外来相談への診療報酬が付くか

2017年12月8日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第377回)では、「個別事項(その7)について」の「7.外来における相談・連携」(スライド100-113)が議論された。

論点案としては、以下の通り。

「入院患者については、早期に退院して社会復帰できるようにする観点から、様々な相談支援が診療報酬で評価されている。他方、外来患者については、社会生活を送りながら治療を続けているため、治療継続のために必要とされる支援や要望が多岐にわたっており、様々な機関との連携が必要になる一方、医療保険以外の公的制度等が支援を担うべきサービス内容も多い。
このような実態を踏まえ、外来患者への相談支援について、他の公的サービスとの整合性等も踏まえ、診療報酬での対応の在り方をどのように考えるか。」

昨年末に「平成 30 年度 診療報酬改定に向けた検討項目」にて、「(2) 患者の価値中心の安心・安全で質の高い医療の実現」の中に、「患者や家族等への情報提供や相談支援」という項目が提示され、注目をしていた。MSWにとって、恐らく今回の診療報酬改定の目玉項目となるであろう。

平成24年のデータでやや古いが、「患者の相談窓口の対応者をみると、外来患者は看護職員、入院患者は社会福祉士が最も多い。」となっている。退院支援(あるいは後方連携)へのマンパワーとしてMSWが2000年前後から地域連携室に雇用され始めた比較的歴史の浅いMSWの場合、入院患者の相談が主であり、外来の相談にまでは手が回らないということも少なくない。

一方、昭和の時代からMSWが雇用されている場合は、まだ退院支援が現在程主業務なっておらず、外来も含め心理的・社会的問題への介入を経験している世代が存在する。

今回の資料で一番驚いたのは、「外来患者の相談件数推移」(スライド105)「外来患者の新規の相談内容」(スライド106)の資料出典が日本医療社会福祉協会であったことだ。当院も調査に協力したが、臨床→職能団体→中医協と政策形成に寄与できることは嬉しく思うし、また日常的な日本医療社会福祉協会のロビー活動の賜物であろう。私の知る限り、中医協総会の資料に日本医療社会福祉協会の資料が採用されたのは初めてではないだろうか。

さて、今回の議論を踏まえて外来相談業務がどのようなルールで診療報酬算定されることになるか。患者サポート体制充実加算は、入院患者を対象に初日に限り70点を算定することができる。相談にのったことで評価されるのではなく、相談体制があることに対する評価だ。700床規模の病院で平均100名の新規入院患者、平均稼働率が98.8%だったとすると、100名×700円×365日×98.8%=約2,500万円の収入となる。使用者側が払う各種社会保険料・退職金積立・福利厚生費を含めた人件費を年700万円と仮定すると、およそ3.5名分の人件費相当である。病床規模にもよるが、多くのMSW部門は退院支援加算以外に本診療報酬によって、雇用の報酬的裏付けがなされていることも少なくない。但し、この報酬算定を契機に苦情相談が追加業務とになったMSW部門もある。状況は複雑だ。

社会福祉士の活躍阻害要因として名称独占に留まっており業務独占ではないからとの論拠を展開する主張が散見されるが、業務独占(第三十,三十一条)の規定がある看護師にしても、医師・歯科医師が行う場合は当然だが許される。他にも、理学療法士介護福祉士による吸痰や臨床検査技師による採血など具体的な項目で行ってもよいことがある。そうなると業務独占という言葉の意味も実態は多義的だ。理学療法士作業療法士言語聴覚士から学ぶことは、業務独占でなくともその業務の専門性から実質的に業務独占となっていることがある。その鍵となるのが、診療報酬における施設基準や算定要件だ。特に施設基準はその職種が配置されていないと算定できないという点で雇用にも直結するため重要となる。

そのため、外来相談については各相談に対して個別に点数をつけるか、体制に対して点数をつけるか、またどのような算定要件となるか注目する必要がある。ポイントは、雇用の根拠ともなる施設基準において社会福祉士(専従あるいは専任)が掲載されるかどうかだ。