新刊案内

喪失と悲嘆に関するまとまった研究書。
山本力『喪失と悲嘆の心理臨床学』誠信書房,2014.8.15

○内容
病や事故や災害を通して人が遭遇する喪失と悲哀の心理的体験について,理論的考察と心理臨床実践を集大成した著者渾身の書き下ろし

○目次
序 文 (鑪 幹八郎)
第1章 大きな謎としての喪失の悲しみ――喪失様態と三つの課題
 1.喪失とは目覚め 
 2.基本用語の概念規定 
 3.喪失様態の枠組みの提起 
 4.本書の構成 
 第1章の要約 
第2章 対象喪失論の起源と展開――フロイトからクラインへ
 1.フロイト対象喪失論の契機 
 2.モーニングワークと脱カセクシス仮説 
 3.ビンスワンガーへのお悔やみの言葉 
 4.喪失経験と個性化への道 
 5.遺された者の悔やみと罪悪感 
 6.メラニー・クラインの対象関係論 
 7.対象の破壊―自責モデル 
 8.モーニングワークと創造性 
 第2章の要約 
第3章 リンデマンによる悲嘆研究への挑戦――ココナッツグローブ火災の叡智
 1.最初のグリーフオロジスト 
 2.ココナッツグローブ火災の悲劇 
 3.悲嘆反応への関心の背景 
 4.「急性悲嘆の症候学とマネージメント」の論文 
 5.遺言としての講話 
 第3章の要約 
第4章 キューブラー・ロスの生涯と着想の軌跡――DABDAモデルを越えて
 1.『死ぬ瞬間』出版までの来歴 
 2.死にゆく過程のDABDAモデル 
 3.シュナイドマンの批判 
 4.キューブラー・ロスの真髄 
 5.エリサベスの究極の関心 
 第4章の要約 
第5章 喪失経験とモーニングワーク論の再検討――喪失の新しい見方
 1.喪失経験の多様性と個別性 
 2.期待され,想定された世界 
 3.グリーフワークとリアリティワーク:死別の二重過程モデル 
 4.「継続する絆」仮説の検討 
 第5章の要約 
第6章 分離不安の本質とその対処――いるとは何か,いないとは何か
 1.老若男女に生起しうる分離不安:DSM-5の改訂 
 2.分離不安の経験の特徴 
 3.「いないいないバア」の過程 
 4.アベイラビリティという鍵概念 
 5.見捨てられ不安と分離不安との違い 
 6.分離不安の低減はいかにして可能か 
 第6章の要約 
第7章 がん患者と心理臨床家の旅の課題――映画『最後の輝ける日々』の検討
 1.はじめに 
 2.分析素材:『The Last Best Year』の概要 
 3.「物語」の考察 
 4.おわりに:「安堵の課題」 
 第7章の要約 
第8章 悲嘆アセスメントの視点――どこで,なぜ立ち往生しているか
 1.悲嘆アセスメントとは 
 2.悲嘆反応の異常:複雑性悲嘆 
 3.悲嘆尺度の開発 
 4.悲嘆のアセスメントの六つの視点 
 第8章の要約 
第9章 事例研究:悲嘆カウンセリングのイニシャルケース
 1.クライエントの概要 
 2.面接経過 
 3.考 察 
 第9章の要約 
第10章 悲嘆カウンセリングの中核理念と技法
 1.心理面接・グリーフケアの枠組み 
 2.安全基地の機能と非侵襲的な態度 
 3.現実検討を促進する共感的な傾聴 
 4.クライエントを支える心理教育 
 5.エンプティ・チェアによる故人との代理的な再会 
 6.悲嘆夢の臨床的利用 
 7.現実へのアクションと統合的モーニングワーク 
 8.新たな意味とストーリを紡ぎ出す 
 9.まとめ:グリーフケア・悲嘆カウンセリングの要点 
 第10章の要約 
終章 それでもフェニックスのように
 1.心理的に喪はいつ明けるのか 
 2.喪失と獲得:贈りもの体験 
 3.経験を活かし,継承する:「希望」の課題 
 4.ユズリハ:最後のジェネラティビティ 
 5.エピローグ 
 終章の要約 
喪失と悲嘆に関連する「用語解説42」
文  献
あとがき

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