「最期まで自宅療養は「実現困難」6割強―厚労省調査」『CBニュース』2008年10月29日

厚労省は、この結果を「療養の場として63%が自宅を、看取りの場として80%が緩和ケア病棟・医療機関を希望している。」としている様だが、あくまでも、「治る見込みがなく、死期が迫っている(6か月程度かそれ未満)と告げられた場合」に限定した場合の事実認識である。 実際には、明確な死期は誰にも予測できず見通しのないままに介護を続けることになり(無論、少しでも長生きして欲しいと願う思いもある)、実際の終末期の悲壮な状況を介護者家族が目の当たりにすることを考えれば、実際の数字(63%)はもっと低下するであろう。確かに、昔は自宅で看取ることが生活の延長線上にあり一部でもあったかもしれない。しかし、今日核家族化や、共働きの増加、労働強化による就労時間の長期化、そして医療や介護の社会化により自宅で看取ることの方が例外となってきた。昔に戻るためには、それだけの人手が必ず必要になるし、身内に看取りの経験者がいないと不安で仕方がないであろう。 だから、国民が「実現困難」を選択した理由として、「介護してくれる家族に負担がかかる」、54.1%が「症状が急変したときの対応に不安である」と回答したことはもっともだと思った。 また、その他の理由として「症状急変時すぐに入院できるか不安である」31.6%、「経済的に負担が大きい」33.1%を挙げた人がいる。 都立墨東病院の例の様に、色々と行政が決めた制度やシステムがあったとしても実際にどう機能するのかまで冷静に見極めないと、制度はあっても「症状急変時すぐに入院」できないこともある。また、該当する社会資源があったとしてもそれを利用できるだけの財力がなければ無きに等しい場合もある。例えば、緩和ケア病棟への入院の場合、多くは個室対応となっているため個室代が発生するためそれが払える人だけが利用できる社会資源となる。仮に個室代がかからない医療機関があっても、利用したい時には満床で待機者も存在し、利用できないということもある。 自宅療養の推進から、在宅療養の推進、そして在宅等での療養の推進と厚生労働省はその定義・範囲を広げてきたが、援助職の認識はそれには追いついておらず未だに在宅での生活が限界な利用者・家族に対して「これからは在宅でできる限り療養・介護することが大切なの。だから頑張って自宅でやりましょう・」と発言している援助職も見受けれらる。それは何より言葉による暴力ではないだろうか。 以下、CBニュースHPより転載。


「最期まで自宅療養は「実現困難」6割強―厚労省調査」『CBニュース』2008年10月29日 終末期の療養の場所について、国民の6割強が、「自宅で最期まで療養するのは『実現困難』」と考えていることが、厚生労働省が今年3月に実施した「終末期医療に関する調査」の結果で明らかになった。  調査は厚労省が今年3月、無作為に抽出した満20歳以上の一般国民5000人、医師3201人、看護職員4201人、介護施設職員2000人に対して実施し、それぞれ2527人、1121人、1817人、1155人から回答を得たもの。同省では1998年、2003年にも同様の調査を実施している。  「自宅で最期まで療養できると考えるか」との問いに、「実現可能である」と回答した一般国民は6.2%で前回調査時より2.1ポイント減少。「実現困難である」は66.2%で、0.7ポイント増えた=グラフ1=。  一方、医療・介護従事者で「実現可能である」と回答した人の割合は、医師26.0%、看護職員の37.3%介護施設職員の19.3%。「実現困難である」としたのは、医師55.7%、看護職員43.3%介護施設職員54.6%。一般国民に比べ、「実現可能である」とした人の割合が大きかった。 「実現困難」を選択した理由については、複数回答で、一般国民の79.5%が「介護してくれる家族に負担がかかる」、54.1%が「症状が急変したときの対応に不安である」と回答。「往診してくれる医師がいない」31.7%、「症状急変時すぐに入院できるか不安である」31.6%、「経済的に負担が大きい」33.1%と続いた=グラフ2=。  また、「治る見込みがなく、死期が迫っている(6か月程度かそれ未満)と告げられた場合、最期までどこで療養生活を送りたいか」との問いには、「自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい」が一般国民の29.4%、「自宅で療養して、必要になればそれまでの医療機関に入院したい」が同23.0%と多数を占め、それぞれ前回調査時より2.7ポイントと1.4ポイント増加した。「なるべく早く緩和ケア病棟に入院したい」18.4%、「自宅で最期まで療養したい」10.9%、「なるべく早く今まで通った(または現在入院中の)医療機関に入院したい」8.8%などが続いた。   この結果について厚労省では、「療養の場として63%が自宅を、看取りの場として80%が緩和ケア病棟・医療機関を希望している」とコメントしている。