窪田暁子「ソーシャルワーク理論と実践をつなぐ」『ソーシャルワーク研究』Vol.26,№1,2000,pp.4-10

年末年始にファイリングキャビネットの中にあった論文を眺めていて見つける。論文のすみに記したメモには、2007.3.1日本福祉大学附属図書館で複写したとのこと。当時、愛知県医療ソーシャルワーカー協会の老人保健施設ソーシャルワーク部会で現任者研修にエネルギーを注いでいたことが思い起こされる。


窪田暁子「ソーシャルワーク理論と実践をつなぐ」『ソーシャルワーク研究』Vol.26,№1,2000,pp.4-10

【印象に残った言葉】
・「ソーシャルワーカーの場合、『専門職としての自己』形成の理想的な目標は、1)援助者としての基本的価値、人権の尊重などを強くその基盤とし、2)人間的な暖かさと科学的知識を保ちつつ、基本的な面接技術に熟達しており、かつ3)いくつかの基本的なソーシャルワーク理論を駆使するのに十分な判断力と力量を持ち、4)しかもそれらを統合して職業倫理を堅持し、5)技術であると共にアートであるとも言われるような、個性的にブレンドされた理論とスタイルを確立する、ということができようか。」(p.5)

・「実践と理論の結びつきを強化すべきことが論じられる時に、しばしば実践に根ざした理論という言葉が用いられるが、そこには現在の理論は実践に根ざしていないという前提と、たくさんの事例研究を積みかねることによって一定の方向性を見出すよう努力すれば、それがそのまま理論の形成につながるという前提が、暗黙のうちに承認されているように思われる。実際のところ、多くのソーシャルワーク理論、またアプローチと呼ばれている諸体系は、現実の社会問題とそれへの対策、そのなかでの多くのリサーチや臨床体験に根ざしているのである。一方、現在行われている必ずしも十分でない人員配置やワーカーの基礎教育水準の事例を集めただけでは、現在の平均的な業務内容とその水準以上のものを得ることは難しく、若いワーカーたちが将来の実践の指針をそこから得るのはからなずしも容易でない。」(p.8)

・「多くのソーシャルワーカーたちが、自分たちの仕事の理念や遠い目標について語ることは出来ても、それらの日常的な、具体的な展開における独自性を十分に言い表せないことの苦悩を実感している。」(p.9)

・「ここで提案したいのは、したがって、ソーシャルワーカーのなかには基本的な部分と、いわばその上に築かれるべき専門的な部分があり、前者はかなり理論的に異なるワーカー間で共通であるとの認識に基づいて、1)基本的部分の教育を徹底して行い、ソーシャルワークの訓練を受けたものが行う面接や集団活動などの特性が、他からも明確に認識できるような状況をつくりだすこと、2)これまでどちらかというと主訴に基づいた受容的面接のみが前面に出ることが多かったが(そしてそれはそのような理論の強い影響下の産物であるのだが)、本人がそれと自覚していないニーズの認識につながるようなアセスメント面接や、積極的な介入などの諸技法とその必要性、その理論的根拠等を実践のなかに浸透させること、を当面の課題としてとりあげることができる」(p.10)

【考えたこと】
・以前読んだ時にはあまり印象に残らなかった。しかし、今回は先月のISTTの研修で福山先生の解説があったからか、事例ごとに適切な理論を用いて(時に統合して)援助を行うという文脈を何となくイメージを持って読むことができたように思う。但し、時間の経過と共に忘れてしまうかもしれないが。もっと早くに福山先生の研修を受けておけばよかったと思う。本論文では、理論・アプローチ・技術をソーシャルワーカーである私の中で統合して用いられるようになるための、いくつかの論点を解説している。もう少し詳しくこれらの論点について尋ねたいが、時すでに遅し。窪田先生の教えは、これまでに書かれたものから自ら学ぶしかない。

【関連】
・「窪田暁子先生 出版記念イベント 『実践と理論をつなぐ言葉』のご報告」
http://kubota-syuppankinen-event.jimdo.com/
・稲沢公一「雑筆蔵」
http://gomukh85.jimdo.com/
→「日本における援助関係論の系譜と窪田援助論」:窪田暁子先生出版記念イベントにおけるシンポジウム資料スライド(2013.8.10開催)
・福山和女「書評 窪田暁子著 福祉援助の臨床:共感する他者として」『社会福祉学』第54巻第2号,2013,pp.114-116
・窪田暁子「書評りぷらい 志したのは簡明な提示と十分な習熟への期待」『社会福祉学』第54巻第2号,2013,pp.117-119
・窪田暁子「アルコール依存者の回復をエンパワーメントの視点からみる」『リーディングス日本の社会福祉4 ソーシャルワークとはなにか』日本図書センター,2011,pp.346-361