在宅復帰支援担当者の定義の推移

平成26年の診療報酬改定で亜急性期入院医療管理料が廃止となり、地域包括ケア病棟入院料(地域包括ケア入院医療管理料)が新設された。この施設基準として、「当該医療機関に専任の在宅復帰支援担当者(職種に規定は設けないが、社会福祉士のような在宅復帰支援に関する業務を適切に実施できる者をいう。以下同じ。)が1名以上配置されていること。」と社会福祉士という文言が明記された。

出典:『(保医発0305第1号)基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知) 別添』平成26年3月5日
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000041259.pdf

あくまでも「社会福祉士のような」であり社会福祉士でなくても「在宅復帰支援に関する業務を適切に実施できる者」なら誰でも可だが、職種名が通知上で具体的に例示されたことは一歩前進である。

日本医療社会福祉協会は同協会ニュース(№H26-1)で「平成26年度診療報酬改定に係る個別改定項目で『地域包括ケア病棟入院料』の新設が示唆されて間もなく、上述の在宅復帰支援担当者の具体的職種として社会福祉士の記載を求めるため『亜急性期入院医療管理料届出医療機関に対する在宅復帰支援担当者の厚生局届出職種並びに実務担当者職種の調査』を実施し、根拠資料として厚生労働省へ提出した経緯があります。大変急な調査となりましたが、全国医療ソーシャルワーカー協会会長会をはじめ、会員の皆様の多大なるご支援とご協力により記載の実現に至りました。」(p1)と社会福祉士が通知に明記された経緯について触れている。(同ニュースは後日協会HPに掲載予定)

平成16年に亜急性期入院管理料が新設された際、施設基準として「在宅復帰支援担当者を専任で1名以上配置」とされ、同年3月30日の『(事務連絡)疑義解釈の送付について』では、次の通り定義されていた。

Q.専任の「在宅復帰支援を担当する者」とは具体的にどのような職種が該当するか。
A.職種に規定は設けていないが、在宅復帰支援に関する業務を適切に実施できる者である事。なお、届出の際、在宅復帰支援を担当する者を決めておく必要がある。

一方、『日経メディカル』平成16年3月23日号によると、「亜急性期入院医療管理料の算定要件は、『在宅復帰支援担当者を専任で1名以上配置』とされているが、どんな職種の人がどのような形で関わればいいのか、明確にされていなかった。メディカルソーシャルワーカー厚労省の描くイメージに最も近いと言われているが、「メディカルソーシャルワーカーは、まだ国家資格がないので、実際にそうした仕事をできる人であれば、担当者の資格は問うていない」(保健局医療課)」という厚生労働省の本音もあったようだ。ただし、あくまで通知上に明記されなければ何も変わらない。

転換期は、平成18年の診療報酬改定時で、いくつかの項目に社会福祉士の文言が明記された。これは、「医療ソーシャルワーカーとは社会福祉士の資格を持ち、保健医療分野で生活相談に応じる人」という解釈が具現化されたものと思われる。その後、平成20年の診療報酬改定時には初めて施設基準に社会福祉士が明記されていく。しかし、この様な変化に応じて「在宅復帰支援を担当する者」の定義が修正されることはなかった。

なお、平成18・20年の診療報酬改定の背景で日本医療社会福祉協会が厚生労働省に対してどのようにロビー活動を展開したかは、以下の記事が参考になる。
・笹岡眞弓「医療ソーシャルワークの近未来を語る―日本の医療ソーシャルワークの近未来―」『医療社会福祉研究』第21巻,2013,pp.39-43
・笹岡眞弓ほか「公益社団法人日本医療社会福祉協会設立0周年記念講演会 第1部記念報告『診療報酬への参加と生涯研修の歩み』」『医療と福祉』№95<Vol.47-№2,2014,pp.2-7

振り返れば、在宅復帰支援担当者の定義が「職種に規定は設けていない」から「職種に規定は設けないが、社会福祉士のような在宅復帰支援に関する業務を適切に実施できる者」と修正されたことは、亜急性期病床で活躍されていたMSWとそれを政策に訴えかけた日本協会の活動の成果であろう。10年の月日は、通知解釈の変更など大きな転換期を考えると段階的に必要だったものと思う。

【追記】
地域包括ケア病棟入院料および地域包括ケア入院医療管理料の届け出様式では今回も残念ながら「当該病棟専任の在宅復帰支援担当者氏名」を記載する欄だけしか設けられず、職種を記載する欄がない。(様式50,様式50の2)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000041260.pdf

但し、「様式7 入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類(勤務形態)」では、地域包括ケア病棟入院料に配置される専任の在宅復帰支援を担当する看護師名を記載する項目があるため、届出書類上の在宅復帰支援担当者に占める看護師の割合は厚生労働省のデータとしては把握出来そうである。