抗がん剤・生物学的製剤の使用によるB型肝炎再活性化に対する医療費助成

「治った」と思われていた人でも、悪性リンパ腫の治療薬「リツキシマブ」やリウマチの生物学的製剤を使用中に、体内に潜んでいたウイルスが再び増え、治療後、劇症肝炎になる症例が十年ほど前に問題化した。再びウイルスが検出される「再活性化」は、リツキシマブで約8%。名古屋市立大教授の田中靖人さん(47)は「治ったら『肝臓からなくなる』と考えられていたHBVだが、実は、DNAが肝臓に残り続ける。HBVの感染は一生続く」と指摘する。
出典:「B型肝炎ウイルス 成人感染、慢性化拡大の恐れ」『中日新聞』2014年9月2日
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140903142410642

先日、院内の勉強会でもこの再活性化について取り上げられ、再度肝炎治療を行うという報告がされていた。その時、当該の肝炎治療に対する医療費助成がなされるのか疑問に思った。

ソーシャルワーカーの部署内で話したところ、既に医師から問合せがあり保健所に照会したことがあったとのこと。結論は、助成対象外だったとのこと。Q&Aにもそう記載されていると。

早速、Q&Aを調べた。

厚生労働省健康局疾病対策課肝炎対策推進室『肝炎治療特別推進事業に関する問答集(Ⅳ)』2013年12月25日
http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/kodomo/hoken-chubu/somu/documents/mondousyu.pdf

13ページに次の記載がある。

(問44)化学療法、免疫抑制剤使用の際のB型肝炎ウイルス再活性化予防のための拡散アナログ製剤投与は対象となるのか。【新規】
(答)お尋ねの治療については、ウイルスの再活性化による肝炎発症を予防するために保険診療上認められているものであるが、肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患を対象としている本事業の認定基準には合致しないことから、助成対象とはならない。

これが、根拠となっての保健所の回答であったと推察する。

では、肝機能の異常が確認された場合はどうかと思うが、「再活性化予防」がガイドラインの標準治療となっており、異常が確認されるまで治療しないということは医療倫理的に考えにくい。

【参考】
 (厚生労働省/難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班、肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究班)
・日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会編『B 型肝炎治療ガイドライン(第2版)』2014年6月
http://www.jsh.or.jp/doc/guidelines/HBV_GL_ver2.201406.pdf