平成28年度診療報酬改定と社会福祉士(その1)

2016年1月27日、中央社会保険医療協議会 総会(第325回)が開催され、平成28年度診療報酬個別改定項目についてが公表された。

社会福祉士について記載のある項目は、以下の通り。

○退院支援加算1

イ一般病棟入院基本料等の場合
○点(退院時1回)
療養病棟入院基本料等の場合
○点(退院時1回)

[施設基準]
現行の退院調整加算の施設基準に加え、以下の基準を満たしていること。
(1) 退院支援・地域連携業務に専従する看護師又は社会福祉士が、当該加算の算定対象となっている各病棟に専任で配置されていること。ただし、退院支援業務について、最大2病棟まで併任することが可能。
(2)○以上の保険医療機関又は介護サービス事業所等と転院・退院体制についてあらかじめ協議し、連携を図っていること。
(3) 連携している保険医療機関又は介護サービス事業所等の職員と当該保険医療機関の退院支援・地域連携職員が、○回/年以上の頻度で面会し、転院・退院体制について情報の共有等を行っていること。
(4) 当該保険医療機関における介護支援連携指導料の算定回数が、当該加算の算定対象病床100床当たり年間○回以上(療養病棟等については○回以上)であること。
(5) 病棟の廊下等の見やすい場所に、患者及び家族から分かりやすいように、病棟に専任の退院支援職員及びその担当業務を掲示していること。

コメント:話題の病棟配置への評価。必ずしも退院調整部門に勤務していなければならないとの表記はない。個別連携から組織同士の協議・連携・面会による情報共有が条件となる。

認知症ケア加算1
[施設基準]
認知症ケア加算1
(1) 保険医療機関内に、①~③により構成される認知症ケアに係るチームが設置されている。
認知症患者の診療について十分な経験と知識のある専任の常勤医師
認知症患者の看護に従事した経験を有し適切な研修を修了した専任の常勤看護師
認知症患者の退院調整の経験のある専任の常勤社会福祉士又は常勤精神保健福祉士
(2)(1)のチームは、身体的拘束の実施基準を含めた認知症ケアに関する手順書を作成し、保険医療機関内に配布し活用する。

コメント:一般病床・療養病床・回復期・地域包括ケア病棟でも算定可能。但し、加算1の基準を算定するにはややハードルが高い印象を受けるため算定する医療機関は一部に限られるか。社会福祉士としては、チームへの加入要請に対応できるよう、準備しておく必要がある。また、退院調整の経験に留まらず、職能団体や養成校等においては看護師同様に適切な研修が提供できるような体制作りが求められる。

○回復期リハビリテーション病棟入院料】注5 体制強化加算

※省略

【議論】

日本医療社会福祉協会は、『平成28年度診療報酬改定に関わる要望書』において、地域包括ケア病棟・療養病棟・救急医療管理加算を算定する場合に、社会福祉士の配置を求めた。要望そのものがストレートに認められることは無かったが、退院支援に対する病棟配置への評価により一般病床と療養病床については社会福祉士配置の人件費を一部裏付ける形となりうる。但し、配置そのものへの加算ではなくあくまで個別行為への出来高評価である。興味深いのは、関係機関とのメゾレベルでの連携が求められることだ。医療ソーシャルワーカーとして、自らのポジションを従来の「個別連携の顔」から「所属機関の連携代表としての顔」へ意識的に上げることが必要となる。それ自体は、重要なことだと思う。

【番外】
疑義解釈(平成20年)(平成22年)・(平成24年)では、従来「退院調整に関する5年間以上の経験を有するものについては、当分の間、当該加算の要件である『看護師又は社会福祉士』として認めて差し支えない。」との見解であった。しかし、平成26年度の診療報酬改定では同様の疑義解釈は確認できなかった。そのため、素直に受け止めれば当面の間(6年間)が終わり、社会福祉士資格を有していない医療ソーシャルワーカーでは加算が算定できないと解釈するのが妥当であろう。どなたか、上記見解が平成26年度診療報酬改定でも継続しているという公式文章をご存知の方は教えて頂きたい。

【追記】(2016.9.6)
(問)疑義解釈について(その1)」(平成22年3月29日)問72「退院調整に関する5年以上の経験を有する者については、当分の間、退院調整加算の要件である「看護師又は社会福祉士」として認めて差し支えない」とされているが、平成28年度改定後も認められるのか。
(回答)認められる
出典:日本医療社会福祉協会調査研究部『平成28年度診療報酬改定疑義解釈について-②平成28年6月10日