白澤政和「ケアマネジメントとソーシャルワーの関係⑰ケアマネジメント導入でのソーシャルワークへの否定的な影響」『ソーシャルワークの TOMORROW LAND』2009年6月12日

白澤政和先生が、ご自身のブログにて「ケアマネジメントとソーシャルワーの関係」というテーマで、精力的に連載を書かれている。この文章量の凄さは、流石という形容詞以外思いつかない。 6月12日の記事、「ケアマネジメント導入でのソーシャルワークへの否定的な影響」は、タイトルの通り否定的側面がアメリカとイギリスに分けて述べられている。 私が最も注目したのは以下の文章である。 「古い話であるが、10年程前にアメリカシカゴに行った時、現在関西学院大学の教授をしている渡部律子さんの自宅に泊めていただいたが、その時に、日本では「退院計画」で業績をあげていると紹介されているノースウエスタン病院ソーシャルワーカーにヒヤリングをするためにアポイントメントをとって、訪問したことがある。そこで驚いたことは、既に日本で紹介されていたような「退院計画」は存在せず、ソーシャルワーカーは、院内での手術の期間をどのように短縮し、入院期間をいかに短縮していくかのクリニカル・パスを行うことが業務であるとの説明を受けて唖然としたことがある。  こうした社会経済制度の変化に対して、ソーシャルワークは自らが置くべき専門職としての価値観とそこで求められる技術を守っていくことが大変であることを教えられた。今後、こうした方向は日本にも一層に入ってくるであろうが、社会福祉士精神保健福祉士といった国家資格取得者を含めたソーシャルワーカーは毅然として、自らの専門性を貫くことができるであろうか。」 確かに、先日の日本医療社会事業協会全国大会においても、地域連携クリティカルパス系の発表において、平均在院日数が如何に短縮されたかが内容の中心であり、ソーシャルワークに関する考察が皆無であった報告を聞いて大変驚かされた。 ともすると、病院経営のトレンドにソーシャルワーカー自身が追いつこうとするあまり、適合した時にはもはやソーシャルワークと呼べるような実践が無くなっている、ということが現実に起きてしまいそうである。地域医療連携室に合併され、前方連携業務も兼務しなければいけなくなったソーシャルワーカーの話も聞く。病院で雇われている以上、一端は受け入れなければいけないかもしれないが、それでもやはり自分たちがやるべきことは何なのかを自問し続ける必要はある。その上で、業務を整理し適材適所に再度割り振ることも必要であろう。 何を守り何を変えていくか。そのことを常に意識しながら医療制度の荒波の中、航海を続けて行く必要があると思った。 【関連文献】 ※ノースウエスタン記念病院における退院計画については、中谷陽明氏が「第1部第2章 アメリカにおける退院計画」『退院計画』ミネルヴァ書房,1996,pp12-28にて取り上げている。