平成30年度 診療報酬改定(入退院支援関連)

2017年12月6日の中医協総会では、「入院医療(その8)」の中で「入退院支援」(スライド64-118)が議論された。

4-1) 早期からの退院支援では、以下の議題が提示された。

•退院支援加算の算定にあたっては、入院早期から退院困難な要因に応じて患者を抽出して支援が行われているが、要件に示していないものの、虐待や生活困窮といった、早期から支援が必要な患者が入院している。
•退院支援にあたっては、福祉サービスなど入院前の支援状況を早期に把握し、関係機関等との連携が重要であるが、要介護被保険者であっても介護支援専門員との情報のやり取りが行われていないケースがみられる。

「退院困難な要因「その他の患者の状況から判断してアからクまで準ずると認められる場合」の具体的状態」として、次の4つが挙げられている(スライド68)。

•家族からの虐待や家族問題があり支援が必要な状態
•未婚等により育児のサポート体制がないため、退院後の養育支援が必要な状態
•生活困窮による無保険、支払い困難な場合
•保険未加入者であり市町村との連携が必要な場合

従来の身体的理由ではなく、MSWが危機介入として入院当日にかなりのソーシャルワーク投入量を要して支援を行っている社会的理由の例である。これらは、従来の退院支援加算について、単に要因例の追加に留まるのか、「加算の加算」となるのか注目する必要がある。

4-2) 退院に向けた関係機関の連携 ア)地域連携診療計画の活用では、以下の課題が提示された。

•地域連携診療計画を利用していた患者の割合は、回復期リハビリテーション病棟が他の病棟と比較して多い。
•地域連携診療計画を利用した患者の対象疾患は、「脳卒中」が回復期リハビリテーション病棟で約8割と多く、「大腿骨頸部骨折」は7対1一般病棟、地域包括ケア病棟で約3割の患者で利用していた。
•退院支援加算の地域連携診療計画加算は、算定できる病棟が、退院支援加算1又は3の届出病棟となっており、退院支援加算2を届け出ている病棟の患者は算定できない。地域連携診療計画加算の算定件数は、平成28年度診療報酬改定前の退院調整加算の地域連携計画加算及び地域連携診療計画管理料の算定件数に比べ、減少している。

平成28年度診療報酬改定で、退院支援加算1を算定していないと地域連携計画加算(旧:地域連携診療計画管理料)が算定できないことになり、算定を諦めた回復期リハビリテーション病院は少なくなかった。今回、退院支援加算2の算定を行っている回復期リハビリテーション病院についても地域連携計画加算が算定できるようになる方向性が示された形だ。

イ)退院時の共同指導では、以下の課題が提示された。

•退院時の在宅で療養を担う医療機関と入院医療機関との共同指導について、その実施は、保険医・看護職員とで行った場合に限定している。また、保険医等の3者以上の関係者が集まって行う場合、介護系サービスでは介護支援専門員のみが算定可能となっている。
•退院時共同指導料1・2の算定回数は、1・2ともに横ばい又は微増。
•介護支援専門員が退院時の医療機関との連携について、退院時のカンファレンスが「医療機関の都合に合わせた訪問日程の調整が難しい」という回答が多い。
•在宅支援診療所が、退院時共同指導等の退院前のカンファレンスに参加する場合、多くは在宅支援診療所に所属する社会福祉士も参加している。

ここでも、日本医療社会福祉協会の調査結果が使用されている(スライド80)。

日本医療社会福祉協会としては『平成30年度診療報酬改定に関わる要望書』において、「在宅療養支援診療所の医療ソーシャルワーカーの退院時共同指導料における評価について」と要望していたが、そのままストレートに要望が通りそうだ。但し、入院医療を担う医療機関側の社会福祉士が退院支援の一環として退院前カンファレンスを招集することが多いが、今回の議論ではその点はオミットされてしまっている。あくまでも受け入れ医療機関側の社会福祉士についての評価が焦点となっているのが残念だ。

4-3) 小児への退院支援では、以下の課題が提示された。

•小児やその家族には、退院後、学校や自治体などの様々な機関が関わるが、退院後の療養生活の支援やサービスの調整を担う機関が定まっておらず、退院にあたり、医療機関が多くの関係機関との調整を求められる。
•現行の退院支援加算1・2の対象者の状態は、主に成人・高齢者向きの内容となっており、小児を対象とした退院支援加算3は、新生児特定集中治療室に入室した小児が対象となっているため、小児病棟に入院し、退院支援が必要なケースは、退院支援加算の対象とならない。
•小児を主として診療している病院において連携する関係機関は、訪問看護ステーションが多いが、退院支援加算1の要件に「介護支援連携指導料の算定回数」があるため、介護支援専門員との関わりのない小児病院では、退院支援加算1を届け出ることができない。

ここでも、日本医療社会福祉協会の調査結果が使用されている(スライド104)。日本医療社会福祉協会としては『平成30年度診療報酬改定に関わる要望書』において、「医療的ケア児
への支援に対する『生活相談管理料』の新設」を要望したが、退院支援加算の文脈に読み替えられる形となっている。外来での相談については、別途議論されているためそちらで吸収されることになるだろうか。

2017年12月8日の中医協総会では、「入院医療(その9)」の中で「入退院支援(その2)」(スライド23-32)が議論された。

提示された課題は、以下の通り(スライド24)。

•従来の退院支援については、入院前の外来・在宅~入院中~退院後の外来・在宅まで、切れ目のない支援が重要であることから、「入退院支援」との呼称に改め概念図を整理している。
•入院前の支援の例として、入院生活の説明、持参薬の確認、入院前に利用していたサービス等の確認などが想定される。
•退院支援・連携に関する評価の算定回数は、増加している。
•外来通院中の患者が自院に入院する際に連携を行う仕組みについて、決められた部署や窓口があるのは約6割であり、部署や窓口がない場合は、主に看護職員が調整を担っている。
•病床規模が100床未満の病院の場合、退院支援部門の設置が約50%である。病床規模が大きくなるほど、退院支援部門の職員配置の人数が多い。


それに対して、論点として以下の案が示されている(スライド32)。

○ 現行の退院支援加算は、入院早期から退院後まで切れ目のない支援を評価しているとの趣旨を踏まえ、加算の名称を「入退院支援加算」に見直してはどうか。
○ 入院医療と外来医療の連携、地域における医療機関間の連携等を推進する観点から、外来における相談・連携担当者が、入院が決まっている患者に対して、入院前から様々な支援を行う取り組みについて、評価を検討してはどうか。
また、病床規模別の担当者の配置状況を踏まえ、中小病院を主な対象として、評価を検
討してはどうか。


退院支援加算の入退院支援加算への名称変更。入退院支援部門での入院から退院までの一連の業務の評価はイメージが湧く。しかし、「入退院支援について中小病院を主な対象として、評価を検討」というのが具体的に何を意味するのか現時点ではイメージが湧きかねる。

12/6、12/8の中医協総会は、日本医療社会福祉協会の提出資料が3箇所で活用されたことが印象に残った。