「患者を支える人々 患者と家族の悩みに対応 口調ゆっくり 相手和ませる ソーシャルワーカー 佐原まち子さん」『朝日新聞』2009.2.17

(朝日新聞HPより転載) 「患者を支える人々 患者と家族の悩みに対応 口調ゆっくり 相手和ませる ソーシャルワーカー 佐原まち子さん」『朝日新聞』2009.2.17 東京都文京区にある東京医科歯科大学病院の医療福祉支援センターのすぐ近く。5人のソーシャルワーカーと1人の在宅医療専門看護師が、入院中や外来の患者と家族の悩みに対応している。 副センター長で社会福祉士精神保健福祉士の国家資格を持つ佐原まち子さん(55)はソーシャルワーカーになって33年。がん患者からの相談で最も多いのは退院後の療養先選びと言う。 おおまかに、病院は手術など治療が中心の急性期病院と療養に比重を置く慢性期病院に分かれ、急性期の治療後の患者は自宅や慢性期病院、緩和ケア病棟などに移る必要がある。 近年は在宅医療を希望する患者さんが増えてきた。だが、本人も家族も不安は大きい。佐原さんは、面談で患者のこれまでの生き方や考え方、現在の状況を聞き、在宅療養をサポートする仕組みを説明する。慢性期病院や緩和ケア病棟を希望する患者には、地域の病院を紹介したり、手続きを手伝ったりする。 患者の不安や悩みは幅広い。「治療費が払えない」「医療保険に入っていない」といった不安や、「がんになったことを会社にどう話せばいいか」などの相談が寄せられる。家族からは「本人にどう告知したらいいか」「患者とどう向き合えばいいか」と尋ねられる。一人ひとりと40~50分かけて面談し、話を整理し、必要な情報を伝える。 東京都新宿区の伊藤照美さん(45)は母が大腸がんで突然入院したとき、佐原さんに何度も相談した。「情報のやりとりだけでなく、励ましてもくれて心強かった。駆け込み寺のようでした」と振り返る。 毎日、佐原さんは15~16件の相談に対応する。院内を忙しく動き回るが、口調はゆっくり。面談で深刻な話題になっても、クスッとした笑いを心がけ、相手を和ませる。 この仕事のやりがいは「いろいろな生き方を学べること」。患者や家族の話に心動かされ涙ぐむこともあるが、常に「全体を見すえて、客観的に判断します」。 趣味の日本画と篠笛で心を静める。が、いまは、病院のソーシャルワーカーらでつくる日本医療社会事業協会の研修会講師として、週末に全国を飛び回る。 ※79年から関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)に勤務。02年から現職。元国立がんセンターがん対策情報センター運営評議会委員。4児の母。 (医療ジャーナリスト・福原麻希) 福原麻希(ふくはら・まき) 医療ジャーナリスト 1966年生まれ。玉川大学文学部(教育学科)卒。雑誌、新聞、単行本などで医療・健康・栄養分野、および、人間ドキュメント・ノンフィクション記事を執筆する。日本メディカルライター協会(JMCA)正会員、日本統合医療学会(JIM)会員。スペイン語翻訳としても活躍する。著書「がん闘病とコメディカル (講談社現代新書) 」(講談社新書)、スペイン語翻訳書に「きみは太陽のようにきれいだよ」(童話屋) 福原麻希スポーツニッポン新聞社より転載)