「貧困と生活保護(11) 働いていても、年金があっても、保護を利用できる」『原記者の「医療・福祉のツボ」』2015年10月2日

MSWにとって、関係の深い記事だと思います。クライエントだけでなく、MSW自身も泣き寝入りしないよう、生活保護法についてしっかりと把握しておく必要があります。


「貧困と生活保護(11) 働いていても、年金があっても、保護を利用できる」『原記者の「医療・福祉のツボ」』2015年10月2日
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=124477

重要な個所を、以下引用します。

第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

第3項は、急迫した状況のときは、資産の調査や親族の調査などを後回しにして、とりあえず保護できるという条項です。たとえば、一文なしで倒れていて救急車で入院した人には生活保護制度で医療を受けてもらい、あとから資産を持っていたことがわかれば、返還してもらいます。

 「利用できる資産の活用」「稼働能力の活用」は、要件なので、少なくとも生活保護を受けてからは、本人が活用に努力する義務があります。
 「扶養」「他法他施策の活用」は、優先するというだけで、保護を受けるときの前提条件ではありません。優先するというのは「現実に存在していたら、そちらを先に生活費にあてる」という意味です。本人が親族に扶養を求め、ほかの社会制度を利用してからでないと保護を受けられないのではありません。それはむしろ、福祉事務所のケースワーカーが努力したり、助言して手伝ったりするべきことです。
 「保護を申請する前に、親族に扶養してもらうよう頼んでみて」と言う福祉事務所の窓口担当者もいるようですが、間違った運用です。「優先」についての認識が不足しています。

とくに資産の活用、稼働能力の活用、扶養の優先をめぐっては、生活困窮者の支援団体や法律家と、福祉行政の間でしばしばせめぎ合いが生じています。審査請求や訴訟の結果、当初の行政判断がひっくり返るケースも少なくありません。