「要介護認定 見直し議論 盛ん」『中日新聞』2010年6月10日

中日新聞は、スマッシュヒットを飛ばすことが少なくありません。ちなみに白「沢」政和先生ではなく、白澤政和先生です。 以下、中日新聞HPより転載。
「要介護認定 見直し議論 盛ん」『中日新聞』2010年6月10日 来年予定の介護保険法の改正に向け、要介護認定の見直し議論が盛んになっている。簡素化の提案があれば、認定そのものの廃止を訴える団体も。以前の二〇〇五年の大幅改定時にはなかった動きだ。(佐橋大)  全国に一万人超の会員がいる「認知症の人と家族の会」は五日、京都市で開いた総会で、要介護認定の廃止を国に提言すると決めた。認定不要論は、大阪市立大の白沢政和教授が昨年提唱。家族の会も取り入れた形だ。  背景には、認定で苦しむ家族の存在がある。身体的に健康な認知症の人では認定が軽く出がちで、保険で受けられるサービスは、必要性の割に少なくなる。  同会の調べでは、会員の約一割が支給限度額を超えてサービスを利用。限度額を超えた部分は全額自己負担になり、経済的な理由から在宅介護をあきらめる人も少なくない。「認定で、在宅介護が阻まれている側面がある」と同会は訴える。  くすぶっていた認定への不満に火を付けたのが、昨年四月の認定基準の変更。厚生労働省がサービス抑制の思惑で制度をいじれば、認定が簡単に引き下げられることが分かった。「本人や家族を振り回す認定は、本当に必要なのか」と高見国生代表理事。約一年かけて議論を重ね、「廃止」の結論に至った。  高見代表理事は「廃止しても支障は出ない」とする。「認定、限度額がなくなると、野放図にサービスを使うという人がいるが、一割の自己負担があり、利用にブレーキが掛かる。現在、平均の利用額が限度額の四割程度に収まっているのは、その証拠。限度額以上に使っている人への保険給付は増えるが、それは審査経費など認定の廃止で浮くお金を回せばいい」  しかし、現実には、無駄なサービスを押しつけるケアマネジャーもいる。この手の無駄遣いには、認定に代わる新たな仕組みの工夫で、対応できると同会は主張する。  新たな仕組みでは、家族らの求めで、本人やケアマネ、事業者、保険者(市区町村の担当者)を集め、保険で提供するサービスの内容や頻度を決める。保険者は、議論に立ち会うことで、無駄遣いへのメスが入れられるという。      ◇  一方、NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」は四月、複雑化して経費と手間が膨らんだ要介護認定の簡素化を求める要望書を長妻昭厚生労働相に提出した。  要介護度を七段階から三段階に減らし、認定の経費と手間を省く。限度額の制約を緩くして、本人の個性や介護環境を反映したプランを組みやすくするべきだとする。  評論家で同会の樋口恵子理事長は「廃止は混乱を招く」との立場。「ケアマネジャーの報酬が低く、独立性が保てない状態。限度額もなく、自由にプランを組めるようにしたら、事業者の意図を反映したプランになる。現状では、認定なしに公平なサービス量を決めるのは無理」と指摘する。      ◇  こうした意見を吸い上げ、法改正に反映させるのが、厚労相の諮問機関、社会保障審議会の介護保険部会。来年通常国会への改正案の提出を目指し、五月に議論を開始、十一月までに意見をまとめる予定だ。  しかし、議論の時間が短く、部会内に見直しに慎重な意見の委員もいるため、法改正に認定制度の抜本的な見直しを盛り込むのは、容易ではなさそうだ。  <要介護認定> 介護保険サービスを受けるのに必要な手続き。コンピューターによる1次判定と、その結果を基にした審査会の議論で結論を出す。状態が軽い順に要支援1、2、要介護1~5の計7段階ある。コンピューターのシステムの維持管理、審査会の経費などに年間2800億円の費用が必要との指摘もある。