「生活保護受給者も借りやすく 家主の団体が物件紹介窓口」『朝日新聞』2015年7月25日

この記事の詳細が知りたいと思っていましたが、みわよしこさんの連載でようやく知ることができました。これによって、簡易宿泊所からアパートへの移行が進めばと期待します。連載記事によると、 「ガイドブックを作ったことを発表した直後から、全国の福祉事務所から、『どうすればお部屋を紹介してもらえますか』という問い合わせをいただいています。今年10月からは、『生活保護 母子』というふうに検索すると大家さんの了解を得た物件が表示される検索サイトを、自治体で使ってもらえるように準備しています」(全国賃貸住宅経営者協会連合会・本部事務局長の稲本昭ニさん)とのこと。他の住民との兼ね合いから必ずしもオープンなサイトではなく、ログインIDとパスワードで専用サイトに入る形でしょうか。

入院して来られたホームレスやネットカフェ難民の退院支援に関わるMSWにとっても重要な取り組みだと思いました。MSWにも同サイトが活用できると良いですね。

全国賃貸住宅経営者協会連合会のHPには、「【家主さん向け】生活保護受給者ガイドブック」が掲載されおり、家賃滞納・緊急連絡先/保証人・孤独死/遺品整理といった家主が心配することがらについて、厚生労働省国土交通省内閣府支援のもとで対応策を掲載。一番印象的だったのは「諸費用は、住宅扶助費から支給された礼金等から賄うことも可能です。」との文言でした。確かに、この方法であれば、受給者自身が毎月の保護費から捻出するのではなく、家主の不安も解消されるので有益だと思います。

但し、以下3点が気になります。

・アパートに移行した後の生活サポートがなければ日常生活が困難な方がいる。
・既にアパート入居している方にとっても、家主さんが心配していることは自分のこととして切実であるがそれらについては、別途助成がないため、サポート制度の利用はないままか、もしくは本人が僅かな生活費から費用をねん出して身元保証団体を付けざるを得ない。
身元保証団体の質の担保を行う公的組織がないため、サポート内容の範囲や責任性・金額に大きくバラつきがある。(新たな貧困ビジネスの温床…)


生活保護受給者も借りやすく 家主の団体が物件紹介窓口」『朝日新聞』2015年7月25日
http://digital.asahi.com/articles/ASH7C45WWH7CUTIL00P.html

賃貸住宅の家主がつくる民間団体が、生活保護を受ける人が入居できる空き物件を全国的に集約し、紹介する窓口を作ることを決めた。家賃滞納などを懸念する家主が契約を結ばず、簡易宿泊所で暮らす人がいるためだ。川崎市簡易宿泊所の火災を受けた取り組みで、約20万件の情報提供をめざす。
 生活保護を受給する東京都の80代男性はアパートが取り壊されることになり、入居先探しに不動産店を回ったが、高齢を理由に10回ほど断られた。やっと見つけた物件の連帯保証人確約書には、孤独死を想定し、「部屋の原状回復に莫大(ばくだい)な費用が掛かります」と記されていた。
 連帯保証人は認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」が引き受けた。稲葉剛理事(46)は「この契約内容なら一般の人は(連帯保証人になることを)躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない。高齢の生活保護受給者のアパート入居のハードルは年々上がっている」と話す。
 生活保護受給者が賃貸住宅に入居しようとしても、家主は①家賃の滞納②緊急連絡先や保証人の確保③孤独死した場合のリフォーム費の負担、への懸念から契約しない場合がある。受給者が自治体に相談しても「特定の業者に肩入れできない」と斡旋(あっせん)されないことが大半だという。
 稲葉理事は「自治体から簡易宿泊所をほのめかされ、そのまま暮らす場合もある」と話す。厚生労働省によると、簡易宿泊所は1室の床面積が平均6平方メートルで、健康で文化的に暮らすため必要とする最低居住面積水準(25平方メートル)を下回る。耐火性に劣る場合もあり、5月に起きた川崎市簡易宿泊所火災では10人が死亡した。
 こうした状況から、全国約1万6千の家主が加盟する「全国賃貸住宅経営者協会連合会」は、生活保護受給者が入居できる空き物件を紹介することを決めた。17日から家主に協力を呼びかけている。家賃滞納を避けるため、生活保護費から家賃を家主に直接支払う「代理納付制度」があることも伝える。
 当面は42万の空き物件を登録する連合会のデータベースを活用し、最終的に家主の意向を反映した20万件の情報提供を目指す。連合会の川口雄一郎会長(62)は「空き室を解消し、家賃収入を確保するメリットが家主にもある」と語る。
 国土交通省厚労省自治体に対し、生活保護受給者が相談に来たら連合会への問い合わせを勧める通知を出す。生活保護を受けるのは4月時点で162万924世帯(216万3414人)で、約半数が高齢者世帯。国交省は「全国レベルで生活保護受給者に物件を紹介する仕組みは初めて」としている。
 「77歳、女性、単身者、(保証人)無、下高井戸、1K、家賃5万3千円」。東京都杉並区の約600の不動産店には月2回、区内でアパートを探す高齢者数人のリストがファクスで届く。都宅地建物取引業協会の区支部長で、地元で不動産店を営む宮嶋三世さん(65)は「約半数が希望に合った物件を見つけ入居する」と話す。
 区は1996年から支部と協力し、生活保護受給者を含めた高齢者にアパートを斡旋(あっせん)する。最近5年間で328世帯が入居した。区住宅課の明禮(みょうれい)輝人課長代理は「家主の不安を和らげる仕組みが重要」と言う。
 保証人がいない場合、区が協定を結ぶ保証会社を利用し、入居後はNPOが週1回電話をかけて様子を確認する。大半の費用は区が年約500万円で負担する。宮嶋さんは「制度が定着したのは家主に安心感を与えたため」と話す。
 連合会の取り組みについて、反貧困ネットワークあいちの藤井克彦・共同代表(72)は「住居探しの選択肢が増える。どう活用させるかが大切」と話す。(峯俊一平)