鶴舞散歩(08.6.25)

吉川洋「経済教室 社会保障国民会議-中間報告の焦点」『日本経済新聞』2008年6月24日,朝刊 ・八代尚宏「経済教室 社会保障国民会議-隠れた論点」『日本経済新聞』2008年6月25日,朝刊 ・辻一郎「効果を分析 法改正前と後で悪化群が半減」『月刊 ケアマネジメント』2008.6,pp.12-14 種類:インタビュー ・村木寛茂「リレー連載第2回 老健運営の多機能・多様性を求めて」『病院経営』2008.6.5,pp48-52 種類:実践報告 【要旨】 著者は、愛知県高浜市にある、介護老人保健施設こもれびの里・高浜(入所100名:通所50名)の施設長。医療法人碧会は、刈谷市医師会高浜支部(会員10人)の中で、高浜市から老健設立の要請を受け、賛同した6人の医師(開業医)がそれぞ3,000万円ずつ出資して平成10年に設立した法人である。訪問看護ステーションとグループホーム、居宅介護支援事業所が併設されている。 著者は、平成15年から2代目施設長として就任。当時、同施設は特養的老健となっており、職員・家族・高齢者の相互のなれ合いとマンネリを感じた。施設の未来はないと直感し、同施設の改革に着手。当初は家族から、「これまでは、いつまでも入所してよいといってくれたので安心していたのに、突然退所を勧められても納得できない」「施設の責任で失くした入歯にこれまでは我慢してきたが、どうしてくれる」とさまざまな抵抗を受けた。また、抵抗は施設内部からもあった。 抵抗する家族の最大の不安は、退所したら入所できないのではないかということ。「一定期間を在宅ですごせばいつでも入所できる。また、在宅生活中に不測の事態が発生すれば、ただちに入所できる」と説明。 在宅復帰を始めると、職員は忙しくなって、変化についていけない4分の1の職員が一度に退職した。また、ベッド利用率も98%から80%未満に落ち込んだ。平成18年にようやく95%まで回復。 在宅復帰は、経営の安定に不可欠であり、退所者が出ても在宅生活者(筆者注:元入所者)の中から入所を安定的に確保できる。 また、職員の教育と研修に費用を惜しまない。教育経験豊かな外来講師を招聘したり、施設外研修や学会に積極的に参加させ、演者には報奨金を出している。年度末の所内研究発表会では各部門の1年間の活動を学会形式で発表している。 併設の訪問看護ステーションから看護師の派遣と同法人の医師(開業医)との連携によって、在宅復帰後も医療的管理が必要な人の支援をしている。 【感想】 実践をきちんと文章化されている。やはり経営安定の鍵は往復入所者の確保である。本文では触れられていないが、在宅復帰することで通所リハ利用者としても確保できるメリットがある。また、在宅復帰に向けて施設長自らが関わっていくことや、職員の教育と研修に対する姿勢が参考になる。重要な指摘として、在宅復帰施設を目指すことで、職場が回転し、忙しくなることを職員は肝に銘じなければいけない。そこで手を抜いて在宅復帰を機械的に行うと、ひどい結果を産むことになる。