「介護保険で提供するリハビリを強化」『読売新聞』2008年10月30日

通所リハに関する記事。 制度の枠にあてはめられてしまい、長時間にわたってデイ事業所に滞在しなければならない割には20-40分程度の個別リハビリしかない現状において、短時間個別リハビリをやるだけで、「帰ってもよい」制度ができること自体は大いに賛成である。このサービスができることにより気持ち的にも楽になって利用される方も出てくるものと思う。 しかし、気になるのは、リハ=理学療法運動療法=運動機能訓練といった印象を受けてしまう。理学療法だけでなく、維持期における作業療法や言語療法も重要であり、例えば脳血管障害による後遺症に対して作業療法による応用動作訓練や認知機能訓練、言語療法による発語・発音の訓練などは急性期で獲得した各種機能維持・向上のためにはなくてはならないと、実際に横で見ていて強く思う。 しかし、果たしてそれに見合うだけの人材がいるのか? 『平成18年介護サービス施設・事業所調査』の結果から、以下の実態が読み取れる。 ・通所介護1施設当たり        PT 0.08人(77.1%) OT 0.04人(67.0%) ST 0.01人(57.9%) ・通所リハ(老健)1施設当たり    PT 1.55人(43.6%) OT 1.14人(34.3%) ST 0.24人(31.0%) ・通所リハ(医療機関)1施設当たり PT 1.53人(58.4%) OT 0.69人(65.0%) ST 0.15人(33.2%) この様に、マクロでみるリハスタッフはどこの事業所も少数である。1日8時間勤務(480分)を1単位20分のリハビリで除すと、計算上は24単位個別リハを実施可能である。しかし、他にも記録作成業務や訪問、連絡調整などがあり実際にはこれらを下回る。 更に、この従事者のうち(  )の割合は、その他業務との兼務または非常勤の者の割合であり33.2%~77.1%とばらつきはあるものの、通所サービスに全てのリハスタッフが専任で関わっている訳ではないことが分かる。入所者のリハビリも行っているため、1施設当たりのデイに関われるリハスタッフは更に少なくなる。 果たして、これだけの少数のリハスタッフでどれだけのことがやれるのか。もちろん、これは全国値である地域別に見れば差はみられるかもしれない。また、事業所によっては事業責任者の判断でリハスタッフを手厚く配置しているところもあるかと思う。しかし、少なくとも全国的にみると上記の事実が浮かび上がってくる。 一見、サービスが充実する様な印象を受ける提案だが実体は、「制度あってサービスなし」となるのではないか。 実態を伴わせるためには、やはり人員配置基準を現行のものよりも更に手厚いものしなければいけない。そのためには、それなりの費用がかかるということもセットで考えなければいけないだろう。 以下、読売新聞HPより転載。


介護保険で提供するリハビリを強化」『読売新聞』2008年10月30日 厚労省方針 短時間通所など創設 厚生労働省は29日、来年度の介護報酬改定で、介護保険で提供するリハビリテーションの内容を強化する方針を決めた短時間・集中型の通所サービスを創設し、個別リハビリも増やすことなどで、医療機関での機能回復訓練を終えた人の受け皿を充実させる。 30日の社会保障審議会介護給付費分科会で基本的な方針を示す予定。< 高齢者のリハビリは原則、発症直後の急性期と治療後の回復期は医療保険、状態が安定した維持期は介護保険で提供されている。しかし、医療機関に比べ、介護保険の通所リハビリは事業所数が少ないうえ、内容も、長時間滞在し、食事やレクリエーションも行いながら、集団で実施されることが多い。 このため、介護保険でのリハビリを敬遠する高齢者もいることから、維持期リハビリの一部は現在、医療機関医療保険を使って行われている。来年度の報酬改定では、リハビリだけを1、2時間集中して行うサービスを創設するほか、退院直後に介護保険のリハビリを使い始めた人などに対し、現在も行われている個別の機能回復訓練を手厚くする。 また、医療保険を使って病院で訓練を受けている高齢者が、同じ病院で継続して訓練を介護保険でも受けられるよう、通所リハビリの指定基準や要件を見直す方針。 (2008年10月30日 読売新聞)