『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター(通巻51号)』2008.11.1

本田由紀(東大准教授。教育社会学者。新著に『軋む社会』(双風舎))「難しい内容を議論している研究会に出ていると、誰に聞かせようと思って、議論しているんだろう、頭の良さの見せ合いっこをしている場合か、と思うことがある。今、この世界で何が起きているのか、足元を見ようよと」(『AERA』2008年9月15日号,61-64「現代の肖像-本田由紀」) 二木コメント-社会科学分野で少なくない「研究のための研究」を痛烈に批判した言葉と思います。社会科学の中で社会福祉学は例外的に、現実・実践とのかかわりをはっきりと意識した研究が多かったのですが、最近は「研究のための研究」(しかし「頭の良さ」は感じられない)が増えてきた気がします。 ○増田一世(やどかりの里常任理事)「私を支えてきたのは「記録のない実践は実践にあらず」『目の前のメンバーがお師匠さん』という2つの言葉。メンバーから多くのことを教えられながら、活動してきた」(「週刊福祉新聞」2008年9月22日号。全国精神障害者団体連合会の第10回全国大会の基調講演で、30年にわたる支援活動を通じて学んだことを紹介してこう述べた後、自立支援法の廃止を訴えた)。 二木コメント-私の経験でも、福祉分野・福祉職が医療分野・医療職に比べて、歴史的に特に遅れていたのは、実践の「記録」とその保存だと思います。信じられないことに、退職時に後任がすぐ採用されなかったため、クライエントのプライバシーの保護を理由として、相談記録をすべて焼却処分してしまったソーシャルワーカーすらいました(1990年代前半の実話) ※先週金曜日の浅野先生の講演でも同様の「焼却処分」の話題が出ていたため目にとまった。 追記 ・今月発売の『総合リハビリテーション』11月号 にて、二木立氏・石川誠氏・近藤克則氏の「鼎談:後期高齢者医療制度と診療報酬改定」が掲載されうようです。なお、同号の特集は「難病のリハビリテーション―神経筋疾患を中心に」で以下の論文が面白そうです。 ・田中千枝子日本福祉大学保健福祉学科)「心理社会的リハビリテーション」 ・大坂純仙台白百合女子大学総合福祉学科)「当事者活動を活用した難病患者への支援」 ※「高次脳機能障害者を支援する会」との関わり。 写真:大坂純さん その他にも以下の論文が面白そうです。 ・時里香ほか(熊本機能病院)「脳卒中地域連携クリティカルパスを作成するための基礎調査―脳卒中回復期リハ病棟における患者の層別化の試み」 村山明彦ほか(シオンよこはま)「介護老人保健施設認知症棟における転倒防止マネジメント構築のための研究―入所者の認知症の行動・心理症状と転倒の関係」