書籍案内

大島伸一『超高齢社会の医療のかたち、国のかたち』グリーン・プレス,2014.6 189ページ

○内容
2030年ニッポン。その国家像を問う!「長生き」そのものに意味はない。「意味ある長生き」にどのようにしていくかだ。

○目次

第1章 高齢社会とは何か
  1.少子高齢化がもたらした人口構造の変化
  2.65歳以上は高齢者か
  3.高齢社会の不安
 
第2章 旧来の医療から高齢社会の医療へ
  1.高齢者の増加により変わる医療需要
  2.高齢者医療の専門家が足りない
 
第3章 地域社会や国に望まれる高齢者とのかかわり
  1.個人には収まらない高齢者の問題
  2.医療と介護の連携を模索
  3.社会保障制度は変化にどう対応するか
 
第4章 高齢社会に浮き彫りにされた問題
  1.高齢社会を象徴する病気、「認知症
  2.高齢者医療に関わる社会的問題
 
第5章 対談〈超高齢社会を論じる〉
     対談1 建築と医療が出会う街づくり
     東京大学准教授(建築計画)大月敏雄氏×大島伸一
     対談2 高齢になっても働ける仕組みづくりを
     慶応大学商学部部長(労働経済学)樋口美雄氏×大島伸一
 
第6章 どんな社会をめざすのか
  1.長生きを喜べる社会への構造転換
  2.未知なる高齢社会への挑戦


「超高齢社会へ処方箋 国立長寿研の大島名誉総長が出版」『中日新聞』2014年7月27日
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20140727/CK2014072702000052.html

国立長寿医療研究センター大府市)の大島伸一名誉総長(68)が、将来の医療や福祉に関する提言をまとめた著書『超高齢社会の医療のかたち、国のかたち』(グリーン・プレス)を出版した。「このままでは2030年以降に深刻な事態になる」と高齢化の進展に警鐘を鳴らし、抜本的な改革を訴えている。
 名古屋大病院長や社会保障制度改革国民会議委員を歴任し、現場と理論の両方に精通することから、超高齢社会への処方箋となる本の執筆を決意。今年三月に総長を退いたのを機に出版した。
 すさまじい速さで進む高齢化について「個人的に『いかに生きるべきか』をいくら考えても、それが無駄になるような段階」との認識を示す。危機が現実化するのは、高齢化率が30%を超える二〇三〇年と予測。多くのお年寄りが行き場所、死に場所をなくすような事態も思い描き、国の在り方にまで踏み込む改革を求めている。
 改革の具体策では、まず医療制度の見直しを挙げる。従来の「治す医療」「病院中心の医療」から「生活者としての全体像を見る医療」「在宅中心の医療」への転換。これに合わせて医師の養成も、特定の臓器の専門医より総合診療医や老年科の知識を持つ医師を優先すべきだと提言する。
 改革の鍵を握るものとして、生活の基盤である地域の重要性を強調。どんな医療、福祉が必要かを考え、個々の地域で計画を描いて実行に移す。それによって問題点が明確になり、その圧力によって国の制度を変えていくことも可能になると期待する。
 高齢化に希望の芽も見いだしている。日本が世界最先端にあることから、さまざまな新機軸を生み出す好機にもなるという。
 大島さんは「今進む高齢化は単なる高波ではなく津波。国全体で考えなければならないが、長生きを喜べる社会になるよう、まずは地域が動いてほしい。この本がその一助になれば」と話している。
 四六判、百八十九ページ。千四百円(税別)。主要書店で販売している。