厚生労働省「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」より『これまでの議論を踏まえた検討課題と論点の整理』2021年3月2日

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2021年3月2日に、厚生労働省生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」より『これまでの議論を踏まえた検討課題と論点の整理』が公表されました。論点の整理なので、「水準均衡方式を変更します」という内容ではありません。大阪の裁判判決直後ということもあり、いやおうなしに注目が集まります。

本検討会の設置趣旨は、次の通りです(赤字は管理者による)。

生活保護基準のうち生活扶助基準については、社会保障審議会に設置している生活保護基準部会において、5年に1度実施される全国消費実態調査の特別集計データ等を用いて、専門的かつ客観的見地から、定期的に評価・検証を行っている。
○ 平成29年の検証における生活扶助基準の検証手法については、同年12月の報告書において、「これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮した透明性の高い一つの妥当な手法である」と評価されている一方、
・ 「一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることからも、これ以上下回ってはならないという水準の設定について考える必要がある。
・ 「最低限度の生活を送るために必要な水準とは何か、本質的な議論を行った上で、単に消費の実態に合わせるとの考え方によらず、理論的根拠に基づいた複雑ではない検証方法を開発することが求められる。」
・ 「新たな検証方法の開発に、早急かつ不断に取り組むために、データの収集・分析や新たな検証手法の検討を継続的に行う体制を厚生労働省として整備する必要があり、そのために、年次計画を立てて計画的かつ不断に検討を進めていくことを強く求めたい。」 などのご指摘を受けたことを踏まえて、次回の基準検証に向けた当面の検討の場として、社会・援護局長の下での検討会を開催するものとする。
出典:『生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会 開催要綱』2019年3月18日

なお、親会となる厚生労働省社会保障審議会生活保護基準部会」では、「生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査 等を基に5年に一度の頻度で検証を行う」こととしています。ここでの確認事項と、厚生労働省の実際の基準決定に乖離があり、現在大きな社会問題になっています。

以下、関連するページです。

みわよしこ「結論ありきで生活保護削減を決めた厚労省の非情」『DIAMOND online』2015年1月30日
https://diamond.jp/articles/-/65952
→部会長代理岩田正美氏「あとで、とんでもないことが起こったら、私たちは責任を負うことができません」「生命にかかわる支出です。安全に、慎重に検討してほしいです」という言葉は、この記事を読んだ当時の記憶としてはっきりと覚えています。委員会の場で、これ程までに困窮者の生活への影響に想像力を働かせて、気持ちを込めて話されるのだなと、強く印象に残っています。私にとって、いつまでも憧れの存在であり、決して届くことの叶わないロールモデルです。

・緊急院内学習会前基準部会部会長代理が語る「生活保護基準の設定はいかにあるべきか」2018年6月7日
http://665257b062be733.lolipop.jp/180426leaf.pdf
→桜井氏はこの時は、名市大在籍。

みわよしこ「『生活保護費引き下げ』撤回を訴え国と戦う、政府審議会元トップの意地」『DIAMOND online』2019年10月12日
https://diamond.jp/articles/-/217389
名古屋地裁での岩田氏の証人尋問の一部を知ることができます。

・『前代未聞の生活保護基準引き下げその闘いの記録ー』2020年
https://pro.form-mailer.jp/lp/4a422030199469
名古屋地裁での証人尋問の記録。日本福祉大学山田壮志郎さんも証人として出廷されている。

・「生活保護費引き下げは「国民感情を踏まえたもの」。違憲との訴えは認められず」『Buzz feed News』2020年6月25日
https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/inochi-no-toride-nagoya
→全国集団訴訟の背景から名古屋地裁判決までの経過が分かる。