新刊案内

牧田満知子ほか編『現場から福祉の課題を考える ソーシャル・キャピタルを活かした社会的孤立への支援:ソーシャルワーク実践を通して』ミネルヴァ書房,2017年3月10日

〇内容
子育て世帯、障害者、若者の雇用、高齢者、生活困窮者など、12の領域で抱える課題の具体的な事例をもとに、
その解決方法を探る

高度経済成長に伴う都市部への人口集中により、様々な技術革新がもたらされる一方で、核家族化が進み、
地域の共同体では解体が進むなど、人々の孤立化が促進されてきた。このような中で、高齢者の孤独死
若い親による児童虐待、壮年層の自殺など、他者との関わりを十分にもてないことが原因だと考えられる
福祉的問題が浮き彫りになってきた。そこで本書では、社会福祉の全領域の中から12の課題を取り上げ、
具体的な事例をもとに問題点を分析し、ソーシャル・キャピタルの視点からその解決方法を探る。

[ここがポイント]
ソーシャル・キャピタルの視点から社会福祉の各分野の問題を分析する。
現代社会の問題である「社会的孤立」への提言を行う。

〇目次
第I部 現代における社会的孤立
第1章 社会的孤立の歴史
第2章 ソーシャル・キャピタルの考え方と社会的孤立
第II部 社会的孤立の現状と課題
第3章 子育てをする保護者の孤立――子育て中の誰もが利用できる支援、“寄り添い・伴走型"支援を
第4章 児童生徒の孤立――声をすくい上げるソーシャルサポート・ネットワーク
第5章 学生の孤立――社会的自立を支える多様な支援
第6章 若者を取り巻く雇用環境と社会的孤立――非熟練・低所得・無職の若者の孤立と就労支援
第7章 高齢者の孤立――孤独死を出さない見守りネットワーク
第8章 介護者の孤立――家族介護者の孤立を防ぐ地域コミュニティ支援
第9章 障害者の孤立――障害当事者の孤立と社会的自立支援
第10章 難病ある人々の孤立――難病を取り巻く社会の困難性とその支援
第11章 セルフ・ネグレクトによる孤立――ごみ屋敷問題における援助「拒否」への対応と取り組みから
第12章 生活困窮者の孤立――日雇労働者の社会的孤立と支援策
第13章 矯正施設退所者と孤立――再犯を防ぐ社会的支援
第14章 被災地の人々の孤立――分断された絆を再び紡ぐ支援
第III部 社会的孤立に対する社会福祉の挑戦
第15章 個人情報の保護と共有のジレンマ
第16章 地域のつながりと連携、協働による孤立の防止に向けて
第17章 ソーシャル・キャピタルソーシャルワークの共生

〇コメント
ソーシャルキャピタルソーシャルワークを繋ぐ本の登場。但し、章立てタイトルでソーシャルワークについて登場するのは最後の章のみ?社会的孤立という視点から、幅広く論じている。


広井良典編『福祉の哲学とは何か:ポスト成長時代の幸福・価値・社会構想』ミネルヴァ書房,2017年3月20日


〇内容
分断を越えて人はつながりうるか コミュニティと公共性を醸成する「ポジティブな営み」として福祉を捉え、その哲学を学際的に探究。 経済成長の時代が終焉しつつある現在、幸福をめぐる内的・精神的充足を重視し、社会保障の「分配」の原理を
律する「福祉の哲学」が求められている。「福祉の哲学」は、個と個の関係性と個の土台となるコミュニティ、
さらには、その根底にある「自然」「生命」までも射程に収める必要が生じるテーマである。本書はこの点を
踏まえ、宗教学、科学思想等を援用しつつ、人類史上三度目の「定常期」に入った現代社会の指針となる
「福祉の哲学」とはどのようなものかについて、ローカルなコミュニティを基点として考察したものである。

[ここがポイント]
◎ 「生命」「自然」等に関する科学思想の知見を取り入れた広がりと深さを持った内容。
◎ 地域コミュニティを基点としつつも、地球規模、人類の幸福も視野に入れた考察を展開。

〇目次
第1章 なぜいま福祉の哲学か(広井良典)
第2章 福祉哲学の新しい公共的ビジョン――コミュニタリアニズム的正義論とポジティブ国家(小林正弥)
第3章 福祉と「宗教の公共的役割」(稲垣久和)
第4章 「生命」と日本の福祉思想(松葉ひろ美)

〇コメント
広井先生は、千葉大から2016年より京都大学こころの未来研究センターに所属。


田中拓道『福祉政治史: 格差に抗するデモクラシー』勁草書房,2017年2月14日

〇内容
20世紀の先進国に現れた福祉国家は21世紀に生き残れるのか。福祉国家の何が持続し、何が変化しているのか。欧米(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)と日本の福祉国家の形成・変容過程を、約100年にわたるタイムスパンのなかに位置づけ、歴史学政治学だけでなく比較政治経済学の知見も組み合わせて考察し、将来像を展望する。

〇目次
福祉国家をどうとらえるか
第1部 戦後レジームの形成と分岐(福祉国家の前史
自由主義ジームの形成―イギリス、アメリ
保守主義ジームの形成―フランス、ドイツ
半周辺国の戦後レジームスウェーデン、日本)
第2部 戦後レジームの再編(福祉国家再編の政治
新自由主義的改革―アメリカ、イギリス
社会民主主義の刷新―スウェーデン
保守主義ジームの分岐―ドイツ、フランス
分断された社会―日本)
第3部 課題と展望(グローバル化と不平等
新しいリスクへの対応)
日本の選択肢