(門脇正樹) ●クリック 広島県保健医療計画 効率的な医療体制づくりを目指し、今月1日にスタート。全9章で構成し、「地域に密着した医療提供体制」の章で新たに在宅医療の推進を打ち出したほか、医療に関する県民への情報提供の推進、医療の質と安全の向上などを盛り込んだ。計画期間は2012年度末までの5年間。 【写真説明】講座の報告会で、ケアマネジャーの支援の必要性を指摘する村上教授(右)