公立福生病院の一連の報道を受けて

公立福生病院の人工透析治療中止を巡る報道において、先週2つの注目した記事がある。

「入院後に透析中止撤回 死亡女性意向 公立福生病院も把握」『東京新聞』2019年3月10日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201903/CK2019031002000122.html

「透析指針、都に逸脱認める 公立福生病院」『毎日新聞』2019年3月16日
https://mainichi.jp/articles/20190315/k00/00m/040/301000c

東京新聞の記事が出るまでは、主治医が単独で話を進めたという印象を持っていたが、

女性は中止に同意する文書に署名。その場には夫が同席していた。病院側は担当医師の他、病院のメディカルソーシャルワーカー、看護師がいた。

と多職種で対応していたことが分かった。そこにはMSWがいたという。

次に、毎日新聞の記事では、東京都が公立福生病院に立ち入り検査をした際、

都は再発防止策として、透析治療とは関係のない医師や、看護師、医療ソーシャルワーカーらでつくる「臨床倫理チーム」によるチェック態勢作りを指導。

ここでも、MSWを臨床倫理チームに加えるよう指導している。

退院支援がMSWの中心業務となっている中、いま改めて医療機関における意思決定・権利擁護を担う職種としてMSWが期待されていることに興味を持った。

今日、大規模病院では臨床倫理チームを設置するところが散見される。この中で、MSWは実際にどのような役割を負って活動できているのか。

お互いの実践を知る必要があるし、職能団体・関連学会においても業務指針・倫理綱領を基礎として、より実践的な手引き・ガイドライン・マニュアルといった標準化したツールを開発する必要がある。さらには普及啓発のための講習会の全国展開が必要であろう。そうでなければ、いつまでたっても、精神論・経験則のみでMSW個人が行動せざるを得なくなる。ありうる展開は、免罪符・アリバイとして臨床倫理チームにMSWを置いているだけで、実際には発言も行動も影響力もないお飾り状態になることだ。

ここでもまた、MSWの組織力(単体の医療機関という意味ではない)が問われている。

■関連
日本透析医学会『維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言』2014