中日新聞<身元保証を考える おひとりさま社会のなかで>

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2021月1月30日の記事の続報。

中日新聞が<身元保証を考える おひとりさま社会のなかで>という記事を2021年3月2日より配信しています。中日新聞のWeb記事よりも東京新聞のWeb記事の方が読みやすいのはなぜでしょう。

「<身元保証を考える おひとりさま社会のなかで> (上)代行契約のトラブル 監督官庁なし『法整備を』」『東京新聞
2021年3月2日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/88972

「<身元保証を考える おひとりさま社会のなかで> (中)入院・入所の『条件』 リスク管理、業者に依存」『東京新聞』2021年3月3日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/89183

「<身元保証を考える おひとりさま社会のなかで> (下)地域で支える 脱「代行」 進む指針作り」『東京新聞』2021年3月4日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/89372?rct=living

中日新聞の安藤明夫、佐橋大、四方さつき記者による力作です。

<中>では、元MSWである同朋大学林講師がコメントをしています。
<下>では、身元保証問題に対するMSWによるメゾレベルソーシャルワークの好例が紹介されています。MSWの実践はなかなかメディアに登場しないので貴重です。MSW個人ではなく、多職種・所属機関や地域の関係機関の協力を得ることで初めて実現できると思います。そういった意味では、所属機関の「制約」に注目するばかりでなく活用しうる「組織力」にも注目する必要があると思いました。

■3つの記事の中で印象に残った言葉
「現状は、契約の自由という名の下での無法状態」。熊田さんは身元保証代行に監督官庁がないことを問題視し、消費者保護の法整備の必要を訴える。「身元保証という名称は全権委任のイメージがあり、改めるべきだ」とも主張。「病院や施設側がその高齢者に必要な生活支援サービスを分類し、外部の事業者に頼らざるをえない部分があれば、必要な範囲に限定するなど慎重に選んで紹介する形が望ましい」と提言する。

「入所者が入院、手術をする際など、実際はほとんどの場合、身元保証が必要だった」。愛知県安城市の神谷学市長(62)は二月二十五日の定例会見で、「えんご会訴訟」の判決で指摘された「市とえんご会の癒着」について釈明した。

「医療ソーシャルワーカーが理念的に『身元保証は要らない』と言っても、病院経営の意向には従わざるを得ない」

安城市の幹部の一人は自戒を込めて語る。「財産に絡む契約で、慎重にあるべきだ。えんご会も、過去に遺族とトラブルになったことがあるのなら、その時点でしっかりと対応すべきだった。そういう点では、市にも甘さがあったのかもしれない」

尾張北部地域の中核病院である江南厚生病院(同県江南市)は、身元保証のない人の入院などに対応するガイドライン作りを進めている。地域の十病院で足並みをそろえ、六月からの取り組み開始を目指す。
患者が費用を支払わない場合は、第三者が年金を管理し、本人のために使えるように成年後見制度を利用。死亡時の遺体引き取りは行政と事前に協議して葬儀業者を決め、休日夜間でも対応できるようにする。

 手術、延命治療などの際の「医療同意」には、人生の最終段階まで患者の意思決定を支援する「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)が大事だ。


■コメント
身元保証問題は社会の側も関心があるだけにMSWにとってメゾ・マクロレベルでソーシャルワークができるかどうかの試金石だと仙台での講演で触れました。マクロにみれば法整備と監査・承認・指示命令権のある監督省庁・自治体担当部門の明確化、メゾでは病院・施設などでの身元保証人(連帯保証人)・キーパーソンの理解の推進と経営上の困りごとの解消(退院支援・金銭管理・死亡時の遺体引き取り・医療同意)、ミクロではMSWがクライエント・所属機関双方のニーズを整理し適切に対応できるよう支援することが必要です。身元保証サービスを否定しているのではありません。クライエントが主体的に希望し、複数事業所の担当者から説明を受け、納得の上で、具体的な項目について契約。安心して天寿を全うされるケースもあります。「公平」かつ「自由意志」で「必要最小限の契約」がポイントです。

MSW自身も所属機関というシステムの影響を強くうけていることを自覚し、キーパーソン選定にまつわる業務を相対化した上でスキルを高める必要があります。非営利団体である一般社団法人愛知県医療ソーシャルワーカー協会では、MSWのスキル向上のために『医療ソーシャルワーカーのための保証人不在者対応マニュアル』を発行しています。協会会員(機関)には無償配布しました。点が線。線が面に繋がっていけばと願います。
→マニュアルは申込多数のため、2021年3月6日付で完売しました。ありがとうございました。